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楽しく身につけたい、食べることの安全を。 《食卓の安全 study-5 日本編-後編》

《study-4》まで農薬を例に賛否両論さまざまな状況を見てきたが、最後は経済・外交面から見たショッキングな安全崩壊の話しを紹介したい。細かな真偽はさておいても説得力がある。これを知り、私は初めて我が家なりの食品安全基準を考えた。シリーズ最終回は、自分の考えや対策も含めて締めようと思う。

■外国企業が日本の農業をターゲットに

経済・外交面からの食の安全崩壊とは何だろう。
この件に詳しい国際ジャーナリスト・堤未果氏は、海外のグローバル企業が日本の農業支配に乗り出していると語っている。しかも日本は企業が進出しやすいように規制を緩和しているとも。同じ視点で危険視するジャーナリストや研究者は多い。

進出企業はまず、生産者に農薬と遺伝子組換え作物(タネ)をセット販売する。除草剤を撒いても枯れない遺伝子組換え作物は、翌年には耐性化して効かなくなる。こうして除草剤農薬の量を年々増やし続ける仕組みで囲い込むのだ

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外国企業は日本の農業マーケットから効率よく利益を上げたい。だが企業の利益が優先されたとき、私たちの安全は誰からも保障されなくなるのだ。これは決して極論ではない。
なぜならこの企業のビジネスモデルが、他国の農業遺産を崩壊させた実例があるからだ。環境破壊、地域の特色ある農作物の消滅、多くの農業失業者。代わりに発展したのは、大量の農薬散布に耐える遺伝子組換え作物、畜産動物だと言われている。

もちろんこの説にも、異論や反論説があることを付け加えておく。


■スーパーの品揃えの変化に怖くなる

外交政策から食の安全が崩される危険を知った私は、当時、締結したばかりの日米FTA条約に嫌な感じを覚えていた。アメリカから、国内でだぶついている遺伝子組換えトウモロコシ、発がんリスクで危険視されている牛肉・豚肉が大量に入ってくる。EUでは輸入禁止されているはずの牛肉(成長ホルモン投与牛)だ。

この時期は噂が先行し、事実に尾ひれはつくものだ。でも関税問題を含め、日本にとっては何から何まで暗くなるような内容だった。

やがてスーパーマーケットの品揃えが、少しずつ変化し出した。精肉コーナーの主役はアメリカ産だ。立派な塊肉が連日の安売りフェア! それに比べて国産肉の貧弱なこと。「超極薄切り!」と銘打って、ひらひらの肉しか置いていない。

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日に日にこの光景が顕著になり、ああ、とうとう来たなと身震いした。安い輸入品が大量に入れば、国産はピンチだ。国内の生産業者に悪い風が吹いている・・・。

■自分だけの安全基準を楽しく作る

安価なものは、それなりの理由がある自然の中で手間暇かけて育てられてはいないだろう。その真相を探ろうと検索しても、噂レベルの情報が多すぎる。

反対に「安全」「品質が良い」ものを徹底的に検索すると、「食べチョク」という野菜や魚肉類の生産者直送サイトが見つかった。ここでは農業、漁業、畜産業などさまざまな生産者の方々が、商品を売るために写真付きで自慢の育て方や工夫、特徴などを掲載している。

「何が危険か」を探るより、「何が安心か」を見つけるのは楽だった。生産者さんの掲載ページを読むだけで、次々と新しい知識が積み上がる。
農薬も肥料も全く使わない自然栽培
の生産者さんの考えや、最低限の薬剤を管理して使う生産者さんの管理体制と品質など、多くの事例が比較できる。

▼下に生産者さんの掲載記事から少し抜粋してみた。
ほんの一例だが、こんな記事が
写真付きで更に詳しく読めるのだ。

平飼いプレミアム有精卵

雛から性別関係なく、オスメス一緒に平飼いで飼育し、朝から夕方までは鶏舎と外を自由に行き来きる環境で飼育しており、自然に近い飼育方法を取っています。
玄米、糠、おから、鰹節、煮干し・牡蠣殻・唐辛子を配合した自家配合のオリジナル飼料と、野菜や草類を与えることで、安心安全な卵が産まれます。
(配合飼料0%)(NON GMO) (抗生剤やホルモン剤の投与なし)
無化学肥料、無畜産系肥料のみを使用した無農薬野菜

○○循環農法では、化学肥料や牛ふん、鶏ふんなどの畜産系の肥料は使用しません。それらを使用すると、野菜に硝酸態窒素が大量に発生します。硝酸態窒素は体内でニトロソアミンという強力な発ガン性物質に変化します。○○農園ではそれらを使用していないため、硝酸態窒素の発生は市販の野菜の1/4程度(つくば分析センター検査結果)と安心・安全です。


「食べチョク」はこういった生産者さんから農作物や肉などが買える楽しみがあり、知ることや勉強することが楽しくて仕方ない

私はこうやって、米や穀類、野菜、精肉類、卵、加工食品の自分なりの安全規準を設けた。それに見合う品があれば通販、スーパー、個人商店とどこでも買う。

ここで私の規準をはっきり書かないのは、知識が追加されればまた変わるだろうと思うからだ。まずは自分が納得できるレベルで始めることが肝心。


■「わからない」ことはリスク要素として受け止めたい

いよいよ最後の〆に入ろう。『図解でわかる14歳から知る食べ物と人類の1万年史』の著者・大嶋賢洋氏は、自身のYouTubeチャンネルでこのように語っている。
人類が自然の作物を食べて1万年になる長い歴史の中で、農薬の歴史はわずか70年。人体に摂取してどのような影響があるか、この短い期間ではまだわからない。


大嶋賢洋氏が言うように、例えば農薬を人体に摂取し続けた場合、影響が出るのは5年後か10年後か20年後かもしれない。農薬は食中毒のように、すぐに異変が表れるわけではない。年数が経てば因果関係を特定するのは不可能だ。それは添加物、遺伝子組換え、ゲノム食品でも同じである。

私はこの考えに共感せざるを得ない。わからないものにはリスクもある。しかも危険因子の可能性が高いと踏めば、なるべく避けたいと思ってしまう。

国が安全を宣言しても不安になるのは、この部分だ。あくまで個人的見解である。

私のような一介の消費者が考えるには、この辺りが限界だろう。
出来れば実際に生産現場の声や専門家の声を聞き、もっと本質に近づきたい。

そのチャンスが得られたら、またこの続きを書こうと思う。