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【読書メモ】『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(伊達洋駆著)

ビジネスリサーチラボの伊達洋駆さんより弊部に新著をご献本いただき、出張でオフィスに行った際に一冊いただいて拝読しました。伊達さん、どうもありがとうございます!心理的安全性、バズワード化していますよね。はやりすぎとも言える気もしているので、本書のような、まっとうな解説書にして入門書が出版されることは企業人事に携わる身として大変ありがたいです。

なぜ日本企業は心理的安全性に注目するのか?

ここまで心理的安全性が流行しているのはなぜなのでしょうか?あまりに職場がブラックすぎて安心感を持って働けないからなんとかしたいというケースもあるのでしょう。ただ、私が見聞きする日系大企業のケースでは、創造性やイノベーションを促すために心理的安全性を高める、という文脈で語られることが多い印象です。

本書でも「心理的安全性にはイノベーションを促す効果」(20頁)が期待されているという指摘があります。創造性とかイノベーションの領域は、中原研の博士課程の先輩である東南裕美さんのゼミでの発表でよく学ばせていただくので、本書の論旨もよくわかりました。創造性やイノベーションを詳しく知りたい方は東南さんの書かれた以下の記事をお読みになってみると良いかもしれません。

心理的安全性の八つの効果

心理的安全性がもたらす効果は創造性だけではありません。著者は、心理的安全性がもたらすメリットは八つあると端的にまとめています。

①学習行動の促進
②職場での情報共有の促進
③パフォーマンスの向上
④組織市民行動の促進
⑤創造性の向上
⑥エンゲージメントの上昇
⑦職務満足の向上
⑧省察をもたらす

31頁

これだけ良いことがあるのですから、日本企業が心理的安全性に着目して、マネジメント研修や職場でのワークショップで扱うことは自然でしょう。ただし、研修でインプットしても定着しない組織も多いでしょう。その際の留意点として、規制やルールといった圧力がかかる職場では心理的安全性の効果が弱められるとしています(50頁)。

日本企業には、明示的にも暗黙的にも業務効率性や創造性を阻害する要素が多いのではないでしょうか。こうした強い圧力の原因となるものが残っていると、心理的安全性を高めるプログラムを導入してもそのもたらされる効果が減ってしまうので注意が必要です。

インクルーシブ・リーダーシップが有効

心理的安全性を高めるための重要な役割を担うのはマネジャーです。心理的安全性に寄与するマネジャーの有効な行動を著者はいくつか述べていて、その中の一つとして、相談しやすい環境をつくるためにはインクルーシブ・リーダーシップが重要であるとしています。

マネジャーがインクルーシブ・リーダーシップを高めるためには、①メンバーの意見に耳を傾ける、②意見を聞く時間を確保する、③メンバーの意見を実行に移す、という三点が提示されています(59頁)。

インクルーシブ・リーダーシップについては、中原研でインクルーシブ・リーダーシップの研究をされている佐々木孝仁さんのnote記事がオススメです。例えば以下の記事では、インクルーシブ・リーダーシップと心理的安全性との関係性も述べられている論文を紹介されています。

というわけで、私にとっては、心理的安全性について改めて理解でき、ゼミでの学びも深まるという非常にお得な書籍でした!


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