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YOASOBI“米チャート首位獲得”

日本メディアはYOASOBI“アイドル”がビルボード首位獲得と騒いでいるが、厳密にはこれはミスリードだと思う。

一般的にただのビルボードのシングルチャートと言った場合は総合チャートであるBillboard Hot 100のことを指す。“ビルボード首位獲得”という見出しではまるで、Billboard Hot 100でトップに立ったように思えてしまう。

ネトウヨはK-POPアーティストがBillboard Hot 100にチャートインしたニュースが報じられるたびに“捏造”だなんだと喚いているが、その裏で組織票などの“チャート操作”があったとしてもチャートインしたのは事実なのだから、今回のYOASOBIを巡る日本メディアの報道の仕方の方が余程、捏造だと思う。

ちなみに、YOASOBI“アイドル”が今回、1位になったのはBillboard Global Excl. USというチャートだ。これは、その名の通り米国以外の国や地域でのストリーミングやダウンロードセールスのポイントを集計したものだ。ちなみに、ビルボードにはBillboard Global 200というチャートもあり、こちらは米国も含めた全世界を集計対象にしている。こちらの方で“アイドル”は今週9位(現時点での最高位も9位)となっている。

ところが、メインのチャートであるBillboard Hot 100にはこれまでのところ、1週も100位内に入っていない。

米国を抜きにしたチャートで首位に立ち、米国を含む全世界チャートでもトップ10内に入る曲が全米総合チャートであるBillboard Hot 100に入ることができないというのは、いかに、米国の音楽市場が強大であるか、そして、米国を除いた世界では日本市場が大きいかをあらわしていると言っていいのではないだろうか。

もっとも、グローバルチャートと異なり、Hot 100はストリーミングやダウンロードセールスだけでなくラジオのエアプレイポイントも集計対象となっている。米国のラジオで邦楽曲がかかることはほとんどないから、エアプレイポイントを稼げない“アイドル”がチャートインできないのも当然といえば当然だ。グローバルチャート上位のK-POP曲だって、全てがBillboard Hot 100に入れているわけでもないしね。

それに上位に入れたとしても、ほとんどのK-POP楽曲はすぐに下降してしまう。それは、米国のラジオでほとんどかからないからだ。
BTSの“Dynamite”や“Butter”は英語曲だし、FIFTY FIFTYの“Cupid”は英語バージョンが作られているから米国のラジオでもオンエアされ、Hot 100でもすぐに下降するという事態になっていないだけだ。
BTSのJiminのソロ曲“Like Crazy”は首位を獲得した翌週にトップ40圏外にランクダウンするという史上初の惨事を記録してしまったが(クリスマスソングを除く)、それも米国のラジオの支持がなく、組織票だけでは上位にランクインし続けるだけのポイントを稼げないということだと思う。

個人的には、総合チャートでトップ10入りしたこともあるJojiを無視して、YOASOBIがいかにすごいかということを強調する日本メディアはちょっとおかしいよねと思う。
確かにJojiは英語で歌っているし、活動の拠点も海外だし、日本の芸能事務所・レコード会社と契約しているわけでもないし、ましてや、ハーフだから日本人扱いしていないのかも知れないが、この扱いの差には呆れてしまう。個人的にはJojiの方が快挙だと思うんだけれどね。

もっとも、YOASOBIの“アイドル”もアジアレベルではかなりすごいと言っていいと思う。これまで、邦楽曲なんてマニアックな存在だったわけだからね。日本で言えば、ワールドミュージックとかジャズ、クラシックくらいのファンダムだったのでは?

それが韓国など近隣のアジアの国や地域のチャートで上位に入っているわけだしね。
まぁ、ラップの入り方とかK-POPっぽいところもあるし、ikuraの歌い方は可愛いらしいし、本人も童顔だから、アイドルっぽい感じもする。
でも、歌唱力はある。その辺のミスマッチが面白いと思われているような気もする。要は可愛いとメタルを融合させたBABYMETALのポップ版的な存在なのかな?

それから、アニメ「推しの子」による効果もあると思う。米国ではほとんど知られていないだろうが、アジアでは人気あるみたいだしね。

これまで、Billboard Global Excl. USの上位に入った邦楽曲はほとんどが日本国内のポイントによるものだったから首位に立てなかったけれど(日本国内のポイントだけで上位に入れるということは日本の音楽市場ってやっぱり大きいんだねと実感。しかも、世界的には遅れている日本のデジタル関連のポイントだけでも上位に入れるんだからね)、今回の“アイドル”はアジアの国や地域でも人気だから、首位に立てたってところなのかな。

あと、わずかの寄与ではあるが英語バージョンがリリースされたことも影響していると思う。この英語バージョンが米国のラジオでかかれば、総合チャートに入ることも可能なんだろうが、個人的には難しいと思うな。
YOASOBI楽曲の英語バージョンって、洋楽リスナーからすると何言っているか分からない英語発音=聞きにくい=ノイズだし、しかも、日本語っぽく聞こえる英語の歌詞にしたりしているから、ネイティブな英語話者には受け入れられないと思う。

とはいえ、個人的にはこの“アイドル”という楽曲は大好きだ。Apple Musicの集計によると、今年、自分が最も聞いた曲らしいしね。


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