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ほんとに短編集?と思わせるような満足感たっぷりの小説〜読書感想〜

こんにちは。ほどほどです。
今回ご紹介する本は
『スモールワールズ』です。著者は一穂ミチさん。

タイトルの『スモールワールズ』が示す通り、それぞれの世界に生きる人たちの物語で、6章からなる短編集ですが、短編とは思えないくらい内容が濃く、読み終わったあとはまるで6冊一気に読んだような感覚に襲われます。

それぞれの章は直接的には繋がってなくて、まるで交差点ですれ違うくらいの感覚で繋がっています。
私は読み終わってもそのつながりに気づきませんでしたが、読書会に参加してつながりがあることに気づき、だいぶ衝撃を受けました。
やっぱり読書会は自分にとっての安定剤のようなものだなと思います。

さて、本編ですがちょっとだけ見どころをご紹介します。

☑第一章 「ネオンテトラ」
 登場人物は不妊に悩む美和と貴史の夫婦、その姪に当たる中学生の有紗、有紗の同級生の笙一。中学生の思春期がもつ独特な感情と美和のしたたかさが際立つ展開。
 個人的には夫の貴史がすきだったかな。

☑第2章「魔王の帰還」
 この章だけ漫画化されている。立ち読みだけしたが、結構面白かったです。
登場人物は高校生の鉄二、同級生の奈々子、鉄二の姉の真央。
真央は体型、器量ともに超大型で表現され、「魔王」と揶揄される。
転校生の鉄二はなかなか学校に馴染めず浮いた存在。そんな鉄二にちょっとだけ寄り添う駄菓子屋のお手伝いをしている奈々子。
ちょっとした青春のストーリーに、真央や鉄二の過去、それに対して立ち向かおうとする姿勢に最後は感動します。
 職場の休憩室で読んだんですが、うるっときましたね。

☑第3章「ピクニック」
 登場人物は赤ちゃんが生まれたばかりの妻、瑛里子、その母親の希和子、瑛里子の夫の裕之、そして娘の美希。(実際にはもうちょっといます)
出産して間もない瑛里子は育児疲れもあり、母の希和子の力を借りてなんとか過ごしていました。
生後10ヶ月がたち、単身赴任中の夫に会いに行くため、娘を母に預けた数日後に娘の急死が告げられる。
怪しまれる母、希和子。それをかばう瑛里子、それを遠いところから見ている別の存在・・?
個人的には読み終わったあと、どっと疲れましたね。可哀想過ぎる。

☑第4章「花うた」
 登場人物は傷害致死で勾留中の秋生、秋生に兄を殺された深雪、顧問弁護士の伊佐。
気持ちの整理のため、弁護士のすすめで受刑者の秋生に手紙を書くことに。
秋生も返事を書き、やり取りが始まるが、最初は兄を殺された怒りが混じり、秋生も反省しながら自分と向き合うきっかけを作る。
あることから深雪の気持ちに変化が。そこからの展開は驚きです。
個人的には『ルピンの壺が割れた』に似ている展開でした。
『ルピンの壺が割れた』は最後には「とっとと死にやがれ!」と罵るんですが、さて今回はどうなるか?

☑第5章「愛を適量」
 登場人物は高校教師の慎悟と娘の佳澄。
妻と別れ、娘とは離れて暮らしていた慎悟。高校教師を平凡すぎるくらいに過ごしていたある日、眼の前に現れた佳澄。
佳澄はトランスジェンダーであることを慎悟に打ち明け、相談相手になってもらう。娘との久しぶりの共同生活で慎悟の気持ちにも変化が。
個人的にはすごい難しい問題だと思いながら読みました。

☑第6章「式日」
登場人物は会社員の人物とその高校時代の先輩。
性別の表記もなく、名前も書かれずに展開する。
先輩と後輩の関係性が付かず離れずで表現しがたい。もしかしたら男女かな?と思わせるような感じ。

ざっくり書きましたがそれでも内容が濃いんです。
著者の一穂ミチさんのほかの作品も興味ありますね。
また読んでみたいとおもいます。




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