非認知能力と”主体性”の評価の関わり

6/14に香川県教育センターの研修を活用し、岡山大学教育推進機構の中山芳一先生の講演と、見通しや振り返りに関するワークショップに参加しました。新学習指導要領のもと、「主体的に学習に取り組む態度」(以下、”主体性”)の評価についてはその難しさや方法がよく話題になります。今回の講演を通して、なぜ”主体性”の評価が必要なのか、どのように評価すればいいのか、多くの知見を得ることができましたので、自分の実践にも落とし込んでまとめたいと思います。

①非認知能力とは

読み書きそろばんや英語力などテストで点数化できる力が認知能力とよばっる一方で、非認知能力とは、テストでは点数化できない力であり、忍耐力、自制心、回復力、楽観性、協調性、社交性など、多岐にわたります。
中山先生はこれらの能力を以下のようにグルーピングしています。

自分と向き合う力(自制心、忍耐力、レジリエンス…)
自分を高める力(意欲、向上心、自信、自尊感情、楽観性…)
他者と繋がる力(コミュニケーション力、共感性、社交性…)

このような非認知能力を新学習指導要領の3観点に落とし込むと、
「知識・技能」は認知能力を
「思考・判断・表現」は認知能力と非認知能力を
「主体的に学習に取り組む態度」は非認知能力を
評価すると言えます。

非認知能力を伸ばすためには、以下のようなことが大切です

  1. 感情、思考、行動パターンを生み出す価値観、自己認識、行動特性の変容を意識づける。(性格や基本特性は幼少期以降変容しない)

  2. 学校でどのような生徒を育てたいか、非認知能力に当てはめて具体化、言語化し、共有する。

  3. 伸ばしたい非認知能力に関わるギミックを意図的に用意し、生徒が学ぶ場をデザインする。(粘り強さが必要な問題を用意、2人以上の協力が必要な活動の設定)

  4. 目標に向けて生徒が現状を理解するとともに、教員が必要な支援を考える。

これらの中で、授業やテストにすぐにでも取り入れ、改善していくことができるのは3、4だと考えます。

②非認知能力の育成を取り入れた”主体性”の評価

今回の講演で学んだことを自分の実践に落とし込むとどうなるか考えてみました。

例えば、こちらは英語コミュニケーションⅠで実施した音読テストの自己評価シートです。”主体性”の評価項目に家庭学習に関する自己評価が含まれているため、生徒に練習の内容と成果を記録させました。

利用した自己評価シート

当初、この評価を通して「生徒が家で音読をしてほしい」「音読を通じて文章を覚える有用感や達成感を感じてほしい」という狙いでした。生徒は熱心に練習しており、その点においては目的は達成できました。

一方で、音読があまりできなかった、覚えきれなかった、というネガティブなコメントを残している生徒も多数いました。そのような生徒は、この評価を通じて成長できるでしょうか? いや、できません。 正直にできなかったとコメントし、それが教員にとって数値化され、終わりです。生徒が現状を理解し、今後に向けた方策を考える機会にはなっていません。むしろ、漠然と「できなかった」という負の感情だけが残るのではないでしょうか。

そこで、以下のような自己評価を盛り込んでみます。

自己評価シート2

漠然と「できなかった」「英語が苦手」「自分は怠惰」という感覚は生徒の自己肯定感の低下にもつながりますが、自分の改善すべき点が具体化され、改善すべきは一部分だけだと分かれば気も楽になるのではないでしょうか。
また、何が原因でできなかったのか精査でき、部活で忙しくて取り組めず、自己回復力にCがついたのであれば、次回は「部活で忙しいときはできなくても仕方ない。いつできるか考え、長期的な計画を立てよう」とか、英語が苦手で、楽観性にCがついたならば、「楽しくできる方法を考えよう、周りの人はどうやってしたのか聞いてみよう」と解決策まで考える手助けとなります。

また、教員にとっても、楽観性がCの生徒が多いならゲーム性の高い補助教材を渡す、協調性がCの生徒が多いなら授業でペアでの音読を行い、その有用性を示した上で休み時間に取り組むよう促すなど、次回以降に必要な支援やギミックを考えることができます。

このように、非認知能力という枠組みに当てはめることで生徒と教師の両方にとって課題が具体化され、振り返りの効果を高めることが期待できます。

③反省と今後の展望

今回の講演を聞いて、”主体性”の評価について自分がいかに方法論に囚われていたか、生徒につけさせたい力は何か漠然と考えていたかを実感しました。
「自律した学習者になってほしい」「計画的に学習してほしい」と常々思っていますが、どのような学習者が自律しているのか?計画的な学習にはどのような力が必要か?と自問自答する機会となりました。中山先生は「見えにくいプロセスを可視化するレンズ」という言葉を用いていましたが、まさに非認知能力は指導の根幹にある漠然とした思いにフレームを与えてくれました。

また、目標・指導・振り返りは一体でなければなりません。言語活動やパフォーマンステストを設定する際はその裏に「どのような力をつけさせたいか」を考えているはずです。これまで自分は以下のように授業構成を考えていました。

  1. 単元を通じてつけさせたい力を決める

  2. パフォーマンステストの形式を考える

  3. 知技・思判表の評価を考える

  4. 3と整合性が取れるよう主体性の評価を考える

  5. 各時間、パートの指導を考える

今後は、以下のように授業構成をデザインしていきたいと思います。

  1. 単元を通じてつけさせたい力を決める

  2. パフォーマンステストの形式を考える

  3. 知技・思判表の評価を考える

  4. 生徒が3で良い成績を取るために必要な非認知能力は何か考える

  5. 必要な非認知能力を生徒が活用したり必要性が実感できるようなギミックや評価方法を考える

  6. 各時間、パートの指導を考える

非認知能力というフレームワークを活かして、目標と一致した、生徒を高める”主体性”の評価を行っていきたいです。

最後に、中山先生の本をご紹介します。まだまだ非認知能力についての理解が浅いので、こちらの本を読んで理解を深めたいと思います。

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