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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー

前作「ブラックパンサー」はBlu-rayを買ったくらいだから、好きな作品なんだけれど、個人的には過大評価されすぎた作品だと思う。

アメコミ原作映画として史上初のアカデミー作品賞ノミネートとなったが、もし、この作品の主要キャラクターが白人だったら、ここまでの評価はされなかったと思う。

当時のアメリカ合衆国大統領だったドナルド・トランプ憎しの思いだけで、トランプ支持層が嫌いそうな題材(黒人や女性、同性愛者、障害者の差別問題など)を取り上げた作品が必要以上に評価されやすい面があり、本作もそうした恩恵を受けた作品だったのではないかと思う。

同じ2018年に公開されたアメコミ映画で言えば、「デッドプール2」の方がマイノリティ差別問題をきちんと描いていたと思うので、やっぱり、黒人というだけで優遇されている面は否定できないと思う。ちなみに、「デップー2」もBlu-rayを買っている。

本作品はマーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ4(深夜アニメ風に言えば4期?)の映画作品としては“完結編”となる作品だ(配信作品はまだあるが)。

今期はこれまでのフェーズとは異なり、映画だけでなく配信作品も含まれているのが特徴だ。しかも、Disney+の独占配信だから、同サービスを契約していない自分のような者にとっては、今期の劇場作品を見てもなんだかよく分からない部分が多いのも事実だ。
要は、まともに見たことがないテレビドラマやテレビアニメの劇場版を見に行って、世界観とかキャラクター設定が全く理解できずにポカンとしてしまう現象と同じだ。
つまり、フェーズ4になって、マーベル映画は、配信ドラマの劇場版になってしまったということだ。

また、前フェーズの最終作品となった(ソニー作品の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」を除く)「アベンジャーズ/エンドゲーム」で2大メインキャラだったアイアンマンとキャプテン・アメリカが離脱してしまったため、本フェーズでは、「シャン・チー」や「エターナルズ」の面々が新たに加わることとなった。また、これまではなかった「ブラック・ウィドウ」の単独作品も発表された。
でも、正直なところ、これらの新展開作品がうまく行ったとは思えないのも事実だった。

それに、前フェーズからの生き残り組だである「ドクター・ストレンジ」や「ブラックパンサー」の人気は日本では高くない。

こうした中、コロナ禍になって日本では、マーベル作品を含むディズニー映画はDisney+で見るものという意識が定着してしまった(米国では、それなりにヒットしているが)。自分のように契約していない人や、契約していても映画館で見たいマニアだけが見るものになってしまったんだよね。

ソニー作品の「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」を除くと、フェーズ4作品で興収20億円を突破したのは「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」だけだ。

その次がフェーズ1から毎フェーズごとに単独作品が発表されている「ソー」シリーズ最新作の「ソー ラブ&サンダー」で13億円超。
今フェーズからの単独作品では「エターナルズ」が唯一の10億円の大台突破作品で12億円。

ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(「スパイダーマン」シリーズのスピンオフシリーズ)作品で決して評価は高くない「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」(興収19億円超)よりヒットしていないんだよね…。

結局、ソニー作品はすぐに配信されないから映画館で見るけれど、ディズニー映画はすぐに配信される。しかも、マーベルは配信作品も多いから映画としてのイメージが薄れてしまった。
だから、実質的に日本ではマーベル作品は映画も配信ドラマのスペシャル版扱いになったということかな。ディズニー配給のマーベル映画はOVAのイベント上映みたいな存在ってことかな。

なので、日本では本作はフェーズ4の完結編としての盛り上がりには欠けている。

そもそも、コロナの影響で本フェーズの第1弾映画「ブラック・ウィドウ」の公開が延期されて2021年7月になってしまったから、いくらこの間に7本(プラス多くの配信作品)が立て続けに公開されたとはいえ、たった1年4ヵ月で完結と言われてもねという気もするしね。
ちなみにフェーズ1は米国公開日基準で丸4年で6作品。フェーズ2は2年2ヵ月で6作品。フェーズ3は3年2ヵ月で11作品となっている。
やっぱり、今回のフェーズは期間が短すぎる。消耗品になっている気がするな。

そして、本作を不安視したくなる最大の要因は前作の主演だったチャドウィック・ボーズマンががんで他界してしまっているということだ。

これまでのマーベル・シネマティック・ユニバース作品でもキャストの変更はあった。

ハルク役は単独作品「インクレディブル ・ハルク」ではエドワード・ノートンが務めていたが、その後の関連作品でのハルク役はマーク・ラファロに変わっている。
また、「アイアンマン」の1作目では主人公の親友ローディ役はテレンス・ハワードだったが、その後の「アイアンマン」シリーズや関連作品ではドン・チードルに変わっている。

だから、別の俳優が主演でシリーズを続行しても問題はなかったはずだ(ファンの中に不満を持つ人はいるとは思うけれどね)。

でも、そうはせず、ブラックパンサーの妹・シュリを主人公にしたのは、女性、しかも、黒人女性の活躍を描いた作品の方が今のポリコレ至上主義が蔓延した欧米のハリウッドでは評価されやすいというのを意識したものであることは間違いないと思う。

そんなわけで大いなる不安を抱きながら、本作を鑑賞することとなった。

途中まではそんなに悪くなかったんだよね。
最大の悪役を米国を中心とする先進国としていることは、今のバイデン米政権が野党・共和党の支持者のみならず、与党・民主党の支持者からも評判が良くないことは中間選挙の結果からも分かることだから、本作における米政府の扱いに対して批判的になる米国人は少ないと思う。

また、本作で描かれているワカンダが持つ資源を利用しようとする先進国の姿もリアルだ。先進国が途上国の資源は利用するけれど、彼等が先進国の仲間入りするのを阻止しようとするのは、CO2排出削減を巡るやり取りそのものにも見えた。

そして、本作ではワカンダと同様、資源を抱えるタロカンという国も出てくる。ワカンダとタロカンは資源を巡る考え、特に資源を狙う先進国に対する考えに相違があり、対立している。

これはまるで、欧米社会からすると似たような国に見えるのに(元はどちらもソビエト連邦だったし)対立しているロシアとウクライナの関係を彷彿とさせる。

現実世界のウクライナ情勢と異なる点は欧米社会の視点だろうか。ウクライナ情勢を巡って欧米はウクライナは善、ロシアは悪としているのに対して、本作の欧米社会はどちらも悪としているからね。

というか、本作の主人公であるシュリは、母である女王の命を奪ったタロカンに復讐することしか考えていない(終盤になって改心するが)。全然、やっていることがヒーローではないんだよね。

というか、このタロカンの人々のビジュアルが気になった。アクアマンとアバターが合体したような風貌だけれど、もととなっているのはヒスパニックとかアジア系に見えるんだよね。
もしかすると、黒人、ヒスパニック、アジア系がマイノリティ同士なのに対立していることを描いているのだろうか。まぁ、大抵は黒人がヒスパニックやアジア系を差別しているんだけれどね。自分たちは差別されているとか主張しておきながら、ヒスパニックやアジア系に対しては白人以上に差別していらからね。

それにしても、全然、シュリに共感できなかったね…。ずっと自分勝手だからね。それで、終盤になって、突然改心して、自ら瀕死の状態にしたタロカンの指導者に和解を申し入れるというご都合主義だからね…。しかも、それをタロカン側が受け入れる。ありえないでしょ!
申し訳ないがクソ映画としか言えない。こんな作品で、フェーズ4を締めくくっていいのか?

ところで、自分はマーベル映画は字幕版でしか見ないけれど、前作を見た時はシュリの日本語吹替版ボイスキャストの百田夏菜子は彼女が黒人だったら、こんな感じだろうねと思うくらい、ハマっているキャスティングだと思ってんだよね。
でも、本作のシュリは前作とイメージが変わってしまったから、全然、百田夏菜子のイメージとは合わなくなってしまった。

というか、本作のシュリってLGBTQっぽい雰囲気あるよね。作品自体も女性の活躍を前面に出しているしね。男性キャラで目立った出番があったのは、敵役となるタロカンのリーダーを除けば、シュリに協力するCIA捜査官と、ワカンダを構成する部族の一つのリーダーのエムバクくらいだしね。だから、黒人の活躍を前面に出してアカデミー作品賞候補となった前作のように、本作もうまく女性の活躍を前面に出した作品にすれば、2作連続でノミネートされる可能性だってあったと思うんだよね。

なのに、後半がクソみたいな展開だから、ただのクソ映画になってしまった。

やっぱり、チャドウィックが亡くなって、内容を大幅に変更せざるを得なくなったせいで、まとまりのない作品になってしまったんだろうね。そりゃ、チャドウィックの存在感はすごかったから代役を探すのは難しいとは思うけれど、それでも純粋に代役で前作の続きをやった方が良かったと思うな。

そう言えば、本作の主題歌はリアーナだ。新曲を出すのは久しぶりだからね!しかも、エンドタイトルに流れる“Lift Me Up”とエンドクレジットに流れる“Born Again”と2曲も聞ける!

まぁ、どちらもかかっている時間はそんなに長くないから、前作のケンドリック・ラマー feat. シザの“All The Stars”のようにアカデミー歌曲賞にノミネートされることはないと思うが。

来年2月開催のスーパーボウルのハーフタイムショーに出演すると発表された時点で、それまでに新曲は出るんだろうなとは思っていたが、まさか、「ブラックパンサー」楽曲だとは思わなかった!

オリジナルアルバムは2016年1月の『Anti』以来リリースしていないから、もうすぐ7年になる。
同アルバムからのシングルを除くと、この7年近くの間にフィーチャリングアーティストとして参加した曲は何曲もリリースされていて、DJギャレドとの“Wild Thoughts”なんて全米チャート最高位2位の大ヒットになっている。
でも、自身がメインの作品としては、『Anti』からのシングル以来だからね。

ハーフタイムショーが楽しみだ。今年のドクター・ドレー一派を中心にした中年向けラップ/ヒップホップ・ソウル祭りも最高だったが、今度のリアーナも楽しめそうだ。

ところで、単なる広告が入場者特典っていうのはどうなんだろうか…。

それからTOHOシネマズ渋谷で鑑賞したが映写が酷かった。字幕がところどころ切れかかっていたからね。確認していないんだろうね。本当、東宝って映画ファンをなめているよね。日本映画界で一人勝ち状態だから殿様商売なんだよ。


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