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Spicy アヴィジットさんの光・街・エニグマ

2024年4月5日-7日、12日-14日、19日-21日 (会期終了)


アビジット・ムカルジー
アビジット・ムカルジーはインドのコルカタ出身のアーティストだ。ペイントや版画といった様々な手法で制作活動をしている。インドに5星のホテルを22店舗、運営をしているJastaグループのホテルには彼の作品が多数展示され、同ホテル主催のアーティスト・イン・レジデンスのオーガナイザーとしても活躍している。彼は闇と光を表現している。人間の進歩と共に、社会と感情は更に複雑になっている。外からの影響によって、悲しみ、怒り、フラストレーションを与えられ、私達はその場での諍いを避ける為に無意識に本当の感情を抑制し、隠し、笑顔を作りその場を乗り切っている。その隠された感情は、まるで笑顔の下で丁寧に梱包されてしまっていると彼は言う。彼の感性がその隠れた感情に触れる事で作品として生み出されている。

「Spicy- アヴィジットさんの光・街・エニグマ」
2024年4月5日-7日、12日-14日、19日-21日
東京・六本木のGallery Lara 605にて日本で初の個展が行われた。

展覧会では4つのシリーズの木版画を中心とした作品が展示された。

パンデミック シリーズ
パンデミックにより、フェイスマスクと社会的距離という象徴性のさ
まざまな側面が生まれた。自己と社会、内的世界と外的世界という概
念は、明らかに普遍的な問題になった。このテーマを彼は独自の視点
で、ユーモア持って軽やかに表現している。フェイスマスクの下では、
ひょうきんな顔をしているが、フェイスマスクの上からだと表情が読
めない二面生を一つの作品の中に収めた。
また、このパンデミックシリーズで彼はコロナ禍のインドの様子も
描いている。コビット19という未知のウイルスに対し、初めは半信半
疑な人々の様子が、あっという間にパンデミックが起こり、街は静ま
り返り、沢山の出稼ぎ労働者は帰国する事ができなかった。インドの
動揺をリアルに描いている。

幼少期のトラウマ シリーズ
このシリーズでは、彼自身のルーツのトラウマを浮き彫りにしている。彼の先祖は身包みを剥がされ、強制移住させられた過去が有る。このトラウマは今でも彼の記憶に残っている。彼自身の若い頃の苦労は彼の精神に非常に深い影響を与えたのだ。彼らが置かれた危機的な状況における社会の無関心の暴力が、作品に反映されている。その経験から彼は20歳の時に心の清らかな、トップアーティストになる事を誓ったと語ってくれた。

幼少期の遊び シリーズ
幼少期のノスタルジーのシリーズは、彼の作品の長年のテーマである。現在では、彼の子供の頃に遊んだ石けりや、かくれんぼのような単純なゲームは姿を消し、コンピュータゲームが主流になりつつある。この光景から子供の遊びだけではなく、人々の生活が変化している事に彼は気がついた。彼は子供の頃からインドのコルカタという地域の同じ家に住み続けている。幼少期に家を取り囲んでいた郊外の静かな風景はもうそこにはない。激しい都市化が彼が育った地域を飲み込んだのだ。彼の周りでは、もう見ることのできない単純で素朴な生活の光景が、甘い子供時代の昔の自分の街や人々の暮らしの美しさを再現したいと思わせのだ。

花・植物 シリーズ
一見ただの植物を描いた作品だが、話を聞くとインド人の中で様々な意味を持つ植物を描いている。例えば、バナナの木はインド人にとって「母」の象徴である事を教えてくれた。実はそのまま食べ、花は炒め物に、葉はお皿になる。終末を迎えたバナナの幹は中をくりぬいて食べるという。これはコレステロールに効くと言われているそうだ。このようにバナナの木はインド人にとって食事を与えてくれる「母」なのだ。


本展ではアビジット・ムカルジー本人の強い希望と、 Gallery Lara 605の協力により、作品の売り上げ全額を日本の児 童養護施設2ヶ所、子供の社会問題に取り組む団体1ヶ所に寄付を することになった。 また、2025年に行われる彼がオーガナイザーを勤めるアーティ スト・イン・レジデンスに日本の作家とインドが繋がる良い機会 にも恵まれる展示となった。


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