【論文レビュー】組織調査の結果を現場でフィードバックするときに何をすれば良いのか?:東南・池田・中原 (2024)
エンゲージメント・サーベイをはじめとした組織調査を導入している企業は多くなりました。ただ、組織調査の結果を現場で共有できている部門は決して多くなく、さらには結果を基にコミュニケーションがとられている部署はほとんどないのではないでしょうか。本論文で開発された尺度は、ざっくり言えばサーベイフィードバックを行う主体による組織開発行動として望ましいものを示したものと解釈できます。そのため、組織調査に携わる企業現場における多様な役割の方々にとって示唆的な内容なので、ぜひお読みになってみてください!以下では、現場マネジメント、HRBP(事業人事)、CoE(本社人事)という三つの観点で組織調査に携わってきた個人的な経験を基に、実践的示唆に振り切って感想を書いてみます。
本論文のポイント整理
実践に振りきりますと書きましたが、一段落だけ研究の観点から所感を述べます。本論文は尺度開発のあるべきプロセスを辿っているので、尺度開発論文を書く際のお手本となります。項目の抽出と選定、基準関連妥当性の検証、探索的因子分析と確証的因子分析、内的整合性の確認による信頼性の検証、などいずれもしっかりとなされていますので大変勉強になります。尺度開発の先行研究としても今後読み続けられる論文になるのではないでしょうか。
ここからは個人的な妄想で現場で使えそうだなーと感じたものを書きます。①マネジャー、②HRBP、③CoEという三つの立場でどのように活用できるかと思った点を自由に書きます。論文を読んで思いついたものなので、私の個人的な感想としてお考えください。
①マネジャーが活用する場合
現場では、組織調査の結果をどのように活用するかという思惑が人によって異なります。「サーベイフィードバック」「組織開発」という同じ言葉を用いていても、メンバー間で同床異夢になっているケースも多々あるのではないでしょうか。
以前、サーベイフィードバック型組織開発を自部署で行うことがあったのですが、上司と企画の段階で話が噛み合わなくなり、半分ケンカになるようなことがありました(若気の至りです)。後から考えれば、同じ言葉を使いながらもその捉え方が異なっていたので話が通じなかったというのが原因です。
本論文の尺度を知っていれば、もっと円滑に上司と話すことができたと思います。また、その上で、冷静にアプローチを整合できたなとも感じました。ぜひ、現場のマネジメントやファシリテーターとしてサーベイをフィードバックする方は、尺度をじっくり読んでみて、他者に説明する際に用いてみるといかがでしょうか。
②HRBPが活用する場合
現場で組織調査をメンバーに返してもらうためには、現場の人事を担うHRBPの支援が必要でしょう。各マネジメントに適切に動いてもらうための指針を示す上で、本論文の尺度は活用できるのではないでしょうか。
「あとは現場でお願いします!」と現場任せ=放任にするのではなく、あるべき行動のガイドラインを提示することで、現場のエンゲージメントを向上するためのマネジメントのよき相談相手になれるのではないでしょうか。
また、組織調査の数値そのものは、もともとサーベイ結果が良かった組織であったために特段の行動を取らなくても結果が出たマネジャーと、改善行動を取って結果が改善したマネジャーとを区別できません。したがって、後者のプロセスにおける工夫や努力を詳らかにすることは難しいでしょう。そこで本論文の尺度を活用すれば、プロセスにおいて改善行動を図れたマネジャーを明らかにすることも可能と考えられます。
③CoEが活用する場合
組織調査の実施とその関連施策全体の運営を統括する役割を担うのは、人事におけるCoEとしての組織開発担当部門であることが多いでしょう。そのため、組織調査という施策そのものを社内全体にアピールし、売り込む必要性をCoEは持っていると言えます。
社内に組織調査をセールスするために、組織調査を用いたベストプラクティスの共有を記事にして社内報に載せるという手段を用いる企業もあります。こうした成功事例を書く際に、あまりにきれいごとばかりを取り上げても社員には読まれません。
現場で真似をしたくなるようなリアルな内容を引き出すために、本論文の尺度やそれを用いた質問を基にヒアリングすることで記事のネタが出てくることが期待されます。つまり、質問項目の一部をインタビューガイドとして用いるということです。
今回は実践面に思いっきり振って感想を書いてみました。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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