テレビの衰退が加速する脱「小説家になろう」

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https://media-innovation.jp/2020/08/19/shiseido-digital-shift/

化粧品会社の資生堂は、上記の記事にあるように広告費の「デジタルシフト」を行うようです。

平たく言えば衰えるテレビをはじめとする「オールドメディア」に見切りをつけ、ネット広告へシフトさせるという意味ですね。

広告の「デジタルシフト」の流れは以前からあったのですが、新型コロナの感染拡大にともなう「デジタル・トランスフォーメーション」のおかげで、その流れが加速しているように思えます。

その流れの影響を大きく受けるのではないか、と筆者が思うのが「小説家になろう」をはじめとするネット小説投稿サイトです。

http://syosetu.com/

何故、ネット小説業界が影響を受けるのでしょうか?

平日の出勤時間などの隙間時間や休日ににネット小説を読む人は昔からいましたが、それに広告をつけてその収益を得ることでビジネスにしたのが(かつては個人サイトだった)「小説家になろう」です。

長らく小説投稿サイトと言えば「小説家になろう」しかない時代が続きました(正確にはほかにもいろいろありましたが、知名度は「なろう」が抜群でした)。

しかし、ここで大手資本のサイトが参入します。

それは出版業界の雄「KADOKAWA」です。

ウェブサービスの老舗、「はてな」による、シンプルかつ流麗なデザインのKADOKAWAによる投稿サイト「カクヨム」が2016年にデビュー。

「カクヨムショック(筆者しか言ってないやつ)」と言われるほどの衝撃をネット小説業界に与えました。

2019年にはホビージャパン社が投稿サイト「ノベルアップ+」で参入。

いわば、今はネット小説戦国時代ともいうべき面白い時代なのです。

さて、この大手資本の参入の原因として考えられるのが、一番最初にも出てきたネット広告の「デジタルシフト」です。

ネット小説を読む層への広告効果が無視できない数字になってきたということであり、YouTubeなどの動画投稿サイトほどではないにしろ、ネット小説も十分「うまみ」のあるビジネス・コンテンツとして成長してきたと言えるでしょう。

事実、KADOKAWAは「カクヨム」において「カクヨムリワード」という広告料の一部を作者に還元するシステムを導入しています。これはそれだけ儲けがきちんとあるということで、逆に言えば利益の一部を還元してでも、「稼げる小説家」を囲い込みたいという意思の現れだと思います。

新興の投稿サイト「ノベリズム」でも作者への投げ銭機能を実装し、読者が作者を応援するシステムを実装しています。

https://novelism.jp/

これは「書き手側を金銭的に支援するシステム」が無ければ、アマチュア作家といえど「モチベーションが持たない」という当たり前の話です。また「PV(ページビュー、どれだけそのサイト≠広告を見た人がどれだけいるかの指標)を稼げるアマチュア作家」の価値が上昇していることを示していると言えるでしょう。

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さて、上記のようなカクヨムなどの他のサイトにくらべて、元祖小説投稿サイト、「小説家になろう」の現状はどうでしょうか。

執筆・読者人口の多さ、70万という作品数は他のサイトに真似ができない領域です。まさに一強といって差し支えない、先行者利益と言えるでしょう。

アマチュア作家にとっての登竜門であり、編集者のスカウト(拾い上げ)などもあり、複数の出版社が参加する「ネット小説大賞」にもそのまま応募できるなどメリットは大きいのも事実です。

しかし、小説を投稿するアマチュア作家にとって、「いくらPVを稼いでも書籍化を果たさなければ収入ゼロ」という「小説家になろう」というサイトは、魅力が減少する傾向にあります。

今後広告費のデジタルシフトにより、ネット小説投稿サイトに広告を出稿する企業がさらに増えていけばより競争は激化する傾向に拍車がかかるのではないでしょうか。

パイの大きくなった広告料の争奪戦ともなれば、カクヨムやノベルアップはより思い切った手法で、なろうのユーザーを切り崩して自らのサイトへ取り込もうとすると推測できます。

また新聞社サイトでも有料記事が増えているように、有料小説も増えてくるかもしれません。

フリーミアム(コンテンツを無料で提供し、広告料で運営しているネットコンテンツ)の崩壊はちょっと前から言われていましたが、ネット小説にもその流れは確実に訪れるでしょう。

その時、「小説家になろう」が今のように「阿部寛のホームページ」並みの化石のようなサイト構成で、「投稿者がいくら頑張っても書籍化出来なければゼロ円還元」というビジネススタイルを貫けるか。

一人のアマチュア作家として、興味はつきないところです。

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