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読書感想文:神々の流竄/梅原猛

神々の流竄  
梅原 猛 著

面白かった。
ご本人が文庫版の後書きで生涯で最も未熟な論文というように、確かにこなれていない部分は多々あるものの、ああそうだったら興味深いよなあと思う部分も多い面白い本だった。

出雲神話が、古事記と日本書紀によって作られた神々の配流の話だったとか、藤原不比等の天才的な政治手腕の話とか史記編纂の話とか、やたら面白くて読み出したら止まらなかった。
地獄の思想の方は未だ読んでいないのだが、あちらも読んでみようかとは思っている。
読書感想文のレベルではなく思ったことはあったが、それはそれでまた。

史書は政治のためにこそ必要になる。
確かにな。

(2008/8 このとき読んでいて、巨大な神殿があったという出雲神話が虚構だという氏の論には、すでにかなり穴があった。さらに、その後数年をして、出雲神話については、出雲で巨大な柱の遺構が見つかり、本当に高層ビル並みの巨大神殿があった実証がされて、氏の仮説は風雪と化した。だが、私が氏の態度に一番感心したのはその後で、氏は先年亡くなられたが、亡くなる前に新聞の取材かインタビューか何かに応じ、自分の説が誤りであったことを認め、さらに考古学上の重大な発見を称賛しておられた。間違っていたのだから謝るのは当たり前だろうという言説が強硬に主張される世ではあるが、功成り名を遂げてこそ、それを実行に移せる人は少ない。氏の諸説を遅れて知り、ただ面白く興味深いとだけ思っていた氏を尊敬するに至った瞬間は、そのときだったかもしれない。)


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