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【論文レビュー】計画された偶発性理論に基づくスキルが大学生の適応課題を緩和する!?:浦上他(2023)

本論文では、計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)に着目して、大学の新入生が大学生活で受けるリアリティショックとその後の適応にどのような影響を与えるのかを明らかにしています。大学生を対象とした研究ではあるものの、それ以外のフィールドでも援用できそうな興味深い内容でした。

浦上昌則, 矢崎裕美子, 杉本英晴, & 高綱睦美. (2023). 大学新入生の適応感に対する計画された偶発性理論の適用: 新しいキャリア理論の教育場面への導入に向けて. アカデミア. 人文・自然科学編, (25), 41-61.

本論文の結論

本論文では、リアリティショックと学校への適応感との間にある負の相関関係を、計画された偶発性理論に基づくスキルが調整効果を持つことを明らかにしています。

平たく言えば、大学に入ってみこんなはずじゃなかったなぁというショックが大きいと、学校生活に馴染んでいるという感覚を得づらいものですが、計画された偶発性理論に基づくスキルが高い学生はその関係性が緩和される、ということです。(これでも分かりにくいでしょうか。。)

調査デザイン

T1とT2の2時点調査を行っています。T1ではリアリティショックと計画された偶発性理論に基づくスキルの二つの概念を調査し、T2で適応感を取得するという方法です。

そのうえで、リアリティショックと計画された偶発性理論に基づくスキルの下位尺度から適応感への重回帰分析を行い、その後にリアリティショックと計画された偶発性理論に基づくスキルの交互作用項を投入して分析する、というプロセスを踏んでいます。

調整効果の検証

調整効果は、以下のように交互作用を見ることでその有無について確認することができます。

p.52

本論文では、先行研究を基にして「自らが置かれている境遇をキャリア形 成につながるかもしれない機会として認識したり、予測できない出来事を活用したり、積極的に作り出したりする」スキルのことを境遇活用スキルと呼び、それを測定する尺度のことをCPFOSTと呼んでいます。

上図でCPFOSTが+1SD(=標準偏差)の場合の実線と-1SDの場合の破線を見比べてみてください。そうすると破線ではRS(リアリティショック)のスコアと居心地の良さの感覚のスコアが高く相関しているのに対して、実線では傾斜がなだらかになり相関が低くなっていることがわかります。つまり、CPFOSTが両者の関係性に調整効果を持ってるということが明らかになった、というわけです。

計画された偶発性理論

計画された偶発性理論については、少し前に書いたことがあるので興味がある方はご笑覧ください。


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