【読書メモ】ドナルド・スーパーの入門書としても読める!?:『自己形成の心理学』(溝上慎一著)
一冊の書籍を読むだけで多くの心理学研究者のポイントをここまで理解できる書籍はなかなかありません。溝上先生の『自己形成の心理学』は心理学領域を学ぶ大学院生にとってありがたい書籍です。今回は、ドナルド・スーパーについて言及されている箇所をまとめてみました。
役割葛藤とアイデンティティ
現代において私たちの社会は多様なものになっています。そのため、私たちが担う役割も多岐にわたります。こうした役割葛藤とアイデンティティというテーマをキャリア論として進展させたのがキャリア発達を提唱したドナルド・スーパーだと著者はしています。
スーパー登場
心理学の書籍でキャリア論にも話題が移り、かつスーパーが登場するというなかなか興味深い箇所です。スーパーのキャリア発達論の位置付けを改めて理解することができました。
スーパーの発達論がわかるようでわからない理由
スーパーのキャリア発達論はキャリア論を学ぶと必ず習う内容でしょう。ただその内容について、私にはわかりにくい部分もありました。その理由は、アメリカと日本における文化差があるのかも、と思う箇所がありました。
青年期のキャリア形成では国や文化によって異なるという著者の指摘は大変重要です。この点に関して、特に日本では学生から社会人へのトランジション部分に自己概念化の特徴があるとしています。
キャリア発達論の意義
最後に、スーパーのキャリア発達論の意義についての解説と読める箇所が秀逸です。キャリア論の教科書的なもの以外で、このような解説を読めるのは意外でありラッキーでした。
少し飛躍することを恐れずに言えば、自己というものを静態的から動態的へと捉え方をシフトさせ、キャリアを選択から発達へと変化させたのがスーパーのキャリア発達論だと言えるのではないでしょうか。
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