【実話】 非喫煙者の暴虐
二十年近く前の話だ。
その日は週末で、私は単身赴任の赴任地から家に帰る途中だった。
座りたかったので指定席を取ったが、生憎指定席はすでに満杯で、ギリギリ喫煙席なら取れた。
煙いのは分かっていたが、自分の都合なので、まあそれは仕方がない。
と、斜め前方の席の男性がトイレに立った。
男性は指定席だからと安心していたのだろうし、貴重品を席に置いておくわけにもいかないだろうし、ビジネスバッグを持って席には何もなかった。
すると、男性が行ったトイレの方向とは別の扉から乳児を抱いた女性が入ってきて、子供を膝に抱えたまま男性の席に座った。
さらに女性は、窓側の席にいた煙草を吸っていた別の男性に「子供がいるんで吸うのやめてもらえますか。」と言った。
意味が分からなかった。
さらに、その直後、トイレから男性が戻ってきて、女性が座っているのを見てぎょっとしていた。
男性は「あの、そこ、僕の席なんですけど…。」と言ったと思う。
女性はそれに「子供がいるんですよ。」と言って立たなかった。
さらに意味が分からない。
喫煙車両で指定席。
「子供がいる」から、だから?と思った。
その騒ぎは、車掌が来て、女性を促して退かせて終わったと記憶している。
今思い出しても、理不尽で意味の分からない出来事だった。
単なる記憶として。
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