【短歌】 遠く見るここが地獄の果てなればよしや君への便りもならず2005/02/28(月)
もう十数年前の歌だ。
2005/02/28(月)
遠く見るここが地獄の果てなればよしや君への便りもならず
何について詠んだ歌なのか、漠然と覚えているものの、もう過去のことだ。
空の青が鮮やかな土地で、空を見上げて詠んだ歌だ。
この時期、仕事が忙しかった。多忙という意味を体感したことのあるタイプの人々なら分かると思うが、昼夜を問わず不意の連絡はあった。
夜中でも飛び起きて駆け付けることもあったし、年を見て思ったが、同期が二人死んだのはこの年のことだったような気がする。
忙しさは心を亡くすとよく言われるが、多忙は物理的に人を殺す。
このころ、日に一首句を詠んで、シンプルな日記サイト(もう無い)のようなところに投げていた。
上げていっている詩もこの頃のものが多いが、短歌も、改めて振り返って失笑が漏れた。
いかにも殺伐としている。
先に上げたもののように、良さげな一句をと思ったがどうにも選べなかった。
これは当時、酒と仕事と本と映画で埋もれていたころの、日々の残滓だ。
月を丸ごと投げる。
選べなかった。
2005/02/27(日)
ふらよろりやるべきことを後回すそれが己に災いなれど
2005/02/26(土)
音もなく眠りに落ちて目覚めると既に日は落ち浮くすべもなく
2005/02/25(金)
いつわらぬこころをみすえなにもかもそのめにとどめいきてゆくみち
2005/02/24(木)
腑の煮える思いをしてみても所詮はくにの犬に過ぎねば
2005/02/23(水)
うす黄色黒の斑のその視界これが眩暈とそうと知るなら
2005/02/22(火)
投げ付ける言葉の角に誰当たる本の角よりそれがきついか
2005/02/21(月)
わすられる我が身を躙れ打ち捨てて剥げた疵痕ままと晒して
2005/02/20(日)
待ち人が来たりて竦むその時こそ踏み外しても人を迎えよ
2005/02/19(土)
たちそがる道をなくして立ち尽くす我が爪先の向いたが前と
2005/02/18(金)
濡れそぼちただ立ち尽くす我が身なれ辿る道には黒い水影
2005/02/17(木)
ひとはみな足りぬ足りぬでひとなれば満ちる余るはそもひとでなし
2005/02/16(水)
足が棒とはよく言ったがりぐりごろりとろくな音せぬ膝の下
2005/02/15(火)
明け白む東の空に黒々と群れる鴉の響く鳴き声
2005/02/14(月)
突き抜ける空の青さに白々と鉄の鴉の遺した名残
2005/02/13(日)
きぬぎぬの別れを惜しむ名残すら高い日差しにおののかされる
2005/02/12(土)
蹲る我が身を躙れ不甲斐ない落ちた体も心もいらぬ
2005/02/11(金)
晴れ渡る真昼の月を眇め見る願をかけるはあえかな望み
2005/02/10(木)
踏み込んでひたと見据える目の前の敵と思えと気合い一閃
2005/02/09(水)
肉喰らう人の生身も肉なれど喰ろうてうまし牛豚鶏か
2005/02/09(水)
寝過ごして日付を飛ばす真夜中の目覚まし代わりに電話のベルか
2005/02/07(月)
死ぬも悔い生くるも悔いならどちらをもなべて撰ばんここに永らえ
2005/02/06(日)
雨の日も雲の向こうに君想う白く凍てつけ冬の月影
2005/02/05(土)
城の白見上げて白しその城のかなた広がる霞の白さ
2005/02/04(金)
しにはてるわすれはてるもついのはてだれしもおなじおわるともがら
2005/02/03(木)
晴れ渡る冬の空色陶磁器の透けぬ白色雲居に馴染む
2005/02/02(水)
だれひとり踏み荒らされぬ雪の白ここは世の果てついの果てなれ
2005/02/01(火)
靴底に軋む雪音踏みしめてただきしきしと軋む靴裏
2005/02/01(火)
まつろわぬ言葉の果てに刻まれし勲(いさお)も傷も共に忘れず
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