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【読書メモ】ヴィゴツキー vs. ピアジェ:『ヴィゴツキー小事典』(佐藤公治著)

ヴィゴツキーは子どもの発達について述べていますが、この領域ではジャン・ピアジェも高名です。この二人、実は同い年(1896年生まれ)なのですよね。ではヴィゴツキーが同学年のピアジェの発達論をどのように評価していたかというと、むちゃくちゃ批判しています。

著者の指摘をまとめると、ヴィゴツキーはピアジェの発達論が、①思考過程を考慮していない、②社会的活動を考慮していない、という二点から批判しているようです。

①思考過程を考慮していない

ピアジェは思考発達段階説を提唱していて、感覚運動段階→前操作段階→具体的操作段階→形式的操作段階というように、子どもの発達を段階的に捉えています。

ヴィゴツキーの批判は、ピアジェは自身の発達段階論に照らし合わせる形で子どもの会話の内容を分析しているだけではないか、という点です。ピアジェ自身は子どもが遊ぶ様子を観察するのではなく、観察者によるノートを基に分析しているために、そこで起きている子どもの思考のプロセスの存在を明らかにできていない、と批判しているのです。

②社会的活動を考慮していない

また、幼い子どもが発する他者にとっては一見して意味がわからない独り言のようなものに対する捉え方も両者で異なります。ピアジェが自身の発達段階論に照らし合わせて子ども自身に閉じた発言として評価しているのに対して、ヴィゴツキーはそれを社会的活動として捉えています

子どもの自己中心的言語というのは、実は、子どもが遊び中で問題を解決するために出している言葉、外言ではないかということである。(中略)ヴィゴツキーは、子どもたちの遊びの中での会話をよく観察すると、他の仲間とも言葉によるやり取りをしている。ヴィゴツキーは、子どもは早い時期から周りの大人や仲間とコミュニケーションをとっており、幼児には社会的活動がないというピアジェのような見方を否定する。
p.196-197

おそらく、このヴィゴツキーによる批判もまた、子どもの遊びを直接観察していないがためのものであるということなのでしょう。また、先日取り上げた、ヴィゴツキーとウィトゲンシュタインとの近さとも関連するもののように思えます。


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