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親子ほど難しい関係性はない

こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

今日は、親子関係にまつわるレターを2つご紹介しながら少し考える時間を持とうと思っております。


子供の全てが自分にかかっていると思ってつらい


まず一つ目のレターです。

いま子供の高校受験の結果待ちをしている50代の主婦です。
私は子供の全てが自分にかかっていると思ってしまっていて辛いです。
もっとこうしてあげればよかったなどと責任を感じています。
先回りして子供に助言ばかりするのは良くないからと放っておいたりしたのですが、また後悔しています。
こんな私に一言いただけないでしょうか。 


ということでお子様が高校受験をされて、結果待ちをされている方です。
 
こういったケースに関しては、よく話す例えですが、テストが心配ということであればテストの勉強をすればいいと思います。
 
一方で、テストの結果が心配となると変えることはできない、終わってしまったことなので、これは心配しても仕方がないということになってしまいます。
 
頑張ったら頑張ったなりの結果が出る。
この先大学受験もあるかもしれませんし、そのほか色々あるかもしれませんが、高校受験で人生が決まるわけではありません。
 
例えば、合格したとしても行った先でいじめに遭うことだってあるわけで、逆に不合格で、他の高校に通うことになってしまったとしても、そこで大事な仲間と出会うことだってあるわけです。
 
人生どう転ぶかなんて本当に分からないと感じています。
 
もちろん結果を見る時は、すごくドキドキすると思いますので、今こそ何も心配することのない時期ということで親子共々のびのびと過ごすというものありなのではないでしょうか。
 
そして結果が届く時、ここに関しては冷静に合否を受け止めて、そして春からの楽しいことを親子で考える。

それが大事ではないかと思います。

突然、子供から絶縁状がきた


もう一つレターをご紹介します。
 

高尾先生のことを10年早く知っていれば良かったと思う59歳女性です。
私には34歳と30歳の2人の娘がいます。

いま悩んでいるのは30歳の次女のことです。
彼女は4年前、突然私たちに絶縁状な手紙を送ってきて以来音信不通です。

手紙の内容は私が子育ての過程で何もかも指図したせいで自分の意見を持てず自信のない人間になってしまった。
そんな母親を見て見ぬふりをした父親も同罪だというものでした。

私自身は必ず子供に意見を聞いて何も答えない時は私が決めてきました。
大概は子供は意見を言いませんでした。
子供は言ったところで通らないと諦めて言わなかったそうです。

他に叱ったのは嘘をついた時だけです。

私は子供達が能力を伸ばせるように、できる限りの環境を整えることに集中して子育てをしました。
その成果とは思いませんが、2人とも中学から大学まで国立で就職先も誰もが知っている有名なところです。

ところが今になって子供から絶縁され、悲しみでいっぱいで会いたくて涙がこぼれない日はありません。

私は自分を変え、お互い話し合って新しい関係を築いていきたいのですが、その機会すら持てていません。
この先どうすれば良いでしょうか。


ということで、この方は社会的に見ると、すごくうまくいったって思えるようなお嬢さんをお二人育てられたお母さんということになりますね。
 
中学から大学まで国立で、そして誰もが知っている会社に就職をしてというような、いわゆるサクセスストーリーで、お嬢さんが困ることがないように親としてやれることは全てしてきたという形なんだと思います。
 
しかしこれを別の視点から見てみると、親がこれがいいと思ったところに持っていったという見方もできたりするのではないかとも思います。

いい中学校に行き、いい高校に行って、いい大学に入る。
いい会社に就職することが成功というのは、私たち世代の考え方なのかもしれません。
 
今の若者たちの成功はきっとまた違うところにあって、当時の彼女たちはお母さんが敷いてくれた線路の上を一生懸命走ってきたっていう状況だったのかもしれません。
 
そして長女の方とはおそらく普通にコミュニケーションを取れるけれど、次女の方とは26歳の頃から連絡が取れないという状況になっているのだろうと思うわけです。
 
相談に来られる方の中にも、お嬢さんにずっと英才教育に近い形で音楽の教育をされたお母さんがいらっしゃいました。

お嬢さんは音楽大学にも行って、いよいよという状況の時に、家を出ていってしまい、それ以来全く連絡がつかず、警察などに連絡をして探してもらったそうですが、もう成人し、元気で過ごしており、本人の意志だからということで、そこから先も連絡が取れてないという状況でした。
 
このケースも、私が接しているのは親の方で、親の気持ちしかキャッチできていないのですが、ざっくり言ってしまうと、もしかして子供にとっては重荷に感じてしまっていたのかもしれません。
 
そして、ここからは自分一人でやっていける。もしくは、周りにいてくれる誰かと一緒にやっていけるかもと思った時に、親の鳥かごを飛び出したいという気持ちになったのだろうと私は理解しています。
 
しかし、親としてもどうしようもない状況であるのは間違いありません。
 
もしかするとレターをくださった方の場合は、お姉さんから妹さんに連絡を取ることはできなくもないとも思うので、その中で親が今できること、それは、何もしないことかと思います。
 
自分がやってきたことがきっと正しかった、あの子達には良いことをしてきたはずだと思ったとしても、現状として本人がそう受け取っておらず、今の状況に至っていると考えられます。
 
親の気持ち子知らずという言葉の通りだと思いますが、親がこういう気持ちで過ごしてきたということを一生懸命伝えたとしても、全てが裏目に出て反発する気持ちに変わってしまうだろうと想像できますので、今は何もせず、待つということも必要かもしれません。
 
今後、物事が変わる可能性があるとすれば、このお嬢さんが親になった時でしょうか。
 
お母さんの立場になった時、初めてお母さんがこうだったということに自分が気がつくこともあるでしょう。

つまりお母さんやお父さんが自分のためを思って色々してくれてたんだということに初めて気付き、そこで何かアクションを起こすかどうかは別としても、そこで気持ちに変化が現れるかどうか、それぐらいではないかと思います。
 
もう26歳だから一人暮らしする。
そこから先、実家にあまり帰ってこないという方も世の中にはきっとたくさんいる中で、わざわざ絶縁のお手紙を送ってきたということは、そのことを伝えたいだけの気持ちになってたということなのかもしれません。

けれどもそこは、どういう理由が最後のきっかけになったのかは本当に分からないところではあります。

もしかすると、突発的な出来事だったのかもしれません。
 
そして今4年経って、それが説明できるかと言ったら、それも忘れてしまっているとか、気持ちが変わっているなどということもあったりすると思います。

これから先お嬢さんが変わっていくっていうことをちょっとだけ期待して、あんまり期待できないと思いながら過ごすのが良いのかもしれません。

親と子という関係性


この親と子という関係性ほど、本当に難しい人間関係はないと思います。
 
これが全くの他人だと、切れてもいい、ある意味どうでもいい関係性と言えますが、親子というのは親子だからという理由で繋がる関係です。
 
ここが辛い部分もあると思います。
 
特に母・娘の関係性は難しいと言われますが、良好な関係を築かれている方もおそらくお互いに気持ちを遣い合っていると思います。

お互いに一人の人として気持ちを表出できる関係性を作ることができるのが理想ですが、親子だけど他人以上の気持ちを遣い合っているからこそ、親子といういい形で関係性を存続できているのではないかとも思います。
 
時間の経過でなければ変わっていかない物事もあると思います。

時には何かアクションを起こすということが、更にネガティブなことを引き起こすということもあったりすると思います。
 
何もせず待つその間は、お嬢さんのことをちゃんと育てたという自分の自負はもちろん持っていていただき、会っていなかったとしてもお嬢さんは自分の大事な娘だという気持ちも、持ち続けていらっしゃるといいなと思います。
 
難しいとは思いますけれども、これから時間をかけてゆっくりお互いの関係性が良くなっていくことを願っております。
 
今日は親子という関係性って本当難しいというお話をさせていただきました。
 
皆さんから色々なご意見や、想いをいただき、私自身とても勉強になります。
 
今までのご自身が育ってきた過程において、大変だったという思いをした方もいらっしゃると思いますが、これまでに親がしてくれたことの中でありがたかったと思えることは是非見つけていただけたらいいなと思います。
 
つらかったという関係性をレターでくださる方はたくさんいらっしゃいます。

そういった方にとって親御さんとの関係性というのはトラウマになっていることもあるかとは思います。

しかし、そこはいわば反面教師で自分自身が親としてどのように振る舞うか、もしくは親ではなかったとしても、自分が年長の立場として触れ合う皆さんにどう振る舞うか、こういったことを考える機会にしていただければと思っております。



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