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【詩】現代音楽

現代音楽の楽譜を走る

音符の山を駆け
なにがなんやらよくわからない、
落書きのような記号を避けて
小節線で立ち止まる

妙な指示の二文字目まで見えている
終止線は未だに見えない
五線は無視できるのに
小節線から先へは進めない

演奏が始まれば動けるようになるけれど
この奇妙な楽譜で演奏される音楽は
果たしてどんなものなのか
ドレミの読めない僕にはわからないが
きっと相当に不気味なのだろう

技法、奏法、その他何やら難しいことがわかるなら
楽しみ方もあるのだろうが
私には良さがさっぱりわからない

不協和音はやっぱり苦手だ
生物の本能みたいな何かが
聞いてはいけないと叫びだしてしまう

だから現代音楽はあまり好きではないはずなのに
何故か私は楽譜を駆ける

走りたくなる形状なのが悪いのだ
登山家がそこに山があるから登るように
ここに楽譜があるから私は走る
きっとそれだけの理由

ピアノの蓋が開けられた
始まってしまうらしい

不安をかき立てるような音の連続に
一貫しないリズム

聞いている内、何故か気分が高揚してくる

ここは本当の最前列だ


耳を塞ぎたくなる衝動
それでも私は駆けてゆく

フォルティッシッシモで飛び跳ねて
着地するのは終止線

お聞きいただきありがとう、と
白髪のピアニストが礼をする


今度はショパンの楽譜を走ろうか
踊るように、舞うように

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