マンション賃料上昇 脱コロナで都心回帰も
世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「マンション家賃上昇 脱コロナで都心回帰も」。
不動産業界にとって1月から3月は引っ越しが多く繁忙期です。3年ぶりに行動制限がなくなった繁忙期に大学生や外国人留学生、新社会人といった単身者の住まい探しが戻ってきました。不動産業界の景況感や家賃に「ポストコロナ」の変化がはっきりとあらわれています。
不動産仲介業の業況DI、過去最高に
不動産情報サービス大手のアットホームが発表した首都圏と近畿圏の賃貸業況判断指数(DI)です。不動産仲介業を対象に1年前と比べた業況を聞いています。今年1〜3月期のDIは首都圏、近畿圏ともに大幅に上昇し、2014年の調査開始以来の最高になりました。
業況DIはコロナ禍の2020年4〜6月期に過去最低を記録しましたが、3年かけて回復してきました。コロナによる行動制限がなくなり、経済活動が正常化しているのに伴い人の移動がコロナ前に戻っています。分譲マンション価格が高騰しており、いったん購入を見送り賃貸に切り替えるファミリー層が増えたことも要因です。
コロナモード解除、都心に人戻る
コロナ禍では外出規制やリモートワークの増加で郊外に移り住む人が目立ちました。コロナモードの解除で再び都心へ人が戻って来ています。今年1〜3月の東京都の年齢別人口移動を見ますと、ほとんどの世代で転入が増えたり転出が減っている傾向が見られます。
大学の対面授業が再開、企業のリアル出勤も増えているのを反映し15歳〜29歳の若年層が東京に転入してくるようになりました。これが大きな理由です。
主要エリアの家賃上昇
需要が増え賃貸マンションの家賃が上昇しています。アットホームの調査によると東京23区をはじめ名古屋市や大阪市、福岡市など全国主要都市7エリアであらゆるタイプで1年前と比べて上昇しています。
東京23区でもシングルから大型ファミリー向けまで全タイプで家賃が上昇しています。
シングル向けは回復軌道に乗り出したばかりですが、ファミリー向きやカップル向きは2015年以降で最高となっています。特にファミリー向きは2015年1月と比べて30%も上昇しています。
家賃の上昇傾向は今後も続くのでしょうか。不動産業界の景気動向を調査している専門家に聞いてきました。アットホームラボ 執行役員データマーケティング部部長の磐前淳子さんに今後の見通しを聞きました。磐前さんは「賃貸に関しては引っ越しの時期を(1~3月に)集中させないという動きがある。需要自体も広い時期が繁忙期になっていくのではと思う。もうしばらく好調は続く」とみています。
物価高もあり生活費を抑えるために安い物件を求める人も増えそうですが、磐前さんは「少しでも安い家賃の物件を探したいという動きが一定数ある一方で、家での時間はリラックスしたいとか、住まいの価値はキープしたまま別のところで工夫する人も出てくるなど、価値観の見極め方が二極化しつつある」と指摘します。
家賃300万円超、高級賃貸物件も人気
分譲マンション価格の上昇が続いて、もう億ションは当たり前。今や「2億ション」という言葉も出ています。賃貸市場の高額物件はどうでしょう。入居が4月から始まった住友不動産の「ラ・トゥール新宿ファースト」を例に挙げます。
平均面積は100平方メートル以上。バイリンガル対応のフロントコンシェルジュが24時間常駐、駐車場の車の出し入れをスタッフが代行するなど充実したサービスがあります。
家賃の目安はベッドルーム1つ80平方メートルのタイプで月50万円。約300平方メートルのペントハウスタイプで300万円です。5室あるペントハウスタイプは既に2室が成約済みといいます。20平方メートル台で家賃月9万2500円の1Kに住んでいる私としては、もはやため息しか出ません。
住友不動産によると20年前は外国人と日本人の入居者の比率は半々でしたが、現在は日本人が9割近くです。入居者の年齢も若くなり49歳以下の入居者がおよそ6割を占めています。
ベンチャー企業の経営者も多いそうで、特に若い世代では住宅について「所有から賃貸」という考え方の変化もあるようです。住友不動産は「ラ・トゥールシリーズ」を28カ所で展開しています。賃貸物件の需要も旺盛とみており、今後も東京都内や神奈川県内で続々と計画があります。
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