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誰のものかもわからぬバスマットの行末やいかに

マンションの敷地内に、桜の木がありまして。

その枝に、数か月前からバスマットらしきものが引っかかっているのがずーっと気になっているんです。夫が。

そもそもそれの存在に最初に気づいたのも夫でした。
数か月前、まだ桜のつぼみがちらほらと見え始めるころ、窓の外を眺めていた夫がそれを見つけました。

「あれ、誰かが落としたのかな」

見れば、桜の枝に、黒っぽいバスマットらしき(らしき、というのはいわゆるラグのようにも見えるしそうじゃないかもしれないので)ものが引っかかっていました。
おそらく上階の誰かが、ベランダで干していたのが落ちたのでしょう。

まあ、そのうち、持ち主が回収するだろう。

私も夫もそう思って、気にも留めていなかったのですが、それから何日経っても回収される気配がありません。
まあ、それが引っかかっているのは2階あたりの枝で、取りに行くにも難しい場所ではあります。
しかし、おそらく持ち主はわかっているはずなので、管理会社に電話すれば何とかなるはず。
それに、2階の住人も、窓を開ければバスマットがそこに鎮座し続けているというのも少々目障りだと思うんですよね。(幸いうちは3階で、見下ろさないと見えない位置なのでそこまで目障りではないのです)
それこそ管理会社に電話すれば、回収してくれると思うのですが、2階の住人も、持ち主も、自分でどうにかする気ないようで、マットはずーっとそこに引っかかったまま、そのまま放置されていました。

季節は過ぎ、桜が満開になってもそこにマットがどんと引っかかっていて、風情もへったくれもありません。

「あれ、いつまであそこにあるのかな」

窓の下を見下ろしながら夫が言います。

「いい加減、回収すればいいのに」

そう言いつつも、夫は自分が管理会社に電話する気はないようでした。
そもそも自分たちのものじゃないし、気にはなるけどいつも目の前にあるわけじゃないから、自分がそこまでする必要性を感じないのでしょう。
まあ、かく言う私も、同じ理由で静観しているので、似たもの夫婦なのでしょうね。

そして桜が散って、緑の葉っぱに枝が覆われる季節になっても、マットはまだそこに引っかかったまま所在なさげに鎮座しています。

ちなみに、今日はものすごく風が強くて、そこらじゅうの枝が強風でざわざわとざわめいていて、いろんなものが外を飛び交っています。

マットが引っかかっている桜の枝も例外なく、強風にあおられて、これはひょっとしてこの風であのマット、飛んでいくのでは?

そう期待しましたが、あいにく、マットは引っかかっている枝にかえって強く押しつけられるばかりで、一向に飛んでいきそうにありません。
逆方向からの風だったら飛んでいったかもしれませんが、ますます枝に絡みついただけだったようです。

あのマット、このまま夏も秋も冬も越してしまうのでしょうか。

いつか誰かが回収してくれるのをずっと待ち続けているマット、このまま経過を見守りたいと思います。



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