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サイボウズ式編集長藤村さんに、再び会いに行く

10月の「未来のチーム」の作り方×コミュラボで「チームとコミュニティ」のお話を伺ったサイボウズ式編集長の藤村さんに、再び会いに行きました。前回のお話しと、もっと深く伺ってみたく。

ワガママすぎるお願いではありましたが、藤村さんは多忙な中、お時間を作ってくださいました。感謝感謝。一人占めするのはもったいないので、ここにその様子をお伝えしようと思います。

オフィスを訪問すると、まずカラフルで楽しいオフィスを案内してくれました。多様な働きかたを支援するとあって、子供の遊び場にもなりそうな、テーマパークのようなオフィスです。

会議室はそれぞれ世界の港の名前がついていました。「多様な人が集う場所」という意味を込めての港。
今回は「リオデジャネイロ」に入港しました。

主な話題は「オウンド(自社)メディアを通じたブランディング」と「チームマネジメント」です。

ブランドは長期的に育てるもの

まず一番気になっていた質問を。

「KPIを追わない、と聞きましたがメディアの効果をどう評価していますか?」

「オウンドメディアの運営において、PVのような単一のKPIだけで判断することはそぐわないと思っています。効果が出るのに長期間かかることや、採用に効果があったり、メディアへの反響から新しいニーズが見えてきたり。単純にサイト訪問数や売上では測れない効果があるんですね」

「サイボウズ式」はサイボウズという会社の働きかたや企業文化、企業理念に興味や共感をもってもらう、サイボウズという会社を知ってもらう目的をもったメディアと位置付けられていました。未来のお客様と関係性を作り、興味をもっていただけた方と長い関係性を築く場です。

確かに「サイボウズ式」には商品の情報がほとんど出てきません。記事の内容は「働きかた」や「組織」「企業文化」にまつわるもの。
読んでいて「何を売っている会社だっけ?」と逆に興味が出てきてしまうほど。
採用に応募してくる人のほぼ全員が「自由でチームワーク溢れる働きかた」に共感して志望動機の一つとするほど、そのイメージは浸透しています。

それにしても、何故商品中心ではなく働きかたや組織の在り方に焦点を当てたサイトが立ち上がったのでしょう?

サイボウズ式には商品がほとんど出てこない

「TOPの明確な意思決定がありました。商品の売り上げが好調だった初期が過ぎ、踊り場が訪れたんですね。そうなったときに、まずはサイボウズという会社を知っていただき、商品に興味を持つ前からサイトに来てくれるような情報を出そうとなりました。」

サイボウズさんの新しい働きかたは、一時期の「離職率28%」の危機を乗り越えるべく生み出されたものだと伺いました。
危機の中から生まれた仕組みや価値観が会社の資産になっていく。
変化に対応して姿を変えていく柔軟さは、まさに多様な人を受け入れて試行錯誤するからこそ得られるものかもしれません。

コーポレートブランディングの役割

藤村さんはサイボウズ式編集長に加えて、コーポレートブランディングも担っています。

「コーポレートブランディングの重要な役割として、世の中の関心事と自社のコアコンピタンスの共通項を見つけて結びつける、という機能があります。人々がどんなことに関心を持ち、どんなことに困っているか。オウンドメディアはそのアンテナになりえます。
興味をもっていただいたことを起点に自社のサービスにつなげていく。」

確かに世の中の関心事は移ろいやすく、お困りごとは当人が気づいていないことさえあります。そこにいかに自社のサービスをフィットさせていくかがカギになりそうです。

マネージャー1年目の試行錯誤

そして話はチームマネジメントの話に入っていきます。
藤村さんは自著「未来のチームの作り方」にも書かれておりましたが、
最初はメンバーと1対1で話す「1on1」の時間を最も大事にしていたそうです。

「1on1で話すことが無いと言われても、その一言を交わすために時間を確保しています。メンバーからマネージャーの時間をもらうのってハードルがあるじゃないですか。だから週1、30分定期的にスケジュールをセットしています。話しやすい雰囲気を作り、
いざというときに相談してもらえるような関係性を作っています」
「素っ気ない対応をされることもありますよ。けれど続けているうちに、ちょっと相談してくれることがあるんです。メンバーが自分の状況をマネージャーに伝えてくれるのは本当にありがたいと思います」

前回お会いしたときにも藤村さん、おっしゃっていました。「give&give&giveの精神」だと。なんとマネージャーとは献身的。とはいえマネージャーの役割はチームの力を引き出すこと。giveの精神は「チームの成果を最大化する」目的に合致したマネジメントとも言えそうです。そしてマネージャーが体現する精神は、チームの精神そのものとなっていく。

マネージャーは価値観の番人

1on1で個人のコンディションに気を配りながら、チーム全体の力を引き出していく。
藤村さんのお話しで印象に残ったのは次の言葉でした。

「マネージャ-は、価値観の番人だと思っています」

もともこの言葉は、「マネージャーが本当にすべきこと」としてこの記事で社長の青野さんがおっしゃっていた言葉だそうです。

(記事より引用:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005405.html)

会社が大事にしている価値観が隅々まで浸透しているか。
チームの中でどんな行動が奨励され、どんな行動が敬遠されるのか。
それを陰に陽に染み込ませていくのがマネージャーの役割だと思いました。
ブランディングが企業人格を扱うように、チームマネジメントもチームの人格を整えていく。その価値観の境目に敏感になること。
「これは放置しないほうがよい」「これは、しばらく見守っていようかな」「これは気にしなくていい」
そのせめぎ合いを日々続けているのだと思いました。

翻って自分の状況にに置き換えて考えてみると、言うか言わないかの境目の判断という意味では、反抗期の子供の対応と似ています。(卑近な例ですみません)
その場で指摘するか、少し待ってみるか、気付くまで我慢するか。
自立心が芽生えていく中で、どう関与するかは日々試行錯誤です。
つい最近も中学生の娘に「ママは価値基準がブレブレだよね」と言われたばかり。番人にはまだなれていません^^;

評価は「社内」「社外」両方の観点から

マネージャーの重要な役割、メンバーの評価。なんとサイボウズさんは賃金テーブルが無いそうです。評価の材料となるのは「社外の市場価値」と「社内の信頼度」。

社内の価値と社外の価値の両方に目を配って評価する。働き方が多様化し、雇用の流動化が進む中、「会社の中」だけではなく「社会の中」での自身の価値を意識することは、この先必須となりそうです。評価はそれを定期的に意識する貴重な機会になると思いました。

giveを受け取ったら、自然に誰かに繋げたくなる

ブランディングからマネジメントまで、快く広く話してくださった藤村さん。たくさんの「give」をいただいた時間でした。
その時間を経て私の中に巻き起こったのは「giveを誰かに繋げたい」という気持ち。
まさに「ペイ・フォワード(先払い)」の世界です。
それがチームの中で巻き起こったときに、めちゃくちゃ雰囲気が良くなるだろうことが想像できます。
「takeを期待してgiveする」取引ではなく、「giveを重ねていくと、自然にtakeを受け取っている」という広がりのある豊かな関係。
このgiveを、誰かに繋げていきたいと思います。

藤村さん、ありがとうございました!


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