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生理前に眠いのはなぜ?

こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

今回は、身体の悩みについて頂いたご質問にお答えしたいと思います。

「生理前に眠くて仕方がないのはなぜでしょうか?」

という女性からの質問ですが、生理前に眠くなるという方が世の中に多くおられるというのはよくお話を聞く通りです。

生理と睡眠の関係

2000年以降、女性と睡眠に関しては、たくさん研究されています。
女性の4割は生理に関連して睡眠の状態に変化があるということが報告されています。

また、そのうち生理に関する変化があると感じている方達の中で、9割が生理前や生理中の眠気を自覚していると言われています。
全体の6%ぐらいは、不眠、寝つきが悪い、途中で起きてしまう、朝早く起きすぎた、熟眠した感覚がないといった不眠症に相当するような感覚を感じておられるという報告があったりします。

つまり、半分ぐらいの女性は生理周期に伴って、睡眠の状態が変わるということを感じているということです。

ではこれが、なぜだろうかと考えた時に、私たちの身体の真ん中の体温、中枢温が関係しています。
身体の端っこ、手のひら、足の裏などではなく、体の真ん中の体温が下がってくる、その過程において眠気を感じるという特徴を持っています。

つまり体温が下がってくることで、しっかりと眠りにつけるというサインがあります。
よく知られている通り、私達女性の生理周期の中で、排卵の後分泌されるホルモンにプロゲステロンというホルモンがあります。

排卵後、妊娠しているかもしれない身体に対して分泌されるプロゲステロンは、体温を0.3〜0.6度上げることによって妊娠が継続しやすいような環境を作ってくれる働きをします。

つまり、生理から排卵までの低温期と呼ばれる時期と比べると、排卵から生理までのプロゲステロンというホルモンが出ている間は、体温が平均0.3〜0.6度上がるということが生理周期がある程度安定した女性では認められるということです。

基礎体温を知ることの大切さ


この変化を、コンディションのチェックに用いるのが基礎体温という計算方法で、体温が高い時期が把握できれば、その時期にはプロゲステロンが身体で分泌されていると言い換えることができます。

プロゲステロンが分泌されるためには、排卵がある必要があるので、排卵があったと言い換える事ができる、身体を傷つけることのなく、体温を測るというだけの検査方法で女性のコンディションを把握することができる非常にありがたい方法だったりするわけです。

つまり、排卵後の私たちの身体は、元々のベースの体温が高いということです。

そうなると、しっかりと体温が下がると眠気を感じるという仕組みに対してはマイナスに作用してしまうことがあります。

体温が下がらないと、しっかり眠りにつけないけれども、排卵から生理までの期間というのは、なかなか体温が下がらず、そのために眠気を感じにくく、しっかりと眠れた感じがせずに、起きている間の昼間に眠くなるというのが、生理前の眠気を感じる理由とされています。

そう考えると、そもそも生理周期がバラバラ、あまりいいサイクルで生理が来ない、3ヶ月に1回ぐらいしか生理が来ないと言った場合には、生理前という時期にそこまで眠気を感じるということはないのかもしれないということになるわけです。

したがって、生理前に眠くなってしまうという方は、生理周期がある程度いい形でやってくる方ということも言えるわけで、この眠気に関しては自然な生理周期を保っている方であればある程度は仕方がないという見方もできるわけです。

そうであれば、自分が生理前だということを把握できるのであれば、現在の自分の睡眠状態はそこまで良くないので、起きている日中にお昼寝を取ってみるなどを生活の中にプラスをしてあげると、楽に過ごせるのではないかということが言えると思います。

逆に、体温の変化がなければ眠気を感じにくい時期も生まれないわけですから、例えば低用量ピルを使うことによって、そこまで体温の変化を感じることがなくなれば、どの時期でもしっかりと眠気を感じることができ、眠っている間の質も保たれるため、生理前に眠くなってしまうということがなくなるではないですかという提案もできたりするということになります。

日中の体温がある程度高く、眠りにつく時に体温がしっかり下がれば眠気をしっかり感じることができるということなので、この生理前の方達というのは昼間の体温と夜の体温に大きな差がないという状態ですが、このような生理前の女性と同じような状況ができてしまうのが、実はうつ病の方達だったりします。

うつ病の方達の体温の変化は、昼間の体温と夜の体温の差が、あまり大きくないということで、本当の意味での休息モードに入れないために夜の眠気を感じにくく、夜間の睡眠の状態があまり良くありません。
うつ病の方の体温は1日中高いというような報告が1990年代の後半にされていたりもしています。

それ以外では高齢者の方も、1日の体温の変動がそこまで大きくないという報告があります。

生活の中で運動を取り入れてみよう

では、日中の体温がしっかり上がるためにはどんなことができればいいかと考えてみると、家から外に出て、太陽にあたり、筋肉を使うことによって自分で熱を産む。
つまり、運動するということです。

日中の活動量が多ければ、当然日中の体温を上げることができます。
そして、夜間の体温がしっかり下がれば、ここで昼間と夜の体温差ができるので、良い睡眠がとれるのではなかろうかという考え方ができる。

また高齢の方に関しては、昼と夜の体温差が若年層よりも小さいということが分かっているので、なかなか夜間の睡眠の質というものが、良い睡眠だったとなかなか感じにくいということも報告されたりもしています。

これらのことから、この体温の変化というのが夜間の睡眠、良い睡眠をとったという感覚を感じるためには非常に大事であり、しかもこの体温の変化というものは私たちがある程度日中意識することでしっかり上げて、しっかり下げるということができなくもない。

年齢が高くなってくるとなかなか下がりにくいということが分かっているので、ここに関しては少し難しい。

また生理の周期がある程度安定している女性においては、生理前に昼と夜の体温の差が小さい。

うつ病の方というのはこの体温差が小さいために、夜間の睡眠がイマイチだということも分かっていますので、何かお薬を使わなければ、対処が難しいということが言えるかもしれません。

しかし、ある程度今の自分がこういう状態だからという理由を知っておくと、夜間の睡眠の状態が今イマイチだということがある程度理解できる。
それであれば、起きている間に眠気を感じるのであれば良いタイミングでお昼寝を取るということも、お勧めできることの一つかなと思っています。

私自身は自分の生理のサイクルを把握していますので、夜の眠りがイマイチだったなというときには、自分なりにその理由というものを朝探してみます。

その時に、自分で挙げられる理由というのが、例えば生理前だったり、前日の夕食が外食で、たくさん水分量を取ったために夜お手洗いに行きたくなってしまって、そこからもう一度寝たけれども、やっぱり夜間1回起きない方が良かったなというようなことを考えます。
そういった、自分なりの因果関係を探してみるということを習慣にしています。

皆さんも、朝起きた感覚というのは毎日それぞれ違うと思います。
しっかり眠れた日、イマイチだったなという日。
良かった日は良かった日なりの理由、イマイチだったなと思う日はイマイチだった日なりの理由というものを探してみていただくと良いかなと思ったりもします。
これから暑い日が続きそうです。
しっかり水分取っていただき、身体を休めるような習慣を是非持ってください。


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産婦人科医 高尾 美穂
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