ロードバイクでエアロポジションを極める
はじめに
トライアスロンの世界では、一秒を争う競技の中で、わずかな工夫が大きな違いを生み出します。特に、バイクパートでは空気抵抗を減らし、効率的にバイクに力を伝えることが求められます。多くの人がトライアスロン専用バイクの購入を検討しますが、実際には、適切な装備を施せばロードバイクでも十分に戦うことができます。本記事では、ロードバイクをトライアスロン仕様に改造するための具体的なノウハウを、エアロバーやショートクランクを中心に紹介します。
私自身も最初は初心者として始め、多くの試行錯誤を重ねてきました。その経験を元に、これからロードバイクでトライアスロンに挑戦しようとしている方や、既にトライアスロンに参加しているがバイクのパフォーマンスを向上させたいと考えている方々に向けて、わかりやすく実践的なアドバイスをお届けします。ロードバイクをトライアスロン仕様にアップグレードして、新たな記録に挑戦しましょう
基本装備
普段のロードバイクでそのままトライアスロンに出場するのも一つの方法ですが、ちょっとした装備や工夫を加えるだけでタイムを短縮し、最後のランでも脚力を温存できます。私が使っている装備を紹介します。
エアロバー
エアロバーには多くの種類と価格帯が存在しますが、大抵のモデルは31.8mmのハンドル外径に対応したアダプターを備えています。例えば、Dedaのハンドルは31.7mmの外径で、専用のエアロバーが必要です。使用しているドロップハンドルがエアロ形状の場合やカーボン製の場合、エアロバーを装着できないこともあるため、購入前に確認が必要です。
エアロバーは、ドロップハンドルの根本の丸い部分にブラケットを取り付け、そのブラケットに肘当てとバーを装着する構造が一般的です。このブラケット、肘当て、バーがセットになっているものが多く、初めてエアロバーを装着する人にはこのセットがおすすめです。バーの太さは22.2mmが一般的で、対応したブラケットを購入すれば、後でバーだけを簡単に交換することができます。
私のエアロバー遍歴
トライアスロンを始めたばかりの頃、私は短めのバーを選びました。知識が乏しかったため、ロードバイクと同じポジションで肩幅が狭くなれば良いか、という程度の考えでした。最初に選んだのはProfile Design T2+DLというエアロバーです。
しかし、体勢が低くて苦しかったため、プロファイルデザインのライザーを追加しました。これをブラケットの根元につけることで、バー全体が上がり、前傾が緩和され、より楽な姿勢が取れるようになりました。どのくらい上げれば良いか検討もつかなかったため、とりあえず30mmのライザーを購入しました。
トライアスロンレースの経験を重ねるうちに完走目標からタイム短縮を目標に変えたことで、より前面投影面積を小さくするためにライザーを外しました。しかし、まだ早い人の姿勢と比べると頭の位置が高いため、より低くできるブラケットを購入しました。Profile Design L2 Bracket Kitはハンドルの下からDHバーを出すことができ、バーの高さをさらに低くできます。
現在のセッティング
現在のところ、DHバーをProfile Designの50Aに変えて、パッドもより快適性が高いものに変更してレースに出ています。最初に買ったエアロバーは全て交換することになり、1セット余っています。トライアスロンの練習を進めるうちに、体型がスリムになり、柔軟性や筋肉の付き方が変わるため、ポジションも変わってきます。数年前からハイハンズポジションが流行しており、バーの形も変わってきています。ハイハンズポジションは従来の水平な体勢よりも楽な姿勢なので、初めてエアロバーをつける人でも対応しやすいです。
これからエアロバーをつけようと考えている人には、後々調整や交換ができるように、長めのバーがついているセットをおすすめします。バーはアルミとカーボンがありますが、アルミの方が安くて丈夫です。エアロバーは様々な調整が可能なので、色々な体勢を試し、自分に合ったポジションを探すことが重要です。ポジションが固まるまでは、安いアルミのバーで色々試すのが良いでしょう。
サドル前だし
ロードバイクとトライアスロンバイク(TTバイク)の最も顕著な違いは、シートステイの角度です。ロードバイクのシートステイ角度は通常72〜74度ですが、トライアスロンバイクやTTバイクは77〜79度とより立っています。この違いは、トライアスロンのポジションがエアロバーに肘を乗せてペダルを回すため、かなり前乗りになるからです。
ロードバイクのシートステイ角度を調整する方法
物理的にシートステイの角度を変えることはできませんが、サドルを前に出すことで、トライアスロンバイクと同じようなポジションを実現できます。ロードバイクの標準的なシートポストは25mm程度のオフセットがありますが、ゼロオフセットやマイナスオフセットのシートポストに交換することで、サドルを前方にセットできます。
サドルを前に出さずにエアロポジションを取ろうとすると、腰を大きく曲げる必要があり、ハンドルとサドルの距離が遠くなるため、非常にきつい体勢になります。しかし、サドルを前に出すことで、体全体が前に回転した姿勢になり、より楽にバイクに乗ることができます。
マイナスオフセットのシートポスト
このポジションをロードバイクで実現するためには、マイナスオフセットのシートポストに交換する必要があります。マイナスオフセットで有名なのがプロファイルデザインのファーストフォワードシートポストです。これはアルミとカーボンのバージョンがあり、サドルを大幅に前方に移動させることができます。
Profile Design Fast Forward Seat Postは、シートポストをこれに変更し、ヤグラの前方にサドルを移動させることで、かなり前乗りにすることが可能です。Dixnaも同様の製品を提供しており、同じようにサドルを前方にセットできます。
私は日東のハンドルバーを使用しているため、それに合わせて日東のS66シートポストを使用しています。このシートポストはもう製造されていないようですが、海外のサイトではまだ新品が購入可能です。
ロードバイクでトライアスロンバイクのようなポジションを実現するためには、適切なシートポストの選択が不可欠です。ゼロオフセットやマイナスオフセットのシートポストに交換することで、サドルを前方に移動させ、より楽なポジションを取ることができます。これにより、トライアスロンやTTレースでのパフォーマンスが向上します。
ショートノーズサドル
サドルを前に出して前傾姿勢で自転車に乗る場合、ショートノーズサドルが非常に快適です。このポジションでは、体の重心が前方に移動し、サドルの前部分に体重がかかることが多くなります。通常のサドルだと前の部分が邪魔になり、サドルを水平に保つのが難しくなります。その結果、サドルを前傾させる必要が出てきますが、そうするとアップライトポジションに戻した際に、お尻が前に滑ってしまうという問題が生じます。
ショートノーズサドルは、サドルの前部分が短く設計されているため、前傾姿勢に対応しやすくなっています。これにより、快適性が向上し、前傾姿勢を保ちやすくなるのです。トライアスロンバイクでは、このようなショートノーズサドルが標準装備されていることが一般的です。
ショートノーズサドルの選択
トライアスロン会場で一番目にすることが多いのは、ISMのサドルです。ISMのサドルは多種多様で、それぞれのライダーのニーズに応じたモデルが揃っています。私が使用しているのは、ISMのPS 1.1というモデルです。このサドルは、ある程度のクッション性があり、ロングディスタンストライアスロンでも快適です。
ISMサドルの利点
ISMサドルの最大の特徴は、前部分が短く、分かれている点です。これにより、ペダリング中の圧力を分散し、デリケートな部位への圧迫を軽減することができます。特に長時間のライドやトライアスロンのようなイベントでは、この圧力分散機能が大いに役立ちます。PS 1.1モデルは、適度なクッション性を持ち、長時間のライドでも快適さを保つことができます。
ショートノーズサドルを使うことで、前傾姿勢の快適性が向上し、パフォーマンスの向上にも繋がります。前傾姿勢を取る際の圧迫感を軽減し、より自然なポジションでライドを楽しむことができます。また、ISMのサドルは様々なモデルがあり、自分に合ったものを選ぶことで、さらに快適性が向上します。
サドルを前に出したポジションでのライディングには、ショートノーズサドルが最適です。特に前傾姿勢を維持しやすく、快適さが増すため、トライアスロンバイクには欠かせないアイテムとなっています。ISMのサドルは、多くのトライアスリートに支持されており、その快適性と機能性は折り紙付きです。私自身もISMのPS 1.1を使用し、その快適さに満足しています。ショートノーズサドルを導入することで、前傾姿勢でのライディングがより快適になり、トライアスロンや長距離ライドでのパフォーマンスが向上するでしょう。
エアロバーとサドル前出しによるエアロポジションの実現
エアロバーとサドルの前出しを組み合わせることで、エアロポジションが取れるようになります。このポジションでは、体が前方に大きく倒れ、空気抵抗を最小限に抑えることができます。しかし、エアロポジションに移行する際にクランクの長さが重要な要素となります。長いクランクを使用していると、どうしても窮屈な姿勢になりがちです。
ショートクランク
クランクの長さと体の柔軟性
体の柔軟性が優れていれば、ペダルが上死点に達したときに膝が高くなってもそれほど問題はありません。しかし、私の場合はこの姿勢で長時間走り続けると、腿周りの筋肉が辛くなってしまいました。特にトライアスロンのような長時間のライドでは、体にかかる負担が大きくなるため、快適さを保つことが重要です。
ショートクランクへの変更
そこで、私はショートクランクに変更することを決意しました。以前は170mmのクランクを使用していましたが、思い切って150mmのクランクに変更しました。ショートクランクは、特にRotorやDixnaなどのメーカーから簡単に入手できます。一方で、Shimanoでは最短で105シリーズの160mmのクランクしか提供されていません。
クランク交換の手順と効果
クランクを交換する際には、場合によってはBB(ボトムブラケット)から交換する必要があるため、多少敷居が高い作業となります。しかし、ショートクランクに変更することで得られる効果は非常に大きいです。
サドルの高さとハンドルの落差
クランクを短くすることで、ペダルストロークの範囲が小さくなります。これにより、サドルの高さを上げることができ、結果としてハンドルとの落差を取りやすくなります。これにより、より前傾したエアロポジションが取りやすくなり、頭の位置が低くなるため、空気抵抗が減少します。
空力の向上とエネルギーの節約
前傾姿勢を保つことで、頭の位置が下がり、全体的な空力が向上します。さらに、クランクが短くなることでケイデンス(ペダル回転数)が上げやすくなり、脚を動かす範囲が小さくなるため、ペダリングにかかるエネルギーが減少します。これにより、バイクパートでのエネルギー消費が抑えられ、トライアスロンのランパートに向けて足を温存することができます。
エアロポジションを追求する際には、エアロバーとサドルの前出しだけでなく、クランクの長さにも注意を払う必要があります。ショートクランクに変更することで、より快適で効率的なエアロポジションが実現できます。これは特にトライアスロンや長距離のライドで大きなメリットとなります。私自身、150mmのクランクに変更することで、エアロポジションの快適性と効率性が大幅に向上し、レースでのパフォーマンスが向上しました。ショートクランクへの変更は、一度試してみる価値がある改造だと感じています。
まとめ
エアロポジションを実現するためには、エアロバーとサドルの前出しが効果的です。しかし、このポジションを取る際にクランクの長さが重要な役割を果たします。長いクランクでは窮屈な姿勢になりやすいため、ショートクランクに変更することをお勧めします。
主なポイント:
エアロバーとサドルの前出し:
エアロバーとサドルの前出しにより、前傾姿勢でのライディングが可能になります。
これにより、空気抵抗が減少し、より速い走行が可能です。
クランクの長さ:
長いクランクは窮屈な姿勢を強いるため、体の柔軟性が求められます。
ショートクランクに変更することで、ペダリングが楽になり、腿周りの負担が軽減されます。
ショートクランクの利点:
クランクが短くなることで、ペダルストロークの範囲が小さくなり、サドルを高く設定できます。
これにより、ハンドルとの落差が取りやすくなり、より前傾したエアロポジションが実現します。
空力が向上し、バイクパートでのエネルギー消費が抑えられ、ランパートに足を温存できます。
ショートクランクへの変更は、エアロポジションの快適性と効率性を大幅に向上させる改造です。特にトライアスロンや長距離のライドにおいて、その効果は顕著です。クランクの変更は敷居が高いですが、一度試してみる価値があります。