見出し画像

嫌な感じを生まない会話の工夫

こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

私が発信しているstandFMには、皆さんからの感想や質問をいただくレターという機能があります。
レターの欄には、たくさんの質問が積み重なっていき、自分で削除しない限りは消えないので、今ではスクロールしてもしきれないぐらいの量になっていますが、今回はその中の一つを紹介します。


「私は、50代パート勤務です。
職場で気になることがあると、気持ちのまま問いただしてしまい、後でしまったと思うことが多々あります。

いつもよく考えて相手に嫌な気持ちを与えずに話せればと反省ばかりで、これだから受け入れてもらえないのだと自分が嫌になります。
うまく人つきあいをされている人が羨ましいです。

今日もまたモヤモヤで落ち着きませんし、その繰り返しです。
こんな気持ちはどうしたらいいのでしょうか。」

パートのお仕事をされていて、割と人に思った言葉を発してしまい、それがその後なんとなく気まずくなってしまう理由になっている方だと思います。
こういった方というのは、いわゆる脊髄反射で言葉が出てくる人というイメージをしたらいいと思うのですが、何か目でキャッチした物事に対し、すぐにその思いが口に出て、言語化できる方ではないかと思います。

慎重な方はどういう方かというと、目から入ってきた情報に対し、まず頭で一巡りさせる人です。
例えば必要のない言葉や思いは、ある程度そぎ落として、これだったら発信してもいいだろうという事を言語化し、口に出している方も多くいらっしゃるでしょう。

どちらが良い悪いでは無いですが、結論からいうと、周りの人たちと上手くいけばいいわけですよね。
この脊髄反射的(瞬間的)に発言をされる方で、周りからその状態を愛される人もいます。
天然だからしょうがないみたいな表現をされることもありますよね。
こういった状態であればもちろんそこを変える必要はないわけです。

しかし、今回レターを頂いた方のように、割と相手を嫌な気持ちにさせてしまったり、その状態に対して自分が反省している気持ちになる場合は、自分のアクションに1つ2つステップを加えることで、発言そのものを変えていけばいいのではないかと思います。

つまりモヤモヤして落ち着かない気持ちをどうにかするより、自分の起こすアクションを変えていくことによって、自分の中で生まれるモヤモヤを減らしていけばいいのではということが提案できると思います。

瞬間的に言葉にしないことが大事

まず1つ目のステップとしては、さっさと言葉にしないことが大事です。

どういうことかといいますと,私たち産婦人科医でも、例えば「あっ」や、「おっ」などという言葉を内診中に言ってしまいたくなる時があります。

慣れていない診察経験の浅い先生だと、太ももの内側などに刺青があったりする患者さんがいた際、咄嗟にそのような言葉を口にしてしまう先生もいらっしゃいます。
しかし当然ですが、これは必要のない発言なわけです。

こういった言葉は職業人として飲み込めればいいわけであり、驚きなどは、わざわざ言葉にすることがないと私自身は考えています。

だからこそ、言葉にしてしまいそうな時には、それをとにかく言葉にしないで飲み込む。
まずこれをやってみてはいかがでしょうか。

そして先ほどの脊髄反射のように出ていた言葉を、口にする前に頭の中で一巡りさせる。
これがやってみると良いことだと思っています。

つまり、自分がこれから言おうとしている言葉で、相手が感じる可能性・感じ方の可能性を、自分の頭の中で3つぐらい挙げてみる。

喜んでくれるかなとか、もしかすると嫌な気分になるかな、何でそんなこと言うのだろうなど、頭の中で思い浮かべてみましょう。
こういったことを考えながら会話するなんて疲れるじゃないかと思うかもしれません。


お友達や家族であればそれぐらい脊髄反射的に言葉を発しても許される環境であることは多いと思います。
しかし、それが職場だと、当然言葉を選んだ方が、うまくいく可能性が高いと認識したほうが良いのではないでしょうか。
そう考えると、正直な言葉ばかりを発していると損をすることが多いのは確かです。

自分のモヤモヤを減らすためには、自分の今から発する言葉を自分なりにある程度吟味した上で、言葉を選ぶ。

これが一番いいのではないかと思っていたりもします。

まず、ご家族の中で練習してみるのはどうでしょうか。
ご家族の中であれば、ある程度許される言葉遣いもありますよね。
そういった発言は、お互いの信頼関係の中で許されていると考えるのが妥当でしょう。

そこでまず家族の中で、瞬間的に発言してしまおうとしたその言葉について、少し考える時間を持つ。
例えばそれが10秒も時間が開いてしまうと会話として成り立たないので、考えている間は「うんうん」と言いながら頷いてみるなどしてみると良いのではないでしょうか。

おそらく私はこの頷いている時間が多いと思います。
私のうなずきが移ってしまった人もいるくらいです。

このように何か頭の中を巡らせている間も、それほど違和感がないよう繋いでおくことは大切です。

繋いでおきながら、どの言葉が適切か自分の持っているボキャブラリーの中から選ぶという練習をしてみましょう。

また、文章の最後をどういう言葉で終わらせるかで相手の受け取り方が随分変わってきます。

驚いた時も「びっくりした!」のようにビックリマーク(!)で終わらせるのと、「そうだったのですねー」と語尾を下げて、柔らかく終わらせるというように同意でも反対でもなく、状況の確認だけで終わらせる、「イマイチじゃないですか」というように反対の意見として終わらせるというような、この3つの方法では相手に対する印象は全く違ってきます。

もし、イマイチだなと思っていたとしても、2番目の「そうだったのですね」という、状況をいいとも悪いとも言わず、自分の意見は乗せず、その状況があったということを認めるような発言だけで済んでいく事はあると思います。

つまり、相手が私たちに意見を求めていないことの方が、世の中には多いということです。

そこでわざわざ意見を求められてもいないのに、反対意見を返してしまうと、当然ですが相手は機嫌損ねてしまうという話になります。

そう考えると、おそらくご質問いただいた方は、ご自身が反対意見とも思わず、反射的にお返しになっている言葉というのが、相手には反対意見として受け取られている可能性が高いのではないかと考えられます。

だからまずお返しする言葉というのが、例えばよく言うリピートです。
同じことを繰り返す。
その方が言ったことと同じことを繰り返してみる。

話をしたい側というのは、話をしてそこで満足する場合も多いので「そうなのですね」という返答でも良い場面が多いと思います。

「それは素晴らしいですね」「それは良くないですね」のような判断を求めていない場合は、まずそこを見極めてはいかがでしょうか。

そうしていくと割と会話にトゲが立つこともないのではないでしょうか。

同意しかねるということも、ストレートに言ってしまうよりは、「そういうことがあったのですね」であれば同意でもなく、反対でもないということになります。
つまり、起こった出来事というものを反復してみる。

これくらいの会話をまず一回挟むと、その後ボールは相手に渡るわけですから、相手からどんな言葉が返ってくるかを待てばいい。
そういったような一つクッションをおく、頭の中での一巡りというものを足してみるのも良いかと思います。

ぜひみなさんの中でも、相手と嫌な感じをうまない会話の工夫で、周りの方と心地よい関係を築いていただけたらなと思っています。


皆さんからの温かいサポートはすべて「保護ねこ活動の支援」に使わせて頂きます。 いつもご声援有難うございます。