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【掌編】 淫売のマリア

 マリアは煙草を吸っている。
 俺は煙草が嫌いだ、昔吸っていたこともあるが気分が悪くなるばかり服が黄色くなるばかりでろくなもんじゃなかった、その代わりに酒を飲んでいるのかとたまさま聞かれる、余計なお世話だ。

 俺はまともに服も着ていやしないマリアの腹の辺りのたるんだ白い脂肪の固まりが詰まった腹が、呼吸をするたびにたっぷりと揺れるのをただ見ている。
 息を潜めようが潜めまいがこの部屋は暑い。

 クーラーは嫌いだと言ってマリアは窓を開ける。
 狭い路地の通りから見えることなんてお構いなしに古くさいデザインのシュミーズ一枚で古びたパンツを穿いて、ベランダで風に当たってる。
 だがその彼女にはそれ以上に日も当たってる。

 ただなにもせずに部屋にいてもじんわりと汗が滲む暑さの中で、俺は何を思って彼女が日の光の当たる最中にいるのか理解出来ない。
 彼女が吐いた紫煙が部屋に流れ込んできて不快なこと極まりない。
 所詮理解出来ないことばかりだ。

 俺は据えた匂いのするシーツの上に再びごろりと転がると、二度寝を決め込もうとしたが、脳が煮えるような暑さのおかげでそれも難しかった。
 いずれ2時間もすれば日が陰る。
 日が陰ればいくらか涼しくなる、そうすれば俺たちはまた睦み合うのか。

 マリアの腹がでっぷりと揺れている。
 俺はただその腹を見つめている。



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