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更年期症状がひどい人・ほとんどない人は何が違うの?

こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

私は、「更年期」というテーマでお話をさせていただく事が多くあり、そこに参加してくださった皆さんからたくさんの質問をいただきます。その質問に目を通す中で、“更年期”と呼ばれている時期に対しての捉え方が、人それぞれで本当に多種多様だなということを感じました。

今回は、この「更年期」をテーマにお話をしていきましょう。

更年期の悩みは人それぞれ

私は産婦人科医ということで、このウィメンズヘルス、特にホルモンの分野が専門です。
そのような事もあり、自分自身のこれから先に対する恐れというものは、ほとんどないというのが実際のところです。

しかし、更年期という時期にはまだ遠い方ですら、更年期に対して恐怖の気持ちが強いと感じることがあります。

例えば、生理痛が辛いから更年期もひどい状態になってしまうのではないかという不安。


今やってきている生理というものが、自分たちにとってデトックスの力があるのに、それが無くなってしまうとデトックスができなくなってしまうのではないかというような不安。

本当に色々なことが頭の中で、割とごちゃごちゃとした状態になっている。これがいわゆる“更年期”という時期を示す、私たち女性特有の悩みのタネとも言えるのかなと思います。


更年期の症状を感じやすい人とは

その中でよくいただく質問で、更年期の症状がものすごくひどい方と、全く感じずに過ごすことのできる方がいるのは、どのような違いがあるのですかという質問をよくいただきます。

教科書的には、いくつも指摘されていることは既にあって、まず1つ目がキャラクターです。
どんな方が更年期障害の症状を感じやすいかというと、以下の方が当てはまるかなと思います。

・とても真面目な方
・すごく一生懸命で、何か1つの物事に取り組もうとする方
・視野が非常に狭い方
・そこだけにフォーカスが当たっていて周りが見えなくなるような方
・自己犠牲型、誰かのために何かの役に立ちたいと強く願っているような方
・子供のため、親のため、不妊治療に対してなど、何かしら1つの事に、
ものすごく気持ちも時間もかけてしまうような方


こういったタイプの方が、キャラクターとして更年期の症状が強く出る傾向にあります。それによって、“更年期障害”と呼ばれるグループに入る可能性が高いということが言われています。

そして2つ目が、人生における曲がり角に相当するような経験をされる方です。

例えば、子育てを一生懸命されてきた方。
息子さんにご飯を作るのが楽しみだったお母さんが、息子さんが結婚されるということによって、ご飯を作らなくてもよくなってしまうという喪失感。心にぽっかりと穴が開いてしまったような状態。

嫌だなと思いながらお姑さんの介護続けてきた方。
嫌だと思いながら頑張ってきたけれども、ある日急にお姑さんが亡くなってしまった時に感じる喪失感。

他にもパートナーの方に、女性として見てもらえなくなったと感じるような経験をされた方。
性交渉の頻度が非常に少なくなってきた、自分自身を女性として見てもらえているという機会が減ってきたなど、こういった何かしらトラウマティックな経験により、心がポキッと折れてしまうきっかけになる可能性があります。
こういった経験をされている方ほど、更年期の症状というものが強く出るだろうと推測されます。

ご紹介した1つ目、2つ目のお話というのは非常に情緒的な話です。
自分に当てはまるものがあっても、更年期の症状が強く出るというような影響を感じないようなケースもあります。

3つ目にあげられるのは、エクオールの産生能がどれくらいあるかということです。
これがおそらく強い影響力を持っているのではないかと個人的には思っています。
このエクオールという成分は、大豆製品や大豆イソフラボンから代謝される生成物で、大豆イソフラボンが腸の中で代謝され作られます。
このエクオールがエストロゲン様作用(エストロゲンと似た働きをしてくれる作用)を持っているので、更年期の症状が出る方だったとしても、あまり強く出ずに済むといったケースが少なからずあるのではないかと言われています。

そもそもエクオールの産生能を持っている方(大豆イソフラボンをエクオールに代謝することができる方)は、私たち日本人の2人に1人とされています。
つまり2人に1人はエクオールを産生することができるということです。
なぜかと言うと、日本人の日常的な食事の中には、大豆製品が何かしら含まれている可能性が高いからです。

例えば、豆腐・納豆・油揚げ・豆乳などあまり気にしなくても、日常の中で食品として摂っている可能性が高いでしょう。

この大豆イソフラボンからエクオールが産生できる方というのは、更年期の症状が出る方だったとしても、エクオールがエストロゲン様作用をしてくれるために、更年期の症状をそこまで感じずに過ごせる可能性があるということです。

エクオールの産生能があるかどうかは、尿の検査で調べることができます。

一方で、更年期特有の不調を感じやすい人の中には、エクオールの産生能がほぼ無く、せっかく大豆製品を摂ったとしても、産生することができないため、更年期特有の症状を強く感じる可能性がある。

この2つのようなグループ分けが出来るのではないかと思うわけです。

教科書的には、1つ目にお話をしたキャラクター、そして2つ目の人生の曲がり角になり得るような経験をしていないかといった項目が更年期特有の症状を強く感じるか、全然感じずに生理がなくなるという変化だけで過ごしていけるかの違いだろうとされています。
さらに、そこにエクオールの産生能というものを並べてみると、非常にすっきり理解ができるのではないかと思っています。

更年期は人生の折り返し地点

そもそも、この更年期という時期自体が、私たち現代に生きる女性にとって、まだまだ人生の折り返し地点と言ってもいいぐらいです。

そこから先、40年生きられると考えた時に、更年期と呼んでいる時期をどう上手くやり過ごしていけるのか。そして、更年期の後の閉経後という年代に、どう上手く入っていくことができるか。
これが残りの40年間をより良いものにしていけるかどうかにかかってくるのではないのかと思っています。

私には、エクオールの産生能がないことが、これまで2回の尿の検査で分かっていますのでエクオールサプリメントを飲み続けています。
そのため、この更年期特有の症状は、そんなに強く出ないだろうと予想しています。

もちろん、更年期症状が出てもおかしくない年代に入っていますが、このような “転ばぬ先の杖”の対策ができていれば、そこまで恐れることなく、更年期を迎え、過ごしていくことができるのではないでしょうか。

ただもう一つ言える事とは、キャラクターであったり、人生の曲がり角になり得るような経験というものも変えていくことができると考えています。

何か1つの物事に一生懸命になる事は、もちろん大事だと思います。
しかし、そこにこだわりが強すぎると、それは執着にもなり得ます。

そこにこだわりすぎることなく、バランスよく物事に取り組むことができれば、そこまで1つの物事に取り憑かれたような状況になってしまうことはないのかもしれません。

さらに、曲がり角になり得るような経験をしたとしても、その出来事自体を、なるべく前向きに受け止めるような捉え方というものは、私たち自身の意思でできたりもするのではないでしょうか。

つまりこの更年期症状というものが、どの程度で起こるのかという点に関しては私たちの意思と、ある意味もう一つの選択肢によって変えていくことができるということを知っておいていただくと良いのかもしれません。

それでも更年期の症状が辛い、つまり“更年期障害”だという方は、婦人科に受診していただいて、あり得る他の病気を否定した上で、この更年期障害に対する治療を始めていただくことがベストだと考えています。

まとめ

この更年期というテーマに関して、皆さんとお話をしていると、どのような不安を持っているのか知ることができますが、産婦人科医として知識を持っていると、医師としては想像ができないような方向から不安に感じている人がいるということに気付きます。

正しいことを知っていただくことで、皆さんの生活の中での不安や、近い未来に対する不安というものを減らすことができるのであれば、こんなに嬉しいことはありません。

今回は、更年期症状が強く出る方、ほとんど感じず過ごしていける方の違いについてお話をしてみました。

今、更年期の真っただ中におられる方、これから自分も更年期を迎える可能性が高いという方、こういった方たちのお役に立てればと願っています。


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