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【読書メモ】WhatとWhyで人事を物語る!:『カゴメの人事改革』(有沢正人・石山恒貴著)

折に触れてお世話になっている法政の石山先生より、新著をご恵贈いただきました。石山さん、ありがとうございます!早速、拝読させていただき、自らの人事経験を省みながら、多くのことを学ばせていただきました。後で詳しく述べますが、本書は、特定の人事施策をインプットするという類のものではなく、著者たちと仮想的に対話しながらリフレクティヴに学べる書籍と言えそうです。

HowではなくWhatとWhyに着目せよ

もし、本書に人事制度立案や運用の解決策を求めて読み始めたビジネスパーソンは、肩透かしをくらうのではないでしょうか。著者たちは、コンサルさんが語ったり、ビジネス書が扱うような「新規的で画期的なソリューション」なるものは提示しません。

むしろ、平野光俊先生(大手前大学)の「人事は流行に従う」という至言を引きながら、流行人事に対する警鐘を鳴らしています。流行人事はHow(施策をどのように行うか)に特化している傾向があります。それに対して、著者の一人である石山さんは、「はじめに」の中で、What(施策の意義)とWhy(施策の意味)にこそ着目するべきであるとしています。

人事の物語(ナラティヴ)

WhatとWhyに着目する人事とは、複数の施策の背景に流れる物語を構築するということなのではないでしょうか。ビジネス・リーダーとのパートナーシップの重要性を有沢さんは繰り返し述べておられます。ビジネス部門との対話を通じて、それを人事の施策に落とし込んで現場に伝えるためには、現場に伝わる物語へと結実させる必要があります。

そうであるからこそ、本書で有沢さんが語っておられる人事論も、物語のようになっているのかもしれません。一つひとつの施策は、人事パーソンであればよく見聞きしたり経験するもので、「なんだ、普通の施策ばかりじゃないか」と思う方もいるでしょう。何度も言いますが、Howが大事なのではないのです。ビジネス・リーダーと対話して、必要な諸施策をナラティヴにして常に更新し現場と対話し続けているところが有沢さんの人事パーソンとしての凄みなのではないでしょうか。

アナロジーの重要性

物語に欠かせないものはアナロジーです。というのも、魅力的なものでないと、内容は他者に伝わりません。著者同士の対談では、『進撃の巨人』『呪術廻戦』『鬼滅の刃』の三つの作品による比喩がよく登場したと後半で述べられています。この三つなら、私もある程度は知っているので、ぜひ石山さんに後日談として伺ってみたいと思います(笑)。

WhatとWhyに着目するために誰もができること

本書では、有沢さんのキャリアの振り返りのパートもあり、各社でのプラクティスがふんだんに語られています。人事論としてもキャリア論としても読み応えがあって、私はたのしく拝読しました。しかし、人によっては、「自分にはこのような素晴らしい経験はない。40歳を超えた今からできることなど何もない」という誤解をされる可能性もあります。

でも、そうではないのですよね。WhatとWhyに着目することは、経験があればベターではあるものの、意識的に日常の業務の中で取り組むことは誰でもできます。たとえば、本書の基となっている(と私は思っている)石山さんの『日本企業のタレントマネジメント』を読み、有沢さんが行った各社での施策を相対化して理解し、自社の取り組みと比較してみるのも良いでしょう。

その際、できれば他者と対話することを強くお勧めします。卑近な例で恐縮ですが、立教LDCの修士1年の夏休み期間に、同期と『日本企業のタレントマネジメント』の読書会を企画・実施しました。その際に、著者である石山さんにもご参加いただき(本当にいつもありがとうございます!!)、みなさんと対話することで自身の課題として理解を深められました。

以下に、読書会用に作成していた事前動画に基づくnoteを貼っておくので、ご関心のある方はご笑覧くださいませ。


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