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土の記(上)(下)  高村薫

奈良県の山間集落に婿養子となり、妻は交通事故の後、長い間植物人間となり、半年前に亡くなっている。主人公72歳の伊佐夫。

農村地の情景を、まるでそこにいるかのように、田畑の土や水、虫の声や風雨の音までが、すごい語彙力で表現されている。

妻との回想が繰り返される中、この家系の女の噂話、時々聞こえる「声」
幻想的もあり、ちょっと気味が悪い部分もあったが
伊佐夫は亡き妻を疑いつつも、思い出に浸る場面もある。

とにかく、最初から重たい、、という感じである

お盆近くに、孫が泊まりにきて2週間を過ごす、唯一の明るい場面。

最初はなかなか読み進めないのでは?と思ったが、久々の高村作品
引き込まれてつつあります。

次 (下)に進みます。

夫婦石の制作と農事歴で一年が始まる、雨が多い年で稲の成長も心配をする。3,11の東北の震災の話もあるが、意外と短い内容で終わる、その同じ年、この地区でも災害にあわれ2人がなくなると最後に記してある。
そんななか、娘がニューヨークにて結婚をして、旅行の帰りに故郷に立ち寄り、村の人たちから祝福を受ける、このシーンが暖かく幸せな時間だったのではないだろうか。。。
男が生まれない家系のなかで、この娘の生き方によって、この家系も終わるのであって、しまい方も語られている。
封建的な地域での生活は、伊佐夫にとってどんな一生だったのだろうかと推測してしまう。
たとえ違う道を選んでい生きたとしても、それは環境だけが違っていて、その人なりの生きざまではなかったかと、思うのであった。


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