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地方のバイト時給が東京超え 観光地で人手不足進む

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマは「バイト時給が東京超え 観光地で人手不足進む」。企業が賃金を引き上げたり、初任給をアップさせたりする動きが目立ちます。アルバイトの時給もここ数年上昇が続いています。


値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

こちらはアルバイト情報誌ディップに掲載された2020年から2023年のアルバイト時給です。一番低かった2020年5月に比べ3割上がっています。

ニセコや白馬が東京超え

東京と観光地の長野県の白馬、北海道のニセコを比べてみます。2020年は東京の方がおおむね高かったのですが、2022年以降は白馬やニセコの方が高くなる傾向です。労働者の賃金の基準には「最低賃金」というものがあります。単純比較はできませんが、東京都は1時間1113円、北海道は960円、長野県は948円です。つまり東京都に比べ北海道や長野県は15%低いのが基準なんですが、リゾート地のアルバイト時給ではこれが当てはまらない。いかにニセコや白馬のアルバイトの時給が突出しているのかということです。

 

なかでもニセコは昨年からどんどん時給が上がっています。2020年に比べると上昇率は5割。今年の冬は時給2000円を超える求人も出始めているそうです。

時給上昇の背景にあるのがインバウンド客の増加。JTBの「2024年(1月〜12月)の旅行動向見通し」によると、今年はコロナ前の水準に達する見込みとされています。

急増する観光客に対し、人手不足はますます深刻になっています。ニセコを管轄するハローワーク岩内によると観光関連の求人倍率は高い状態が続いています。

ニセコのスキー場、8割が外国人客

ニセコを取材しました。連日多くのスキーヤーが訪れるスキー場では客の8割が外国人です。スキー場で働くスタッフは英語の接客スキルも求められます。ハローワーク岩内の担当者は「人手不足が他の地域よりも顕著になっている。求人倍率が高くなっていくと、より高い条件を提示しなければ人が集まらない。一部の外資系企業は賃金を高くして人を集める会社も多い」と話しています。

コロナ前もニセコの求人倍率は高い状況でした。ここにきて時給が急ピッチで上がっているのは理由があるんでしょうか。ハローワークの話ではコロナ禍でリゾートバイトがなくなったため、働いていた人たちが、別の職種に就いてしまったことが理由として考えられるそうです。

値段の方程式です。

バイト代値上がり=観光需要の増加+スキルある人が大幅に不足

 今後も時給はジリジリと上がっていくことが予想され、人手不足解消に向けた取り組みが求められます。ハローワークではニセコの求人募集を全国で呼びかけているそうです。ホテルが独自でSNSで人員確保に取り組む動きもあります。
ニセコ町と倶知安町ではアルバイト仲介アプリのタイミーと連携協定を結びました。タイミーは自分の空き時間に働くいわゆるスポットワーカー向けのアプリで短時間労働者の確保が期待できます。

ニセコや白馬以外でも、同様の傾向が見られます。たとえば神奈川県の箱根は2020年からアルバイト時給が全国平均よりも高い傾向にあります。やはり観光需要に人手が追いついかず人材確保に向けて時給を上げざるを得ないという状況です。観光地の人材はさらにほとんどの人は地域外からの人で、住み込みで働くのが基本となります。寮などの整備も必要になり、宿泊施設などの事業者にとっては頭の痛いところですね。
一方、ニセコや白馬は1年を通じた「周年型」のリゾート地に変貌しつつあります。アルバイトの人員確保に苦労し時給が上がっていくなら、正社員の雇用拡大や待遇改善で安定した人材を確保しようという動きも出ています。こうした動きが定着すれば地域の経済活性化につながります。観光立国を目指す日本にとって経済再生の大きな原動力にもなりそうです。先行指標となるアルバイト時給から今後も目が離せません


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