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2:7:1の法則

こんにちは産婦人科医の高尾美穂です。

以前、このようなご質問をいただきました。

『 私は40代の女性です。

今、人間関係に疲れています。

自分では周りの人を盛り上げるように、適度に気を遣って人間関係を築いてきたつもりです。
しかし、前の職場で仲良くしていたつもりの同期の女性から、裏切られる経験をして会社中からいじめに遭いました。

それ以来、頑張る気力がなくなり転職しました。

そして、今の職場ではとっつきにくい人と言われています。

このままの人生になってしまうのではないかという心配があったりしながら、人にも組織にもアレルギー反応を感じたりもしています。

自分なりに今の職場に溶け込む努力をしているつもりですけども疲れます。

今の私に、何か考え方を変化させることで、出来ることがあればと思いご相談させていただきました。』

こういったうまく社会と過ごしていけていないという悩みをお持ちの方は、少なくないという印象があります。

おそらく、皆さんは私のことを、とても人間関係が良さそうと受け取って
くださっているのではないかと思います。

しかし、私のベースにある考え方というのは、

”自分とすごく気が合う人は、そんなに多くはない”

という考え方です。

この考え方のベースは、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが
カールロジャースという心理学の先生です。

この方は、“カウンセリングの祖”と言われており、「受容」や、「共感」といった概念を日本に持ってきてくれた方です。
カウンセリングのベースを築いていただいたカールロジャースの考え方で、「2:7:1の法則」というものが知られています。

2:7:1の法則

この法則は、自分の周りにいる10人を眺めてみた時に、2人がすごく気が合う人、1人はすごく気が合わない人、そして残りの7人は、どちらでもない人(どうでもいい人)であるといった考え方です。

人間関係で疲れちゃう方、例えば、この質問をいただいた方のように、仲良しだと思っていた同僚の方から裏切られる経験をされて、そこから人間関係がうまくいかなくなってしまった。
つまり、気が合うと思っていた人が、実はそういう人ではなかったというところが、問題のスタート地点なのかなと考えられます。

自分にとって気が合う人というのが、そもそもそんなに多くないということを頭の中に入れておくと、割と人間関係が楽に過ごしていける。
そして、無駄に悩むことが少なくなるのではないかと思います。

これがインターネット上だと、もっと極端になるのではないかと思います。
例えば、いいねボタンとよくないねボタンがあるS N Sにおいては、いいねを押さないことは基本なわけです。

わざわざ押してくれるということは、相当いいねと思ってくれていると考えられます。

逆に、よくないねと押される投稿というのは、もちろん良くない場合もあると思いますが、そのボタンを押してくれるという行動自体が、言いかえれば、アクションを起こしてくれているのだというイメージで捉えていいと私は思っています。
つまり、アクション起こさない人がほとんどなわけです。

どちらでもない人たちのことは気にしない

人がどんなにいいことをしていても、反対に注意した方が良いと思うような行為をしていたとしても、何も言わない人がほとんどではないでしょうか?

これがカールロジャースの言う、2:7:1の7にあたる部分の人たちに該当します。

つまり、どちらでもない害にも得にもならないような人達が、世の中のほとんどです。
この方達とは、しっかりとした信頼関係は築けないということになります。

逆に、2:7:1の2に該当する人の見極めを間違えると、今回質問をいただいた方のように、すごく心にトラウマを抱えることになってしまいます。

自分が、この人だったら気が合うと思っていた人から裏切られた時というのは、上に上がっていた波が小さく落ちるどころか、大きく落ちる。
つまり、落ち幅が大きいということになるわけです。

なんでもない人と思っていた人から、イマイチなことがあった場合の落ち幅は、0からマイナスになるだけです。
しかし、気が合うと思っていた人がイマイチだった場合には、プラスのところから一気にマイナスになってしまう気持ちの変化が起きてしまいます。

このことを考えると、やはりこの2に該当する人を見極めることはとても大事です。
それ以外の人達は、いわば自分のことを好きでも嫌いでもないぐらいに考えると気持ちが楽じゃないでしょうか。
私自身はそれぐらいに考えています。

10人のうち1人ぐらいは相性が悪いな、私のことをそんなに好きじゃないだろうなという人がいたとしても、それは世の中の普通なことだと思えばいいわけです。
今回のご質問内容における最大の問題点としては、仲良くしていたと思っていた人を、2:7:1の2のカテゴリーに、入れてしまったことではないかなと考えられます。

ですので、周りの人達に迎合する必要はないのではないかと思います。
大切なのは、自分が心を開く相手を間違えないことではないでしょうか。

ただ同僚というだけで、同性というだけで、同い年というだけで心を開く必要もないと思います。

年齢や、性別が違っていても、心を開ける相手というのは、本来自分で判断できるものだと思いますし、そういう人は10人中2人程度です。

残りのほとんどの方は、自分に大きな影響を及ぼす可能性が低い人達だと思いながら過ごしていれば、大きく裏切られて傷つくこともないのではないかなと思ったりするわけです。

つまり、期待をしすぎて、多くを求めすぎてしまうと自分を苦しめる理由になりうるということです。

だからこそ、自分の周りにいるほとんどの人は、自分にとってプラスでもマイナスでもないぐらいの意識で過ごしていると、何かありがたいことを経験した際にすごく感謝の気持ちが湧きますし、反対にイマイチな出来事があったとしても、あり得ることだと自分の中で、やり過ごしていくことができるのではないでしょうか。

この2:7:1の法則を頭に入れておくと、日々の人間関係の中で自分なりに判断をして、生活をするとすごく楽になるのではないかなと思います。
もちろん、この2の中に最初から入れちゃうというのは、例えばインスピレーションで、「この人とは相性が良い!」みたいな、一目惚れ的な出会いもあると思います。

しかし、この2のカテゴリーに入れる人達を、自分の責任の中で信頼できると判断するのは、ある意味経験の積み重ねや、時間と空間の共有のその先にある出来事だと思います。

そして、逆に気が合わない、自分と相性が悪い方も、10人中1人ぐらいは世の中にはいるからと思って過ごしていけるのではないかと思います。

そういった理解が、自分なりに出来ると楽に日常を過ごしていけるのではないでしょうかというご提案をさせていただければと思います。

このようなお話は、人間関係に悩む40代の女性、特に仕事を続けておられる方ではよくあり得るお話だと正直思います。

この人間関係が原因で、例えば、職を失うことが自分の人生にはとても恐ろしい出来事に思えるかもしれませんが、今の時代は 本当にいろんな形で物事が流れていく、変化していく時代です。

そう考えると1つの事にしがみつきすぎるのではなく、自分を活かせるような場に、環境を変えていくことも一つの選択肢にしてもいいのかもしれません。

今回はカールロジャース先生がお話ししてくださった2:7:1の法則をご紹介してみました。

人間関係を楽に過ごしていくためには、私たちの周りの人の多くはそこまで思い入れを強く持たない方が、楽に過ごしていける。

これは消極的な考え方に聞こえるかもしれませんが、割と自分は傷つきやすいという方であれば、この考え方はマッチするかと思います。

また、ネガティブな出来事があったとしてもそれを跳ねのけていけるような、レジリエンスの高い方であれば、こんな考え方は持たなくてもいいと思いますが、私たちは日々、気持ちの持ちようが変わると思います。

ちょっと今、心が弱っていると感じるときは、この考え方をベースに置いておくと、非常に楽に過ごしていけるのではないかと私自身思いながら過ごしています。

皆さんの日々が、安心して穏やかに過ごしていけますように。


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産婦人科医 高尾 美穂
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