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「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」を批判する(3)

ここまで,読み手の足並みを揃えることを目的として,Japan's Wayとは何か?なぜJapan's Wayなのか?を批判してきた.プロローグの言葉の「曖昧さ(読み手の解釈の広さ)」と論理の流れの悪さで前提を揃えることができなかった.しかしながら,私は何を批判するにしても,壊すことを目的としない.改修型や修理型の批判として,土台から建て直すところ,もしくは壊れているところを修理するところまでをきちんと行いたいと思う(日本サッカー協会ではなく読み手の思考の建て直し).で,前回も述べた通り,前提となる情報を知っている方と知らない方で,私の批判の捉え方が変わってしまうので,できるだけ丁寧に批判していく.
今回は,「百年構想」と「JFA2005年宣言」と「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」の矛盾の指摘はしない.モデルにフォーカスしたい.

日本型ダブルピラミッドはある意味で日本独自である

今回は,モデルに触れるが,細かい部分ではなく,全体を俯瞰して,批判する.端的にいうと,私はJFAの日本型ダブルピラミッドは無知からできた「曖昧」なモデルであり,大きな特徴や武器のないモデルと結論付ける.それを丁寧に説明していきたい.(ここでいう無知は孔子のいう知るの概念から)
まず,「フットボール・カルチャーの創造」で説明している日本の大きな特徴,武器(日本独自)を記載する.

多くの国はコンペティティブなサッカーとウェルビーイングのためのサッカーが早めに分かれ,その後関連を持ちながらダブルピラミッドを形成しています.しかし日本は右の図のように,ふたつのピラミッドは,より近い距離でグラデーションとして表してあります.これは日本の大きな特徴であり,また武器となるものです.

ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way, P10

この文章から,「後期専門化」かつ「参加型スポーツとパフォーマンススポーツがより近くにある」が日本の大きな特徴であり武器であると主張していることがわかる.しかしながら,これは大きな特徴でもなければ,武器でもなく,多くの国が昔採用していた「単一種目早期専門化型」のモデルである.この資料は「楽しむ」という言葉を多用するが,結局は他のスポーツ種目に触れることはない.読み手の解釈を広げることで,昔の日本陸上モデルの「単一種目後期専門型」に見せているようにも思えるが,そのモデルだったとしても時代遅れのモデルである.そういう意味では,「独自」なのかもしれない.
ということで,ここまでの私の批判をみても,パスウェイ・モデルの過去と現在を知らなければ,理解することができない.結局は,基礎知識がないと議論もできないのである.基礎知識の説明は超めんどくさいから授業料を取りたいくらいだけど(私たちのNPOの会員からは会費をいただいて講習してるし汗),先述した批判(私の結論・主張)の前提の説明をしていく.

「日本サッカー協会のモデルは時代遅れのモデルである」を講義する

前回まで「Japan's Wayとは何か?」の問題点として,目的の「曖昧さ」をしつこく説明してきた.しかし,目的は何にせよ,Japan's Wayがサッカーパーソンのパスウェイ(道筋)であることは間違いない.これは,私の主張の前提にもなるので,丁寧に説明していき,この記事を読んでくださった方が,現場でよい議論ができるようにしたい.先ほど,サッカーパーソンのパスウェイと書いが,これまで論文等で用いられているアスリート・パスウェイをここからは用いさせていただく.

アスリート・パスウェイって何?
スポーツ実施者が,いつ, どこで, どのようにして,そのスポーツに出会ったのか.誰に,どこで,どのように育成されたのか.いつ,どのような大会を経験するのか,といったアスリートとして育っていく道すじをアスリート ・ パスウェイ (Athlete pathway) というんだよ.
現在は,大きく2つに分けて考えられていて「伝統的なパスウェイ」と「革新的なパスウェイ」があるよ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

ここがわかれば,Japan's Wayがパスウェイの話として,解釈して問題なさそうである.で,私がわかりやすくまとめた文章に記載した革新的なパスウェイがここで出てくるので説明する.

伝統的なパスウェイ?革新的なパスウェイ?
伝統的なパスウェイは,一般的なものを言うんだけど,例えば幼少期に近所のスポーツ少年団や道場で,サッカーや柔道に出会い,本人の才能もあって,そこに良い指導者がいて一流アスリートになるケースのことをいうよ.つまり,子どもたちが「偶然に」適性のあるスポーツと出会い,「偶然に」良い指導者と巡り合ったときに成功への道すじが開けるんだ.
一方で,革新的なパスウェイは,スポーツ適性を前提に,科学的手法で才能(タレント)を識別し,組織的かつ計画的な育成期間を経て,国際レベルの大会につなげるようなものをいうんだ.
ここまででわかると思うけど,この「偶然に」が重なる伝統的なパスウェイに限界を感じた国が,この革新的なパスウェイで競技力を高めることを目指したんだ.なので,「スポーツの成功における偶発的要素の最小化」という視点を持って,各国でタレント発掘・育成プログラムが作成されたんだよ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

ということで,JFAは,「今回,伝統的なパスウェイではなく,革新的なパスウェイのモデル(Japan's Way)を作成しました」という公表をしたかったはずである.ここまでが,理解できると,この資料のプロローグよりも私の方がわかりやすいだろう.

2050年までにワールドカップで優勝すること(つまりパフォーマンススポーツで世界一になること)を目的とし,それを達成するための日本オリジナルの革新的パスウェイがJapan’s Wayであり,これを指針として提示したい.この他に,タレントプールの拡大の方策も提案する.

勝手にまとめた石井孝法

これと同じように,世界各国が「スポーツの成功における偶発的要素の最小化」を目的として,まずはタレント発掘・育成プログラムを作成していく(スポーツ科学が急速に発展していくことになる).これが,前回記載した

そもそも,「コピー&ペーストに頼らない」というのは間違いである.優勝経験のあるような国は人類の叡智(哲学や科学の積み重ね)を徹底的にコピペして基礎を作り,自分のものにしている.まさに「凡人は模倣し,天才は盗む(ピカソ)」である.その人類の叡智(特に科学)は共通項である.

「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」を批判する(2)

に繋がる.では,タレント発掘・育成プログラムとは何だろうか.

タレント発掘・育成プログラムって何?
タレント発掘・育成プログラム(Talent Identification and Development = TID)は,メダル獲得の可能性を有する選手(Talent)を,より多くの候補者の中からコーチの目と科学的な手法を用いて識別(Identification)し,系統立てられた育成プログラムの中で組織的かつ計画的に育成 (Development)すること.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

ということで,「識別」が重要になるので,「選抜 (Selection)」と明確に区別できるから前々回に定義を示した.

識別(Identification)の定義
あるスポーツで成功する素質のある者を識別するために,競技経験の有無を問わず、いくつかのテストにより飾(ふる)いにかけること
選抜 (Selection)の定義
特定のスポーツで成功すると考えられる競技者を識別するために,コーチの経験やテストにより,現在あるスポーツに参加している競技者をスクリーニングすること

「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」を批判する(1)

で,このTIDは,最新のモデルと比べると時間軸が短い.それでも,成功事例がたくさんあるし,現在も用いられている.基礎情報として提供しておく.

TIDでは,短期間でトップレベルの競技者へと成長するケースが多いんだけど,2つの特徴があるんだ.一つは,「女子種目」に多いということ.もう一つは,「クローズドスキルの種目」に多いよ.これは,競技者の競技への能力適性の見極めがしやすい「クローズドスキル・スポーツ」をターゲットにして取り組んでいることが理由なんだ.
クローズドスキルというのは,「比較的安定し予測しやすい状況下で発揮され,環境に影響を受けない技術.その技術発揮には状況判断や戦況判断を含まず,開始と終了がはっきりとしている(Knapp, 1963)」ものをいうよ.
そして,戦略的に資源を用いる「選択と集中(ターゲット化)」のもと,クローズドスキル・スポーツの「女子種目」がTIDの効果が大きいマーケットと考えられている.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

ということで,成果が出やすいのは,「女子種目」と「クローズドスキルの種目」.なので,戦略的にお金を投資する場合は,クローズドスキル・スポーツの「女子種目」がターゲット化される.そして,先ほど,TIDが時間軸が短いといったけど,その他の種目でも成果をあげないといけないし,国民の健康や幸福度も考えないといけないということで,Long-term Development modelが世界各国(スポーツ先進国)で作成されるようになる.私がSNSでいう「長期育成指針」の話がこれにあたる.柔道は「オープンスキル」のスポーツの中でも「運動の自由度」が高いので(柘植,1994),パフォーマンススポーツだけで考えても「長期育成指針」の設計が難しくなるし,そもそもパフォーマンススポーツの成果は「過程であり目的ではない」ので,デザイン・作成にかなりの時間を要している(責任者として重責を担っているよ汗).横道にそれそうなので,話を戻そう.
で,革新的パスウェイであるこのTIDのはじまりはどこからなのか?

1970-1980年代,旧東ドイツをはじめ旧東欧社会主義諸国は,タレント発掘・育成システムを国家主導によるスポーツ政策として確立していったよ.
(中略)国や団体が問題を認識して,それを解決するためのアプローチとしてタレント発掘・育成システムの方法を編み出したんだ.
伝統的パスウェイにも出たけど,「偶然に」の重なりだけで進めると,人口の少ない国はタレントプールという問題にぶつかったんだ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話

私が「タレントプールの拡大の方策も提案する」という言葉を用いたけど,ここに繋がる.タレントプールってのは何だろうね?

タレントプールは,タレントの可能性のある人材群のことで,人口が多いほど優れたタレントを生み出す可能性が高くなるんだ.そういう意味では,タレントプールが国家間のメダル争いに有利になるんだよ.なので,人口の少ない小国は,大国と戦うために人為的に優れたタレントを見出す必要があったんだ.それで,旧東ドイツは,具体的な方策として,タレント発掘・育成システムという当時では斬新なものを編み出したんだ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

で,大事なのは成果だよね?旧東ドイツは成果を上げたのだろうか?

驚くことなかれ!これが,とてつもない成果を出すんだ.
1988年のソウルオリンピックでは,総メダル数102個でアメリカを抜いたんだ.ソビエト連邦に次いで世界第2位に躍進した人口1700万人足らずの小国が2.5億の人口のアメリカを凌駕したんだよ.
ただ,1990年以降,東欧社会主義国の崩壊とともに旧東ドイツに代表されるタレント発掘・育成システムは消滅してしまうんだ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

こんなすごいシステムがなくなってしまうの?と思っちゃうよね.ちなみに,私は旧東ドイツのシステムをコピペして,日本柔道のシステムと融合・昇華させるように努力してきた.試行錯誤の連続だけど,2013年から継続して成果を出し続けられている.で,このように考えるのは当たり前で,コピペする国が出てくる.

このアイデアは,形を変えて自由主義諸国に継承されるんだ.
いち早くこれに取り組んだのが,当時1600万人程度の人口だったオーストラリアなんだよ.1987年から,オーストラリアスポーツコミッション(ASC)とオーストラリア国立スポーツ科学研究所(AIS)が連携し,旧東ドイツのモデルを手本に全国規模でタレント発掘・育成事業を展開したよ.
シドニーオリンピックの開催が決まった1994年から,このシステムの強化をはかり着実に成果を出しているよ.1976年モントリオールオリンピックで5つしかメダルを獲得できなかったけど,シドニーオリンピックでは60個のメダルを獲得したんだ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

ということである.で,何度もいって申し訳ないが,「人類の叡智(哲学や科学の積み重ね)を徹底的にコピペして基礎を作り,自分のものにしている」国の一つがオーストラリアである.オーストラリアは,完全に自分のものにし,FTEMを作成した.このモデルも,アメリカのADMもカナダのLTDMも学んでいれば,日本サッカーのダブルピラミッドが時代遅れなのはわかるはずなんだが…諦めずに,説明していく.

旧東ドイツもオーストラリアも,問題として上がっていたタレントプールの問題(人的劣勢)を克服したんだ.小国の目覚ましい活躍と競技者育成システムの成功モデルは,もちろん世界各国で強い関心を呼ぶことになる.
この成功モデルを後押しする科学的根拠が出てくるんだ.みなさんも聞いたことがあるかもしれないが,Ericsson(1993)の「deleberate practice」理論だ.
みなさんは「10の公式」,「10年の法則」,「10000時間の法則」という言葉で聞いたことがあるかもしれない.これは,何かの分野で一流になるためには,毎日3時間☓10年間続けて計画的に取り組まなければならないことを表したものだ.Ericssonによって,スポーツだけでなく,科学や音楽など,さまざまな領域でみられることが確認されたんだ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

科学(「deleberate practice」理論)が,成功モデルの価値を大きく押し上げることになる.みんなも興味が湧いてきたかもしれない.「deleberate practice」理論は,10の公式?時間だけの話?と知りたくなってくる.

時間だけの話ではないよ.
deliberate practiceは,ただ漠然と練習を継続するのではなく,高度に構造化された意図的,計画的練習を意味するよ.彼は,幅広い分野にわたって,世界一流に到達した人たちの経歴を調べて,早期からdeliberate practiceを長期間継続することの有効性を論じたんだ.これが,タレント発掘・育成モデルを強く支持することになったんだ.
スポーツ分野では,米国オリンピック委員会(USOC)が1984-1998年の米国オリンピック選手を対象に行なった調査(The Pass to Excellence)でも同様のことが確認されている.
1.米国オリンピック選手は平均すると男子12.0歳,女子11.5歳で当該スポーツを始めていた.
2.ほとんどのオリンピック選手はオリンピック選手になるために12-13年の育成期間があった.
3.オリンピックのメダリストは非メダリストと比較して「勝つためのトレーニング段階」に達するのが1.3-3.6年短かった.
つまり,オリンピックメダリストは,平均して12歳前後で本格的なトレーニングをはじめ,10年前後の育成期間を通してメダリストとしての能力を高めてきたんだ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

前回や前々回に日本のコンサルが胡散臭いみたいな話をして申し訳なかったが,このような強い根拠(前提)が示されると主張が正しくみえてくる.しかし,世界各国で「早期専門化」の問題が取り上げられているし,みなさんもこの問題を聞いたことがあるだろう.

一つだけ,誤解がないように,先ほど出てきた「勝つためのトレーニング段階」というのは17-18歳以降のパフォーマンスの最大化を目的とする段階で,早期からスタートしているという意味ではないんだ(その段階に達するのが1.3-3.6年短かったということ).
ここで,誤解がないようにというのも理由があるんだ.実は,この理論はEricssonの意図を超えて,アメリカ社会で過大に喧伝(けんでん)されたんだ.スポーツだけでなく,様々な分野で「素質か練習か」という議論があるけど,この理論は「素質がなくても練習の積み重ねが夢を叶える」といったある種のイデオロギー的観念を生み出すことにもなったんだ(Lombardoら,2014).「10年1万時間」が強調されることで,早期専門化を助長するという批判もあるよ.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

これをみていただくとわかると思うが,世界各国のモデルがそもそも「早期専門化」していたとは言えない.一部の国でみられるという話もあるが,むかしむかし私が入手したキューバのデータも中学生以降だったので,決して早いとはいえない.どちらかというとイデオロギー的観念で,モデルから大きく外れていったのではないだろうか.旧東欧社会主義諸国のモデルが否定されることがあるが本当にそうだろうか,と思っている.

ここは十分なエビデンスがないので,個人的な意見と思ってきいてほしい.
このタレント発掘・育成システムは,「コントロール」することが非常に難しいものだと思う.しかしながら,コントロールできるのであれば,かなり大きな効果(国際競技力という視点だけでいえば)を出すシステムだと考えている.
コントロールが難しいというのは,本来長期的に育成するシステムになっているにも関わらず,自然とコーチや保護者の「子どもたちの競技会の結果」にこだわる傾向が強くなってしまい,それが増幅していくところにある.
それにより,早熟型のバーンアウト,晩成型のドロップアウト(有能感が得られない)でタレントを失っていくという状態に陥る.どんどんふるい落とされていき,その競技から離れていくということが問題になっているケースが多い.
起こりうる問題を把握しつつ,長期的な視点で,このシステムを機能させることができれば,必ずしも悪いものとは言えない気がしている.さまざまなエビデンスを確認していても,十分な批判はできていないように思う.

NPOスポーツコーチングアカデミア・ウェブサイト,石井の記事「長期育成指針作成の話」

ということで,少し話は逸れてしまったが,世界の潮流はどうなのかをまとめると,以下のようになっている.

図 システムの変化まとめ

単一種目早期専門化型タレント発掘モデル,複数種目早期専門化型シーズン制モデル,単一種目後期専門化型旧日本陸上モデルのほとんどが,右上の複数種目後期専門化型のモデルに移行してきている.このような歴史的な背景を踏まえて,前回「共通項が多いモデルにも関わらず,なぜ日本は「独自」を強調したのだろうか」と批判した.ただ,JFAのモデルは,最初にも記載したが,他の種目に触れていないので,図の下部の単一モデルに近い.これを,私は時代遅れのモデルと述べた.
「フットボール・カルチャーの創造」ではFIFAのモデルを提示しているが,そのモデルを採用している国はどこなのだろか?よくわからない.
そして,もう一つの「参加型スポーツとパフォーマンススポーツがより近くにある」も簡単に批判する.
これは,他国のモデルをみていただければ,すぐにわかると思う.

図 カナダのLTDMのフレームワーク(各競技団体がこれをもとに作成する)

JFAがいうような「コンペティティブなサッカーとウェルビーイングのためのサッカーが早めに分かれ」てはいないし,このモデルも密接に関連している(境目が線ではなく破線になっているよ).私が調べた他国のモデル(FTEM,ADM,LTDMなど)の情報をまとめると,以下のような解釈になる.

アスリートが,ハイパフォーマンススポーツを目指すか,あるいは楽しみや健康および社会的側面から競技を続けるかについて,自分の興味や能力を最大化・最適化させるパスウェイを選ぶことができる

インテリジェンス化する石井孝法

となっており,基本的には,いつでも行き来してよいのである.そして,国民全体へのアプローチも含んでいるので,JFAの日本型ダブルミラミッドには,大きな特徴もなく,武器もないことになってしまう.というよりは,プロファイルが甘すぎて,印象操作(嘘にみえる)で読み手に誤解を与えるような内容になってしまっている.世界各国と比べると,時代遅れ的な「独自さ」を含んでいる.

最後に,もう一度私の結論を記載する.
私はJFAの日本型ダブルピラミッドは無知からできた「曖昧」なモデルであり,大きな特徴や武器のないモデルと結論付ける.
ということで,みなさんの思考を再構築できたと思いたい(´ε` )
ぜひ,サッカー関係者だけでなく,この批判と対話できる人が増えることを期待する.

最後の最後にお願いです.今回の内容はNPOスポーツコーチングアカデミアの会員向けに提供した情報が多くあり,無償で提供はしていませんでした.この記事が参考になったという方は,サポート(応援)をしていただけると,今後の研究や調査を促進させることができます.よろしくお願い致します.

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