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【読書メモ】ミドルマネジャーは新規事業創出で何を経験するのか?:『経営人材育成論』(田中聡著)

ミドルマネジャーが経営人材へと至るためには新規事業創出に関わることが重要なのですが、具体的にどのような経験を得ることができるのでしょうか?第3章の後の【補論】では、新規事業創出を経たミドルマネジャーにインタビューを行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって分析し、四つのカテゴリーを明らかにしています。これがあるあるな感じで興味深い内容なのです。

①既存事業部門とのコンフリクト

一つ目のカテゴリーからして、すごくよく目にするものです。多いですよねー。概念と定義を咀嚼して実務的に読み替えてみますと、新規事業部門は経営から注目を受けることが多く、既存事業部門からはやっかみに近いものを受けがちです。そのため、既存事業部門とのコミュニケーションはそもそもハードルが高いと言えます。

さらには、売上が出るまでに時間がかかり、利益が出るまでにはさらに時間がかかります。経営からの期待を受けている部門なのに、既存事業部門からは「売上も利益も出さずに好きなことをしているだけでは?」といったように白眼視されることもあるでしょう。これらの潜在的な心理的対決姿勢を取られるために、少しの行き違いでコンフリクトも起きやすくなります。

②経営陣・上司から受ける理不尽なマネジメント

新しい事業を構想して推進する役割を担うものの、経営から受けるマネジメントは通常部門と変わらない可能性があります。そのため、新規事業創出とベクトルが合わない実態にそぐわないマネジメントを受けるリスクがあると言えます。

また、始める前は時間軸を長期に置いていたとしても、四半期決算やそれに伴うレビューでは、経営数字に基づいた厳しいフィードバックを受ける機会も容易に想像できます。

③戦力不足なチームのマネジメント

通常の採用オペレーションでは、既存事業を進めることを暗黙の前提としています。新規事業部門を立ち上げるために新たな人材を外部から採用することもあるでしょうが、ほとんどの社員は既存事業部門からの異動するケースが多いです。

そのため、人材の一般的なビジネス能力はさておき、新規事業部門において求められる能力としては不足しがちになるはずです。結果的に、新規事業部門でのマネジャーは、プロジェクトを進める上で戦力が足りないチームをマネジメントすることになるわけです。

④プレイヤーとしての挫折・失敗

一般的な事象としても、マネジャーはプレイング・マネジャーであることが普通になりつつあります。とはいえ、その比率はケース・バイ・ケースと言えますが、新規事業部門の場合には、メンバーと一緒に考えて一緒にプレイヤーとして行動することが多くなるものなのでしょう。

しかし、既存事業での経験が活きづらい新規事業部門では、過去の名プレイヤーとしての自分自身の能力では足りず、プレイヤーとしても挫折や失敗を経験することが多いようです。さらには、新規事業のプランすら提示できないということもあります。

まとめ

ここまで詳細に書いているとやや辛い気持ちになってきます。一言で言えば、こうした究極的なタフ・アサインメントが新規事業創出では経験できるわけですね。既存事業部門のミドル・マネジャーとは異なる経験を得られるため、経営人材へと至るためには重要な役割となるようです。


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