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2020年7月下旬の読書振り返り

いよいよ暑くなってきた。暑くなってきたからか、毎日のようにTLが燃えている。早く涼しくなって欲しい。


黄金州の殺人鬼――凶悪犯を追いつめた執念の捜査録

1970年代〜1980年代にかけてアメリカカリフォルニア州で多発した連続殺人、強姦事件。その犯人の呼称が「黄金州の殺人鬼(Golden State Killer)」である。少なくとも13人の殺人、50人以上の強姦、数えきれないほどの強盗…それが「黄金州の殺人鬼」と呼ばれる一人の鬼畜によって行われた。本書はその「黄金州の殺人鬼」を追っていたブロガー・ジャーナリスト、ミシェル・マクナマラの作品である。なお、ミシェルは本書完成前に亡くなってしまい、有志によって残りの作業が行われ、発売にたどりついた。

本書出版時には未解決事件であったが、発売直後の2018年4月に72歳になった「黄金州の殺人鬼」は捕まった。彼は元海軍の軍人で、その後警察官になり、警察退職後はトラック整備士として2017年まで働いていた。彼が長年住んでいたのは、事件の中心地であるサクラメントだった…。

公聴会でのディアンジェロ

先日読んだ『ブラック・ダリア』でも感じたのだけど、カリフォルニアの警察の怠慢には驚くばかり(もちろん正義に燃える善良の警察官もいる)。しかし『ブラック・ダリア』の時代(1940年代)に比べたら「黄金州の殺人鬼」の時代の方がマシなのかもしれないなと読んでて思った。あくまで警察の動きに関して。それでもこの類の犯罪は後を立たない。「黄金州の殺人鬼」が活動する直前には有名な「ゾディアック」がサンフランシスコで暴れ、一方でエド・ケンパーがサンタクルーズで8人を殺害、ロサンゼルス郊外では”ナイト・ストーカー”ことリチャード・ラミレスによって恐怖がもたらされていた。「ロス疑惑」も同時期の話だ。当時、子供ながらに「西海岸って怖いとこなんだな」と恐怖を覚えた。

分厚い本である。本編自体は「未解決時」に書かれたものなので、著者の執念深い調査からわかった事実が書かれている(それが事件において重要なことかはわからないが)。追記部分では著者の夫などによって犯人逮捕に関しての記述がある。

ハリウッド・バビロン〈1〉

1965年にアメリカで発売されたが、10日で発売禁止になり、1975年になるまで再刊されなかったといういわくつきのゴシップ本。日本でも何度か発売されたが、手元にある本(奥さん所有)は1989年に発売されたもの。背表紙に書かれた価格が消費税3%時代の表記で懐かしかった。

1900年初頭からの戦後にかけてのハリウッドゴシップを集めた内容。本書は発売当初から真偽に乏しい箇所が多いとの指摘があったようだが、ゴシップなんてそんなもんだよな…。まぁとにかく全編に渡って乱痴気騒ぎ。登場人物全てが成金なわけで、品の無いお金使いが激しい。しかしその裏側には一種の不安、寂しさ、孤独感があったのかもしれない。不幸な終わり方をした人が多過ぎる。現在の芸能界も大差ないのかもしれないし、何なら我がスタートアップ界隈も近しいものがあるのかもしれないな。

日本の10大新宗教

10年以上前に購入し、一度読んだが久しぶりに読み返してみた。本書は一般的に「新興宗教」と呼ばれる「新宗教」10個の成り立ちや概要を紹介している。街を歩いているとあちこちにこれらの宗教の施設があるが、その宗教がどういった成り立ちで、どういった教義なのかはあまり知らない。それらの宗教をざっと要点だけ絞って書かれているので「良い本だな」という印象を購入時から持っていた。

宗教というのは「貧病争」に悩む民衆が入信するケースが多いと書かれている。紹介されている「新宗教」は幕末混乱期、戦前混乱期に発生したものが多く、また信者の数を爆発的に増やしたのは戦後の高度経済成長期である。それらの新宗教は現在勢いを失っているものも少なくない。「貧病争」が現在においては絶滅したわけではないが、その救いとしての宗教の役割は終わりを遂げ、違った形での役割が求められているように感じる。

それにしてもこの科学の時代に「宗教」がいまだに存在し、多くの人の心の中で大切にされているのはなぜだろうか。科学的に考えたら「ありえない」ものであるように感じるが、それでも信じる人は多い。「ありえない」と思ってる人でも、心のどこかで祈っていたりする。僕はおそらく(診断を受けたわけではないが)軽い「強迫性障害」だと思っているのだが、祈りというのも一種の強迫性障害なのかもしれないと思うこともある。ちょっと話が読書感想から逸れてしまったので、この辺で。

NEO ECONOMY(ネオエコノミー) 世界の知性が挑む経済の謎

日経で連載されていた記事をまとめた本。たくさんの図と多くのインタビューで構成されている。内容としては、テクノロジー時代の経済をどう評価していくか、格差の拡大によって世界はどうなっていくのか、などを学者や起業家、アナリストなどが答えている。各人の考えがそれぞれ違うのは面白い。考えさせられる問いもあったりした。

現代の世界経済がどのような流れでやってきて、どこに向かっていくのか。マクロ経済に疎いので、入門編としては良かったのではないかな。

科学の女性差別とたたかう: 脳科学から人類の進化史まで

ここ数年のスタートアップイベントにおける「有名人推し」ミーハー運営体制傾向にはうんざりしていたのですが(スタートアップを推すべきなのでは)、それとは別に某イベントを端を発して「ジェンダー問題」が7月下旬に起こった。いや、改めて顕在化しただけで、ずっとその問題の炎は燃え続けていた。それに目を逸らしていただけのこと。

とはいえ僕はフェアに接してると思ってるし、巷でジェンダー問題が起きた時も「僕は偏りないし、自然にしてればいいと思ってるので、特に問題を考えてない」と妻に言った。しかし妻は「いや、違う。そういうことじゃない。ちゃんと考えなければいけない」と。いや、たしかにその通りだなと改心し、早速本屋でジェンダー関連の本を探して、良さそうだと思ったのがこの本。

実際に読んでみると、目から鱗というか、僕が考えていたよりも多くの事象で何気なく「差別」「バイアス」があるんだなと理解した。この本は、過去の(そして現代の)男性優位なバイアスに陥った科学分野の論文に対して、科学的証拠をもとに反論していくというものだが、非常に勉強になった。ぼんやりと考えていたことをさらに深く考えさせるような問いを与えてくれた気がする。

「怪我の功名」ではないが、今回問題が噴出したことにより、業界全体がこの問題に目を向けるようになり、そして今回のように関連本を手にし、読んで、考えを深めることができたので良かったのではないかと思う。

まだ取り組みは始まったばかり。育休を「休み」だと認識している人もまだいるだろうし、某イベントLiveでも「女性問題を話すことについて揶揄される」みたいなこともあるみたいだ。他にもいろいろ散見する。まだまだ業界全体意識を高めていかないとなと思ったし、そのためにいろいろと学び、議論していきたい。
(いろいろ書きたいが「読書感想文」なので一旦この辺で)


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