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いのちの停車場

4週連続で“越境”して千葉県で映画を見ている。しかも、そのうち、3週間はTOHOシネマズ 市川コルトンプラザで鑑賞している。
そりゃ、電車に乗っている時間が正味20分ほどで行けるんだから、行ってしまうよねって感じかな。

それから、都内のシネコンだとハシゴするスケジュールを立てるのって非常に難しいんだけれど、都外のシネコンって結構、簡単にハシゴできるんだよね。
都内だと1つのサイトで上映される作品が多くて、1日に1回とか2回しか上映されないものも多い。同じサイト内でハシゴしようとすると、1本目と2本目の間が1時間以上あいてしまうことも多い。

でも、都外のシネコンだと上映作品はスクリーン数よりちょっと多いくらい(TOHOシネマズ 市川コルトンプラザの今日のラインナップでいえば、9スクリーンに対して上映番組は12本。しかも、そのうち1本はドリパス上映という特別上映なので、それを除くと純粋な上映作品は11本)。

だから、上映回数も多いし、ハシゴしやすいんだよね。まぁ、都内のシネコンで上映されるようなマニアックなものはかからないけれどね。

都内では、ミニシアター系の劇場は小池による休業要請や協力依頼を無視して営業しているものの、シネコンは邦画大手3社系やそれ以外も含めて休業中だ。しかし、そんな状況にもかかわらず、東京や大阪を除いた地域では、拡大系公開作品が予定通り公開されている。

だから、映画ファンなら“越境”せずにはいられないよね。というか、スポーツやライブ、演劇の観客が“越境”するのは認められているのに、映画館へ行くことが悪事のようにされているのは理解不能だ。

東京で未公開ながら、全国的には上映されている作品があるなんて、地方や郊外での映画鑑賞の場がほとんどシネコンになってしまった現在では考えられないかもしれないが、90年代半ばくらいまでは結構、そういう作品って多かったんだよね。

東京では、「日本劇場ほか東宝洋画系全国ロードショー」みたいな感じで系列が決められていて、都内の拡大公開系作品を上映する映画館は基本、そうした系列に属していて、その編成に従って上映されていた。
また、ミニシアターではあまり、ハリウッドの娯楽路線の作品は上映されなかった(90年代になり、ミニシアターが増えると作品不足からか、上映するようになったが)。
その一方で地方では、都内では1本立てで公開される作品でも2本立てで上映されることが多かった(都内でも多摩地区はそうだった)。

そうした要素が重なり、都内の映画館ではあきがなくて上映できない作品で、なおかつ、日本でのヒットが期待できないようなものを、全国公開作品の地方上映時の併映作品として公開する“スプラッシュ公開”というシステムがかつては存在していた。

シネコン興行が中心となった今では、地方や郊外でも1本立て公開になっているので、厳密にはかつての“スプラッシュ公開”と、現在の都内のシネコンが休業状態の中、地方先行で新作が公開される状況は別ものではあるけれどね。

というか、緊急事態宣言下になってから地方先行で公開された作品は、解除されたら東京や大阪でも上映すると言っていたけれど、緊急事態になって以降、多くの作品が上映初日を迎えることが多い金曜日もしくは土曜日を迎えるのは、今週で既に4週目だ。

最低でも来週までは続くし、7月上旬まで延長だという声もある。
今回の緊急事態宣言に合わせて公開を6月以降に延期した作品と、元々、6月以降に公開予定だった作品が同時に上映されるだけでも、スクリーン不足は確実なのに、緊急事態宣言解除後、東京や大阪のシネコンに地方先行公開作品まで上映する余裕があるのだろうか?ないと思うな。
せいぜい、アリバイ作りで1日1回とかの上映になるんじゃないかな?

そんなわけで、今回は東映作品「いのちの停車場」を鑑賞した。
邦画大手3社では、業界最大手の東宝は若者受けする作品が多いことから批判を避けるためか、今回の緊急事態宣言下では全ての新作の公開を延期しているし、左寄りの思想の松竹はコロナ対策に関しては慎重な姿勢を見せている。

でも、右寄りの思想の映画会社である東映は、世間一般の右寄りの思想の人間と同様に“コロナは風邪”論者のようで、ファミリー向けの「キラメイジャーVSリュウソウジャー」だろうと、中高年向けの本作だろうと構わず、東京や大阪のシネコンが営業していなくても知ったことではないというスタンスで新作を公開しているようだ。

でも、左翼思想を持つ主演の吉永小百合の視点で考えると、公開を強行するのは矛盾しているよね。
左翼は、政府や東京都に対して、コロナ対策をきちんとしろと批判している立場のはず。
コロナ対策をきちんとしろと為政者に求めるということは、一般市民に対しても不要不急の外出をしたりすることを自粛するよう求める立場でなくてはいけないはずだ。

なのに、東京の映画ファンが“越境”して他県のシネコンへやってくることを誘発するような映画の公開の仕方をするのは矛盾しているよね。
しかも、医療や人命を題材にした映画なんだから、映画ファンを“越境”させることは、映画ファンの健康を損ねる可能性があるし、それは、医療従事者の負担を増やすことにもなるわけだしさ、これが単なるコメディなら強行公開してもいいけれどさ、医療や人命について考えようって訴える作品なんだから、緊急事態宣言下で強行公開するのは矛盾でしかない。

結局、そういうダブルスタンダードが左翼・リベラル・パヨクと呼ばれる人たちが嫌われる理由なんだよ。
五輪を中止しろと言っておきながら、映画館は営業させろと主張するのは矛盾でしかない。
どちらだって、感染拡大に寄与してしまう可能性はあるんだから、両方ストップさせるのが本来の筋では?

というか、変異型ウイルスでは“3密全て揃わなければ感染リスクは低い”という説は意味がないと言われているのにもかかわらず、映画館では相変わらず、胡散臭い大学教授が“映画館は3密が揃わないから安全”とプロパガンダしているCMを流しているし、全然使えないことが証明されているCOCOAのダウンロードを相変わらず推奨している。
そんな映画館のどこが、感染リスクが低いんだ?

今回の鑑賞劇場であるTOHOシネマズ 市川コルトンプラザには午前中に出かけたのに、トイレのゴミ箱は満杯だったし、座席についているカップホルダーはベタついていたし、本当に清掃や消毒をしているのだろうかと疑問に思った。全然、映画館なんて安全じゃないよ!

そして、作品自体もコロナを軽視しているとしか思えない内容だった。
作中では、まるで新型コロナウイルスに対するワクチン接種を拒否する勢力のごとく、医者を信じるなというメッセージであふれていた。

医者に勧められて治験を受けた患者が途端に体調を崩して死んでしまったりする描写なんて、その極みでしかない。
結局、強行に公開するのは、コロナ禍における医療従事者をリスペクトするためでもなんでもなく、ワクチン接種をやめる人を増やすためのプロパガンダなんだというのがよく分かる。

それにしても、米国ではネトウヨ的思想の人間がワクチン接種を拒否するけれど、日本では左翼・パヨクが否定的ってのは面白いよね。
そういえば、映画「ジョーカー」に対する評価も日米では批判する層の思想が逆転していたな…。
日本では、ネトウヨが酷評していたけれど、米国ではリベラルが酷評していたしね。

それから、思想云々抜きにしてストーリーがまとまっていないのも致命的な欠点だと思う。やたらと色んな患者が登場するが、病状がどうなったかも明かされぬまま放置されているキャラもいるし、“治療を受けて回復して一般社員のいる作業フロアーに乗り込んでやる”と宣言した社長についても、病状が良くなったことが別の登場人物の台詞で明かされるだけで、その社長が作業フロアーに乗り込むシーンが描かれていない。
医師免許取得を目指す若者のその後も伝えられないし、主人公がどのような行動を取ったのかも曖昧なまま終わっている。

正直言って、この題材は2時間弱の映画としてまとまる内容ではなかったのではないかと思う。テレビシリーズ向きかな。

あと、気になったのは、登場人物たちが、たまり場としている食堂のような居酒屋のような多国籍料理店のような店で、芸能人のモノマネをするシーンかな。

一般人の会話なんだから、芸能人に“さん付け”するのはやめようよ。丹波哲郎だけ呼び捨てで、あとの芸能人は“さん付け”だったのは、丹波哲郎だけが故人で、あとは生きているからでしょ?

監督や脚本家、俳優にすれば、“さん付け”した芸能人は現場で顔を合わす存在だから呼び捨てしにくいのかもしれないけれど、一般人、ましてや作品の舞台となっている金沢の人間からすれば、全く関係ない人なんだから呼び捨てにしろよって思う。

もっとも、最近は一般人でも芸能人を“さん付け”するのが多いよね。SNSとかブログで、芸能ネタを語っているうちに、自分が芸能記者になったとでも勘違いしているんじゃないかって思う。
個人的には、マスコミ・クリエイティブ職の人間ではない者がブログやSNSで芸能人を“さん付け”している場合は、その文章を信用しないことにしている。愛着を持って、ちゃんとか君で呼んでいる場合は別だけれどね。

ところで、広瀬すずって、本当、主役やヒロイン役の時より、助演の時の方が良い演技を見せるよね。主役やヒロイン役の時は批判されることも多いのに。

そして、演技といえば、吉永小百合についてもふれておかなくては…。本当、この人って、何歳になってもアイドル演技だよね…。どの役を演じても吉永小百合だしね。

まぁ、こんなに文句ばかり言っているけれど、結構、感動はできるんだよね。だから、見て損はないと思います。

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