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読書感想文:羆嵐/吉村昭

羆嵐 
吉村昭 
新潮文庫
1915年の北海道の開拓時代、実際にあった、羆(ヒグマ)による日本史上最悪の熊害事件を題材に執筆されたドキュメンタリー。

三毛別羆事件。

これを読むと、今現在の熊被害に、麻酔銃でなどと言っている人々の危機感のなさが心配になる。

羆と月の輪熊は違うと言ってもだ。

思うに、人は何故、自分たちが「人里」を作って山から離れ、「安全」を囲って里山を作ってきたのか忘れたのだ。

ヒグマはツキノワグマよりよほど凶悪でイメージとしてはグリズリーに近い。

しかし、それでなくとも、山、本当の自然というものは言うほど人に優しくはない。

時折、「里山保全」と変わらぬレベルの環境論者を見ると、深い山の中に身一つで放り出したくなる。

山間にある木造建築(人家ともいう)など数年経てば跡形もない。

人家があるところでは大きなニュースになる土石流など、いくらか深い山に立ち入れば案外と痕跡はその辺りに頻繁にある。

自然と人工、正誤でも是非でも語れることではないが、人の世界の後ろにはぽっかりと暗い何かがある。

(2021/1 随分と若いころに読んだ本だが、一月にTwitterで何か呟き、今回少し加筆した。これを書いていた時、猪害のニュースを見ていた)


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