お手紙

 ハガキや封筒のお値段がまた上がるそうですね。日常的にそれらの通信手段を使うことはほぼなくなった現代ですが、この寂しさはなんなのだろうかなと自分でも不思議です。
 私は子供の頃からメールがあり、LINEがあり、通信手段に紙を使うことはとっくにナンセンスになった時代を生きています。そんな私でも祖父母と連絡を取り合うためには手紙を使います。祖父母は戦争が終わった直後あたりに生まれた世代です。人によってはスマートフォンを使いこないしていてもおかしくない世代ですが、彼らはスマホどころかガラケーも電話機能以外は使えない人でした。それは決して珍しいことではなく、彼らとその周りの人どうしは固定電話と対面でコミュニケーションは取れていたしそれが彼らの世界の全てだったのです。
 大して筆まめでもなかった彼らなので手紙ともしばらくは無縁でしたが、ある時彼らのコミュニケーションに手紙が必要になりました。それは認知症と介護です。電話のような即時性の必要なコミュニケーションは不可能になりました。となると遠隔地に住む私が彼らと交流する手段は手紙となりました。記憶しなくても見直せる、自分のペースで書ける、わずかな絵や文字の形で気持ちが伝えられる。手紙には手紙の良さがあったものです。
 そういう意味で、いよいよその価値観が歴史の地層に埋もれていくようになったなとなんとなく感じてしまうニュースでした。多分電報やポケベルやその他諸々がそうして地層に埋もれていって化石になっているのでしょう。祖父母たちの骨と共に埋もれていく予感をなんとなく感じたニュースでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?