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読書感想文:人狼原理/クリフォード・D・シマック

人狼原理 (The Werewolf Principle)
クリフォード・D・シマック
という名で知られている(知られている?)作家さんがいる。

活躍した年代は割と古くて、…というか、私が読んでいた作家さんはみんな大抵古く(うっ)、最新気鋭という方は殆どいらっしゃらないのだが、私はこの方の作品がことに好きだった。
その中で一番最初に読んだのがこれ、人狼原理という作品。

私はこれが大変好きで、余談にはなるのだが、日本のある漫画家さんが21世紀初頭かな?これに設定のよく似たSFチックな作品を醸したとき、『盗作ではないのか…!?』な気分になって、非常に気分が悪かったことがあったが、事実としては「アイデアに著作権がない」ことは把握している。私はそれまでその漫画家さんの作品を好きだったので、ちょこちょこ買っていたが、それ以来、その漫画家さんの作品は購入していない。

ともかく、ひとつの体に同居する多種の生命体人格というのは、読んだ当時は結構、私には印象深い設定だった。

今目の前にないので、うろ覚えなわけだが、主人公は「一個の人間としての多重人格」ではなく、宇宙探査による多種の知的生命体を吸収(?)することによる多重人格というか、多重生命というか。

もうネタばれという時代の作品でもないので、時効とは思うわけだが、読んだ当時は、自我のあり方という奴について、結構疑問点があった。
変な意味ではないけれど、それはそれで、「異種」の宇宙生命体が、同じ体を使って、主格を切り替えるような形で共存できるのか本当に?
シマックの作品は、基本優しい視点で描かれていて、楽観主義と言われてしまえばそれまでではあるのだが、暗い結末は少なかったように思う。

ゆるぎない優しさというのが好きなところだった。

話に一貫した主旨がある訳ではないのだが、シマックの作品は他に「小鬼の居留地」「中継ステーション」等があって、いずれも殺伐とはしておらず、如実にシマックの作風が現れているように思う。

(2004ころ 学生の頃に初読。後に古本屋で買った。新本は出回っていなかった。最近中継ステーションの新版が出ていたことを知り、復古を嬉しく思う)




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