【読書メモ】アメリカ心理学のはじめの一冊:『心理学』(ウィリアム・ジェイムズ著)
本著は、アメリカ心理学の嚆矢とも言われるジェイムズの書籍です。出版されて一世紀以上が経過していますが、文章表現は古い感じがしません。運動や五感についてつらつらと書かれている前半はやや冗長ですが(ジェイムズ先生、ごめんなさい)、途中から急に論調がシャープになって面白くなります。
習慣とは何か?
まずは、習慣を心理学がどのように位置付けているかについてジェイムズが記している箇所を見ていきます。
個人的には、「良い習慣をつくりましょう」と道徳的に言われても、「それが簡単にできたら言うことはないのに」と小学生の頃からよく思っていました。習慣をつくるためには、自分自身の内的反応に構造を構築することが求められます。物心がつく段階からは、既に自分自身の中でなんらかの習慣があるため、そこになんらかのものと付け加えたり変更するわけですから可塑性が求められることになります。
歳を重ねるほどに習慣を変えることが難しいのは、複数の習慣によって自分自身の可塑性が弱まるからと考えられます。そのため、私たちが持つべき可塑性とは、外界からの影響にオープンであると同時に既存のプラクティスに対する堅持性を持つというパラドキシカルな態様を持つことが求められるわけです。
ここまで苦労して適切な習慣を再構築していくことの重要性が述べられているのは、習慣が実用的な効果を持つからです。二つほどジェイムズは提示しています。
自身の内外の環境に対してどのような反応を取るかを常にゼロベースで考えて行動していたら、恐ろしく時間がかかり疲労感をおぼえることでしょう。習慣は、こうしたあまりに丁寧すぎる非効率的な運動を削減することができる、とジェイムズはしています。
さらに、行動そのものだけではなく、その前後にまで及ぶ広い影響関係にまで意識を向けなければいけない状態性を減少させることができます。自分自身の行動について全く意識しないことには問題がありますが、意識しすぎても反対に行動に集中できなくなります。野球選手がバッターボックスに入って構えるまでの一連の行動をルーティーン化して投手との対戦に集中するシーンをイメージすればわかりやすいのではないでしょうか。
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