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【読書メモ】信頼性へとつながる古典的テスト理論:『心を測る 現代の心理測定における諸問題』(デニー・ボースブーム著)

心理測定モデルの一つである古典的テスト理論モデルについて書かれている2章をまとめてみます。ゆるっとしか理解できない難解な内容なのでふんわりと書きます。古典的テスト理論は「20世紀の心理学の中で最高のアイデアの1つであったか、最悪の間違いの1つであったかのどちらか」(54頁)だそうで、このような冷笑的で翻訳調的な表現が妙にツボにハマります。

真の得点という考え方

古典的テスト理論モデルでは、本来的に存在する「真の得点」があると想定しています。そのため、プラトン主義的な考え方を取っていると著者は表現しているのが絶妙です。

心理学アプローチvs.哲学アプローチ

実在論と非実在論という二項対立に分けられない奥ゆかしさ(?)が古典的テスト理論の特徴であると先日のnoteでも触れました。本章を読んでその一端を何となく理解したのは、古典的テスト理論は心理学的アプローチと哲学的アプローチの中間にあるという点です。

心理学的に有意味な真の得点と偶然誤差の解釈とは、それぞれ安定した特徴と非系統的な変動を反映したものであるけれども、これは哲学的には受け入れられない。一方で、哲学的に許容可能なこれらの概念の解釈とは、反実仮想的な状況における反復的な性向を指示する想像上の産物であるけれども、これもまた心理学的に魅力的ではない。
57頁

実証研究への適用

何ともつかみどころがない古典的テスト理論ですが、その実践的な特徴としては信頼性妥当性について説明している点です。その部分を読んでもよくわからないのですが(汗)、信頼性の検証としてよく使われるクロンバックのα係数もこの理論から生まれたようです。

考え方はぐちゃぐちゃしてよくわからないけど、実証研究において使えるという点が評価されているという微妙な評価です。そのため、厳密に古典的テスト理論によって真の得点の信頼性が保証されるというよりも、下界値の信頼性を保証することで一定以上は信頼できるという方略で信頼性を保証しています。


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