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ラーゲリより愛を込めて

現役ジャニーズで映画ファンに映画俳優と呼んでもらえるのは好き嫌いを抜きにすれば、木村拓哉・岡田准一・二宮和也の3人だと思う。
キラキラ映画やアニメ実写化作品などに出ているジャニーズメンバーなんかは、それぞれのファンが絶賛しているだけで、シネフィルには評価されていないのが実情だしね。

その3人にしてもタイプはバラバラだ。
木村拓哉は言うまでもなくいつもキムタクだ。要は演技派俳優ではなくスターということだ。
岡田准一に関しても演技派というイメージはあまりない。時代劇やアクション映画が多いことからアクション俳優のイメージが強い。というか、自分で殺陣をつけたり、カメラを回したりとスタッフの仕事もしているので、映画人と呼んだ方がいいのかも知れない。
そんなわけで、この3人の中で唯一、演技で見せるタイプと言っていいのが二宮和也なのではないだろうか。

本作はそんなニノの演技力を堪能できる作品だった。

ただ、日本の映画賞レースというのは年内に発表するものは年末公開作品が未見状態の人が多いから評価されにくいし、キネマ旬報とか日本アカデミー賞のように年が明けてから発表されるものでも対象期間がきっちりとカレンダーイヤーになっていないものが多いため、年末公開作品の対象年度が分かりにくいせいか評価されにくい。

実際、2000年度以降の日本アカデミーで12月公開作品で最優秀作品賞に選ばれたのは2013年12月公開で2014年度の対象となった「永遠の0」だけだ。
本作も現時点での賞レースでは評価されていないようだし、せっかくのニノの好演が評価されないのは残念だなという気もする。日本アカデミーくらいは評価してあげてほしいな…。最初の登場シーンなんて、一瞬、ニノと分からなかったしね。あと、病状が悪化してからの演技も評価に値する。

好演といえば、本作における桐谷健太の演技は桐谷健太史上最高の演技だと思う。まぁ、誰が見ても桐谷健太なんだけれどね。
そういえば、北川景子も北川景子史上最高の演技を見せていた。普段はいつも同じ表情だったのに、あんな感情を露わに泣き崩れる演技を見せるとは思わなかった。てっきり、将来は吉永小百合みたいに何をやっても北川景子状態になるのかと思ったが、違うパターンの演技もできたようだ。演出が良かったのかな?
ただ、髪の色はもう少し黒くできなかったのかなとは思った。そういうのが日本映画のダメなところだよね。

それにしても色々な勢力による色々なプロパガンダが詰め込まれた作品だったな…。

本作で描かれている旧ソ連による捕虜への非人道的な行いを見れば、多くの人が現在、ロシアがウクライナに対して行っている行為と重ね合わせずにはいられないと思う。
でも、ウクライナ侵攻に対するメッセージは本作が企画された時期を考えれば後付けのものだと思う。

しかし、共産主義はロクなものではないというメッセージは確実に込められていると思う。
ロシア文学を好み、ロシア語を話せる主人公に対しても非人道的な行為を働くソ連の姿や、収容所における待遇を良くしてもらうために共産主義者になった日本人捕虜の描写は明らかにそういう趣旨のものだと思う。つまり、現在の日本においても左翼思想は危険だ、つまり、野党は信用できないというメッセージをサブリミナル的に伝えようとしているのではないだろうか。

また、終戦(敗戦)したばかりの日本の捕虜が米国の民謡を合唱しているのも謎だ。まだ帰国しておらず、下手すると終戦(敗戦)も理解していないのも多いだろうし、収容所内では戦時中の軍隊そのままの上下関係が温存されたということなのだから、“鬼畜米英”の曲を歌うっておかしいでしょ?日米同盟は必要だというプロパガンダなのかな?一種のオトモダチ作戦みたいなもの?
でも、そのくせ、日本は米軍の大空襲で大打撃を受け、収容所にいる者の家族も命を失ったみたいな反米思想も突然入ってくるし、ポリシーがないんだよね。
安倍政権批判の“ピースとハイライト”のカップリング曲がネトウヨ老害作家・百田尚樹原作映画「永遠の0」主題歌“蛍”だったサザンオールスターズみたいだね。

そして、作品の至る所から日本の戦争責任を問う必要はないほど、日本は罪を償ったというメッセージも感じることができた。
ソ連の捕虜となった元日本兵は終戦後10年以上も抑留されていたし、日本兵は指導者だけでなく、単なる上から命令された通りに動いただけの人間まで戦犯として処罰されている。
そう考えると、韓国や中国などがいまだに日本に謝罪を求めてくることに対して、いい加減にしろと言いたくなる気持ちは分からないでもない。
そういう視点で見れば、嫌韓・嫌中、つまり、ネトウヨ思想の作品にも見えてくる。

とはいえ、全体としては反戦・平和のメッセージ、つまり、左翼的な主張が貫かれている。
日本兵上官の暴力的な様子や人を裏切る非人道的な面も描いている(まぁ、彼等は最終的には主人公側につくが)。

本当、ポリシーないんだよね…。

あと、思想は関係ないが4分割された主人公の遺書を受け持った4人が順番に主人公の遺族に伝えに来るシーンはくどいね。
まぁ、それが分かっているから、2番手、3番手、アンカーと出番はどんどん短くなっていっているんだろけれどね。
というか、この遺書、単なるお別れの手紙で厳密な意味での遺書でないしね。

こうした矛盾だらけ、ツッコミどころだらけの内容も実話を基にした作品と言っておけば、実話だから仕方ないかになってしまうのってずるいよね。
実話映画化作品を好きになれない理由ってこれなんだよね。
そんなわけで、実話ベースの作品だから言いたい放題言ってもネタバレにはならないよね?

それにしても、嵐ファンなのかなんなのか知らないが、マナーの悪い観客が多かった。見たのが新宿だったせい?それとも、ジャニーズがコンサートでの声出し解禁をしたから、ジャニオタは映画館でも好き勝手やっていいと思うようになったのか?明らかに缶ビールか何かを持ち込んであけている音は聞こえたし、ずっとガサゴソしているし、携帯のバイブ音を鳴らしっぱなしにするし、本当、老害の嵐のおばさんファン、腹立つな!

《追記》
予告でMrs. GREEN APPLEの主題歌を耳にした時は、全然合わない曲だなと思ったが、本作のエンドロールのバックで流れる曲として聞くと違和感がなかった。
それは、この曲が音数の少ないゆったりとしたテンポで始まり、いわゆる2番になってから、音数も増え、テンポも上がるという作りの曲だからだ。これなら、本編の余韻をぶち壊されることはない。予告を作った奴のセンスを疑ってしまう。まぁ、レコード会社側からはアタイアップなんだからキャッチーなアップテンポの部分を使えと指示されたんだろうが、そういう指示を出した奴はセンスがないね。


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