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クソ映画「レジェンド&バタフライ」

好き嫌いは抜きにして、現役ジャニーズメンバーで映画ファンに映画俳優として認められているのは木村拓哉・岡田准一・二宮和也の3人であることは間違いないと思う。

今回の日本アカデミー賞の各部門には二宮以外ではジャニーズから有岡大貴、松村北斗、目黒蓮も名を連ねているが、シネフィルと呼ばれる人種のほとんどは彼等を映画俳優としては認知していないと思う。

正直なところ、ジャニオタは推しどころか、ジャニーズメンバーの出ている作品は何でもマンセーするし、大手マスコミの多くはジャニーズ批判ができないから、ジャニーズを入れておけば日本アカデミーそのものに対する批判も減るだろうという魂胆も見え隠れしてしまう。

とはいえ、映画ファンが認めている三大ジャニーズ俳優だって、そこまで名優と呼ばれる域に達しているかというとそうでもないのも実情だ。

岡田は時代劇の殺陣を含むアクションに対する評価が中心だし、二宮も今回の日本アカデミーの優秀主演男優賞に入っている「ラーゲリより愛を込めて」など実話もの・歴史ものに関しては名演技を披露しているが、「TANG タング」のようなファンタジー作品では正直なところ、そんなに魅力を感じることはない。

そして、本稿の主役である木村拓哉の演技に関しては、よく言われるように、“何をやってもキムタク”だと思う。まぁ、ジャッキー・チェンやトム・クルーズ、日本でも吉永小百合のように映画スターと呼ばれる人ならそれでもいいとは思うけれどね。

個人的にはキムタクのベスト演技はマクドナルドのCMで演じている中間管理職の役だと思っている。
古いやり方の良い面も分かっているが、そのやり方は今では通じないことを理解している。
金も権力もないのに上と下の間で板挟みになっている。そうした団塊ジュニアの中途半端なポジションがうまく表現されたCMだと思う。
キムタクは団塊ジュニアではあるが、金も権力もある。なのに、立ち位置が定まらない典型的団塊ジュニアにしか見えないということは彼の演技力のおかげなんだと思う。

そんなわけで、キムタクの演技が良い方に向かうのか、それとも時代劇でも単なるキムタクで終わるのかといった視点で本作を見ることになった。

率直な感想を述べるとすれば、キムタクは相変わらずキムタクだったという一言に尽きるのではないかと思う。

それから、時代背景的な観点からは正しいのかも知れないが、怒鳴っているだけの男尊女卑で差別主義なパワハラ野郎の信長には全く共感できず2時間48分もある上映時間の間、ずっと、パワハラ野郎を見させられているのは苦痛でしかなかった。

これで濃姫が良識あるキャラならまだいいんだけれど、いくら夫・信長の金品をすった連中で自分も襲われそうになったとはいえ、社会的弱者である貧民たちを残虐なやり方で殺してしまうのには全く理解ができなかった。信長が貧民を殺すのはまだ分かるんだよね。すられた諜報人だし、目的を達成するためなら女子どもだろうと殺すのはためらわないという主義だからね。でも、濃姫までそれをやってしまってはダメでしょ。それでは男尊女卑社会に自分の意見を通そうとして闘った女性として共感してもらうことはできないよ。

まぁ、濃姫役の綾瀬はるかは相変わらず、アクション能力が高いし、時代劇演技に適している女優だとは思ったけれどね。

そして、ダメダメなのがキムタクにしろ綾瀬はるかにしろ、年を取っても精神を病んでも体調が悪化しても見た目がほとんど変わらないことだ。というか老けない。キムタクや綾瀬はるかのファンはきれいな顔を見たいのかも知れないが、アイドル映画ではないんだから、年を取ればきちんと老けメイクにすべきだし、病気になれば体重を減らすなり、特殊メイクを施すようにするなどして、それらしく見せるべきだと思う。

あと、2時間48分もあるのに信長の父の死とか、濃姫の父の死のような大事な場面はテロップ処理だったり、説明台詞で片付けたりして、きちんと描いていないのも意味不明。
その一方で、先述したような必要性を感じない残虐シーンはあるし、それどころか後半にはホラー描写もあるし、終盤には夢オチっぽい場面も入ってくる。何じゃこりゃ?って感じだ。

それから、若い人にも時代劇を見てもらいたいという気持ちから堅苦しくない描写を挟みこんだりしているのだろうが、それが下ネタとかダジャレという完全におっさん向けなのは全くもって意味不明だ。時代劇の好きな中高年には嫌われるし、若者からすれば老害にしか思われない。何がやりたいんだかという感じだ。

本作のメガホンをとった大友啓史は実際にあった事件や実在した人物を描きつつも基本はフィクションというかファンタジーに近い実写版「るろうに剣心」シリーズで知られているが、結局、本作も信長や濃姫を使ったファンタジーもどきにしかなっていないんだよね。だとしたら、まだ、「信長協奏曲」とか「ブレイブ -群青戦記-」のようなタイムスリップした現代人と戦国武将が関係を持つ系の作品の方が、SF・ファンタジーとして割り切っている分、マシかなって思う。

歴史大作をやりたいのか、信長・濃姫をネタにしたファンタジー恋愛映画にしたいのか中途半端なんだよね。せめて、「るろ剣」レベルの虚実混在にまで落としこんでほしかったなとは思う。
結局、70周年大作ということで東映が意気込んでいるし、製作委員会にはジャニーズやテレ朝が入っているしで、色々な意見を採用しなくてはいけないから、こういう中途半端なクソ映画になってしまったんだろうなと思う。

それにしても宮沢氷魚って、すっかり、寝返りキャラのイメージがついたよね。「ちむどんどん」のおかげかな?

まぁ、そもそも時代劇なのに「レジェンド&バタフライ」ってタイトルな時点でクソ映画臭はしていたんだけれどね…。「伝説と蝶」でもダサいが…。


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