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秋桜-コスモス-

お父さんが好きだと言っていた秋桜は
秋に咲くね。
うん。綺麗だね。
綺麗だけど...派手さがないね。
春夏に咲く花と比べたらだけど
比べることなんてしなくていいか。
ごめんね。

お父さんは無口だったね。無口だったけど...お母さんといるのが心地良さそうで、嬉しい時、怒った時に少し顔に変化が出るのを僕達は感じ取ってくみ取っていたように思います。
あとね。決して人の悪口を言わない。悪口を言っているところを一度も、ほんの一度も見たことも聞いたこともない。心の穏やかな、優しい人。
The【男】。

そんなお父さんが好きだと言った秋桜は派手さこそないものの、秋は沢山の緑達が赤、黄、茶へと色を変化させ始める季節だからその秋桜の悠々と淡く、彩やかに咲く秋桜の花びらは一面に変わりゆく景色の見事なまでの差し色だ。

秋風に揺れる秋桜は
どこか夏の遊びすぎた思い出も
寂しかった恋の終わりも
そっと、ゆっくりと
疲れた心をなだめてくれるようで
そっと、そばにいて欲しい花。

夏の終わりに産まれた僕には
この季節の肌寒さも、寂しく彩る風景も
どこか懐かしい。


ねぇ。お父さん。
物分りの悪い僕を愛情いっっっぱいに
育ててくれてありがと。

沢山の大事な人に
大切な人に出会えて
今を生きることができているよ。

あのね娘がまだ、小さな小さな時にね。
抱っこしてくれてね。
ありがとう。

まだ、お父さんが痩せ細る前だったね。
娘のことを優しく抱っこしてくれて
少し照れくさそうにしてたっけね。

『娘が欲しいなぁ』と
言っていたお父さんの子供は
兄ちゃんと僕。
孫が女の子で嬉しかったー?

もしもね。お父さん。
お父さんが元気いっっっぱいだったらさ。
娘を駄菓子屋さんに連れてってくれたしょ?

公園でブランコに乗せてさ。
娘の背中を何回も何度も押してくれたしょ?

一緒にてって繋いで
盆踊りに行ってさ。
何周も何周も子供盆踊りに出たさね。

お父さん。
もう、一度会えたらね。
無口なお父さんのお話さ。
少しきかせてよ。

『なんもねぇさ』って
きっと、言うよね。

でもさ。愚痴一つ
何も言わねぇお父さん。

ずっと、ずっとさ。

一人きりで

どれだけの辛いこと

抱えて、乗り越えて、立ち向かって

生きていたの?

お父さん。
お母さんがね。
お父さんのこと大好きすぎるんだとさ。

実家に行った時にね。
最近は見慣れてきたけどさ。

買い物に出かける時に
『お父さん、行ってくるね!!』って
仏間にあるお父さんの写真に
向かってね。
玄関からでも聞こえるように
おっきな声で
言ってさ。
ニッコリ笑って玄関から出てくよ。

なんだべね。
やっと、うっせー息子が
家から出てったのに

これから
ゆっっっくり二人で
ドライブに行こうか
って、時にね。

こんなに仲良しな二人が
お父さんとお母さんが

なんでね。
一緒に居られないのさ?

お父さん。
お父さんに対して
一番の弱音を履かせてもらってもいい?


お父さん

『一緒に、お酒を飲みたかった』

おっきな、おっきな
背中だったよ。

お父さん

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