見出し画像

広告代理店の社長さん

今日はね、ふと思い出してしまったので思い出話をば。

私が22歳の時のお話です。

当時は会社員だった私。学校卒業して新卒で入社し2年目の冬だったと思います。

このころ、私は闇雲に転職活動をしていました。

本当、恥ずかしい話なんですが、当時は自分のことが嫌で嫌でね。寝ても覚めても「どうして私はこんななんだろう」という気持ちと考えに苛まれていました。

そんな自分を変えるには環境を変えたらいいんじゃないかと転職活動をしていたわけです。

ただね、この転職活動、職種とか全く無視して行っていたもので、デザイン事務所、映像制作会社、アトリエのアシスタントと方向性がまるで無い転職活動だったんです。

兎に角逃げ出したかったんでしょうね。今冷静に考えると本当とんちんかんなことしてました。恥ずかしい。

しかし、そんなとんちんかんな転職活動をそっと止めてくれる人に出会いました。


その方は、私の応募を受け、面接をしてくださった当時開業したての広告代理店の社長さんでした。

当時、恵比寿の古いビルの一室に事務所を構えておられて、事務員の女性が1人と社長さんの2人だけの会社でした。

社長さんは当時35歳くらいの男性で、ちょっとガタイのいいスポーツマンっぽい元気だけどどこか穏やかな感じのする方でした。

面接という事で、私はどうして転職したいのか、この仕事をなんで選んだのか、あたりさわりのない言葉を選んで話していると、社長さんはそれまで手にもっていた私の履歴書を机に置いて、

「落ち着いて話そう。大丈夫ですよ。」

と声をかけて下さったんです。はっきりと一語一句覚えているわけではないのですが確かこんな感じでした。

社長さんのそのお声がけで、なぜだか私は全く言葉が出なくなってしまったんです。

そこからは、面接というか最早私のカウンセリング。1時間くらいお話してくださいました。

社長さんが凄いスピリチュアルな方というわけではないですよ笑

開業したてで多忙を極めるあの時期に、1時間も使っておかっぱ小娘の私と向き合ってくれたんです。そう、当時私はおかっぱでした。

社長さんがかけて下さった言葉をきちんと覚えてはいないのですが、そっと肩に手を置かれたような、私を受け入れてくれた感じというのかな、それがとても安心したんですね。

そしたらあろうことか、ぽろぽろぽろぽろととめどなく涙まで出てきてしまいましてね。本当私ってば失礼。

今になってわかることなんですが、多分相当焦っていたし、不安や自分自身を強く否定する劣等感などがにじみ出てしまっていたんだと思います。

それを社長さんは面倒くさがらずに受け止めて下さったんですね。本当、格好いい人です。


そして帰り際、おかっぱ小娘に社長さんは見送りながら、

「面接の結果は1週間後くらいにご連絡しますから。」

と言ってくださったんです。

いやいやいや、社長さんよと。今なら思いますね笑

最早これ採用不採用とか以前の話だし、私はものすごく恥ずかしい転職活動をしていたのでは、と帰りの電車では自分の痛さに打ちのめされたのを今でもよく覚えています。

それがこのときのとんちんかんな転職活動の最後の面接になりました。


そして1週間後、社長さんからメールでご連絡を頂戴しました。

大変なご迷惑と失礼をお掛けしたし、来なくて当然と思っていたのでちょっと驚きました。

でもね、さらに驚くのはメールの内容。

「今回の面接の採用・不採用についてはお伝えしません。時間が経って、何年先でもいいので、白石さんが私のところで働きたいと思う時がきたら、もう一度面接をしましょう。その時に結果をお伝えさせてください。お待ちしております。」

というような内容でした。

自分が嫌で嫌で駄々をこねるようになりふり構わずとんちんかんな転職活動をしていた私に、こう言葉をかけてくれる人がいるとはと、有難い気持ちでいっぱいになりました。今でも尚です。

それから私は転職せずに26歳まで会社員を続けることになります。

あの時、あの社長さんに出会ってなかったら、私はきっとすごく痛いやつになっていただろうなと思います。

失礼ながら会社名も覚えておらず、メールももう残っていませんが私の記憶の中には強く残っている出会いです。

あれか13年経ち、私も当時の社長さんと同じ歳になりました。社長さんお元気だろうか。

できることならお会いしてもう一度お話したいです。

当時のお礼とその後の私、今の私のことも。

ひっそりと、いつかどこかで会えることを楽しみにしてます。



本日はそんな私の大事な出会いの話でした。

これからの出会いもとっても楽しみです

では皆様また明日に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?