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アーティストを愛してください

先日エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなって、多くの音楽ファンや関係者が哀悼の意を表した。レジェンドたちの高齢化が進んでいることもあって、訃報は続く。

レジェンドがこの世を去った時、いつも思い出すローリン・ヒルの言葉がある。


去年の12月、こんな記事が少し話題になった。

ビリー・アイリッシュがヴァン・ヘイレンのメンバーの名前を知らないのは世代的にも無理もないことだろう。「ヴァン・ヘイレン」というバンドはギタリストがエディ・ヴァン・ヘイレン、兄のアレックス・ヴァン・ヘイレンがドラム、最後期のベーシストはエディの息子のウルフギャング・ヴァン・ヘイレンという親族バンドだったので、いろいろ混同しやすい。引っ掛け問題のクイズとして軽い気持ちで尋ねたら思いの外騒ぎが大きくなってしまった、ということなのかもしれないけど。

もしビリー・アイリッシュがロック史を熱心に研究するようなタイプだったら、あの新しい表現は生まれなかったと思う。個人的には、ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンのコメントに全面的に同意。

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以前毎週大学で教えていた頃、授業の前日にプリンスが亡くなった。僕はとてもショックで、授業が始まる前のよもやま話の時間にプリンスの経歴と音楽をざっと学生たちに紹介したが、その場にいた学生たちが一人もプリンスを知らなかったことにも、えらく衝撃を受けた。

たしかに2000年代以降来日もなかったし、プリンスの活動は日本では大きな話題になっていなかった。僕は新作を追って、晩年の少しアクが抜けて円熟味の増したパフォーマンスを動画で見て唸らされていた。「進化し続ける」という表現が、比喩でなくぴったりだったと思う。

This is it」が死後公開されて、再評価と若い層への人気が広まったマイケル・ジャクソンと違って、プリンスの再評価は熱心な音楽ファンの外側には広がらなかった。

同様な対比が、クイーンとヴァン・ヘイレンにもある。「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットで、お茶の間にも(←この表現今も時々使うけど「ダイヤルを回す」的昭和感...「テレビが生活の中心にある層」というべきか)その存在が知られるようになったクイーンのように、ヴァン・ヘイレンがワイドショーや音楽番組で特集されたりすることはなさそうだ。

フレディが要だったクイーンと、ヴォーカリストが何度か代わってしまったヴァン・ヘイレンではバンドのアイデンティティが違うので、特に歌を中心に聴く人たちには伝わりにくいのは仕方ないとしても。

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死後にアーティストの功績を偲ぶのは素晴らしいこと。それをきっかけに新たにレジェンドに出会う若い人もいる。

僕はいつも、この世を去ったレジェンドの足跡すべてを振り返ってみたくなる。思いも寄らない人生のドラマや、知られざる佳作に出会えたりする。

プリンスのように、ブームが去ってキャリアを十分重ねた後に充実した活動を続けているリヴィングレジェンドが、今もたくさんいる。病と戦うアーティストや、復活を遂げた巨人もいる。そんな彼らの足跡が、これからますます輝きますように。

もう一度、ローリン・ヒルの言葉を。

アーティストを愛して下さい。
彼らがつまずく時はしっかりと支えてあげて下さい。

プリンス2004年の弾き語り。


ヴァン・ヘイレン2015年のギターソロ。



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