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2023年映画始めは「RRR アールアールアール」

自分は広義ではシネフィルに分類される人間なんだとは思う。
でも、インド映画って数えるほどしか見たことがなかったんだよね…。
「スラムドッグ$ミリオネア」とか、「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」、「ミリオンダラー・アーム」といったインドを舞台にしたハリウッド資本の作品を広義のインド映画と呼んでいいのなら、ちょっとは本数が増えるけれど…。

インド映画を避けてきた最大の理由は上映時間が長いからだ。ミュージカル・シーンの入っている作品がほとんどだから、ドラマ寄りのものを除けば、まず、上映時間が2時間半を切るものはないからね。
それと、日本の信者的なファンが“これより面白い作品はない”的にアピールしまくるのが苦手というのもあった。3時間近い映画を何度もリピートする暇があるなら、他の新作映画を見ろよって正直思うしね。

でも、本作には何故か興味を持ってしまった。

まずは日本でヒットしているということだ。
日本で公開されたインド映画で過去最高のオープニング興収を記録したほか、観客動員数ランキングのトップ10入りも果たし、さらには日本で公開されたインド映画で最大のヒット作品となってしまった(ネットニュースの記事によると年末時点で興収4.5億円)。

そして、それよりも大きな理由としてあげられるのが米映画賞レースに参戦しているということだ。

ニューヨーク映画批評家協会賞では監督賞を受賞したほか、ナショナル・ボード・オブ・レビューではトップ10フィルムに選ばれている。
また、アカデミー賞の作品賞候補の予想でも10本枠に入る可能性が高いと言われている。

最近のアカデミー作品賞の受賞・ノミネートを振り返ると、

2019年度は韓国映画の「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受賞。
2020年度は中国出身の監督が米国で撮った「ノマドランド」が作品賞を受賞、ほとんどの台詞が韓国語で構成されている韓国系米国人監督作品「ミナリ」が作品賞ノミネート。
2021年度は日本映画「ドライブ・マイ・カー」が作品賞ノミネート。

といった具合にアジア映画・アジア系米国映画を評価する機運が高まっている。

今回の2022年度は共同監督の1人がアジア系の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」の作品賞ノミネートが確実視されている(既にロサンゼルス批評家協会賞やゴッサム賞の作品賞を受賞)。

この流れから、本作の作品賞ノミネートの可能性もゼロではないので、見ておかねばという気持ちが高まっていた。

ただ、上映時間が長いから、体調がある程度の状態でないと見られないし、睡眠不足の時には見たくないと思うし、仕事や他の用事がある時は気軽に見に行くことはできない。しかも、長尺だから上映回数も多くはない。ということで、年が変わるまで鑑賞機会を逃してしまっていた。
ところで、KineNote準拠だと3時間8分、Wikipedia情報だと3時間2分、本作を鑑賞した劇場の公式ホームページだと2時間59分と上映時間の表記がバラバラなのは何故?

そんなわけで長尺作品であるがゆえの不安要素である尿意や睡魔に襲われないかを気にしながら本作を見ることにした。

まず、館内の客層に驚いた。どうせ、金ローとか午後ローを見ながら実況するのが好きな40〜50代の男が必要以上にマンセーしているだけでしょと思っていたが、結構、60代の男性観客もいるし、何よりも、いわゆるオバサンと呼ばれるタイプの観客も多かった。もしかすると、オーバー60の男性はインド美人のヒロイン(シータという役名だが、めちゃくちゃ可愛い!日本人好みかも)、オバサンはちょっと濃いけれどイケメンのメイン2人目当てなのかな?

作品自体の評価としては、約3時間という長さは感じたし、ツッコミどころだらけだし、ストーリー展開もベタベタで想像通りに進んでいくけれど、そのアツさにはひれ伏すしかない。また、ちょっと泣けるところもあって、トータルとしてはかなり良かった。去年のうちに見ていれば、年間トップ5に入れることができたのにと思った。

そして、見る前は単に、黒人一辺倒でなくアジア人のこともきちんとケアしているよとアピールするための最近のアジア映画・アジア系映画人評価の流れで本作が絶賛されているだけでしょと思っていたが、実際に見てみたら、明らかに白人および白人文化を批判する内容になっていた。

そして、本作における英国(白人)という巨悪を倒すために武力行使という道を選んだインド人の姿を、悪とされるロシアと戦うウクライナという現在の世界情勢に重ねて評価している面もあるような気がする。ロシアがウクライナに侵攻した際、日本の左翼・リベラル・パヨク勢力は“どんな理由があっても武力はダメ”と偽善的なことを言っていたが、そうでない人はウクライナ側の立場を理解していたし、欧米では左派でも悪のロシアを叩くためにウクライナが武力を行使するのは問題ないというスタンスだったしね。

なので、単にインド映画界のパワーが評価されたとか、間もなく中国を抜き世界最大の人口を持つ国になり、近いうちに経済大国としても中国を抜くのではと言われているインド市場に媚びただけではないということかな。

まぁ、笑っちゃうくらい見得を切ったようなアクションは見ていて爽快になるし、メインの2人と、インド人ヒロイン、白人ヒロインはみんな美形だし、見て損はないよね。マスターベーションのような暗くて難解な作品しか映画と思っていないような連中でもない限り、この映画は楽しめるのでは?
それから、ミュージカル・シーンもそんなに多くはないから、ミュージカルを毛嫌いする人でも何とか見られるのでは。
あと、エンド・クレジットが全く読ませる気がない小さい文字で流れていて、メインは主要キャスト集合による主題歌のダンス映像となっているのもちょっと笑ってしまいそうになった。

《追記》
キネカ大森に来たの1年2ヵ月ぶりだ…。
キネカを出てすぐのレストラン街、完全にシャッター商店街状態になっているが西友は大丈夫なのか?簡易的な壁で覆われ、テナント募集の貼り紙がしてあるってことは単なる正月休みではないしね。

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