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スピーキングにおけるscaffolding 基礎の基礎

3学期はスピーキングを中心に授業を組み立てました。比較の単元において、「理由とともに自分の意見を述べる」ことを目標に、授業冒頭の10~15分にペアでのsmall talk(一問一答形式)を継続的に行いました。

私の勤務している高校では英語が苦手な生徒が非常に多く、粗っぽくペアで会話をしてみよう…と投げかけても黙り込む生徒がほとんどです。そのような中で生徒が楽しみながら英語で話せるよう、様々なscaffolding(足場がけ、支援)を行いました。これまで様々な書籍や実践で紹介されており、先生方も当然のように行っているものばかりのはず。目新しさはありませんが、初心を思い出すつもりで読んでいただけたら幸いです。

①モデルと語群を提示する

毎回、スライドやロイロノート、ワークシートを用いて下記のようにモデル文と語群を提示しました。下線部を自分の意見に合わせて英語に直すよう指示します。

モデル文や語群の提示のメリットは以下の通りです。

  • 覚えてほしい表現を明確にできる。今回であればI like / think ~ because …やbetter, the bestなどの比較表現。

  • まずはモデルの真似をすればいいという安心感を与えられる。

  • 理由やアイディアを考えるヒントになる。

  • 語群を参考にできるので聞き手も理解しやすくなる。

ゼロから英文を生み出すことに対する生徒の心理的なハードルはかなり高いようでしたが、選べばいい、一部分を考えればいいとなれば、英語が苦手な生徒も積極的に取り組んでいました。また、机間巡視しながら「これって英語でなんて言うの」と聞かれた表現は板書して積極的に全体にシェアしました。これもまた、他の生徒のアイディア出しのヒントにしてほしい、「自分の言いたいこと」を実現させてあげたいという思いからです。

②ペアを入れ替え何度も

一度のsmall talkで、ペアを変えて4,5回は発話する機会を設けます。以下の2パターンを使い分けて席を移動させ、できる限り多くの人と会話できるようにしました。

ペアを何度も入れ替えるメリットは以下の通りです。

  • 隣の席の人とペアワークしずらい生徒たちへの配慮。人間関係はこちらが思っている以上に複雑で大変。苦手なペアとずっと固定は大きな負担。

  • 英語が苦手で、自力で英文を作るのが難しい生徒は、ペアの子の発話からヒントを得たり、真似したりすることができる。4,5回目には言えるようになることを目指せる。

  • 3回目以降はモデル文を見ずに、リアクションをつけて…など、段階性をつけることができる。

  • ペアの入れ替え時に小出しにフィードバックを行うことができ、回数を重ねるごとの生徒の成長を促せる。

  • 教員が多く机間巡視できるため、後に全体に披露してもらう生徒を丁寧に選んだり、全体に共有すべき誤りを見つけたりすることができる。

来年度は英語の授業内だけでも高頻度で席替えすることも視野に入れています。席替えアプリ等を活用して手間を減らし、生徒が授業前にスムーズに移動できるようであればぜひ実行したいです。

③ゲーミフィケーション

毎回ではありませんが、以下のように語群を選択肢にして、small talkをビンゴ形式にしました。相手の「理由」のところで用いられた動詞に応じて丸をつけていきます。

こちらの想像以上に生徒は盛り上がり、「ビンゴ!」と大きな声が挙がりました。相手の発話を聞き取らなければ丸をつけられないため、「聞く姿勢」を持たせることにつながります。しかし、これは外発的な動機づけに過ぎないため、テーマ設定や内容の工夫から、より内発的な動機を引き出したいものです。ビンゴ形式に頼っているうちはまだまだパターンプラクティスの域を出ないと感じています。

④後日同じテーマでもう一度

同じテーマを繰り返し扱うメリットは以下の通りです。

  • ターゲットとなる表現の定着を図ることができる。

  • 前回用いた表現を思い出し、発話できれば生徒は成長を感じられる。

いつも「分からない」と一蹴していた生徒が「これ何て言ったらいいんだっけ」と前向きに言っているのを聞いた時、心の中でガッツポーズしてしまいました。今回の単元では、以下の「今朝何時に起きた?」というテーマを3回繰り返し用いました。

応答の中でターゲットとなる基本的な比較表現が網羅できることと、日が変われば起床時間も(多少)変わるため、繰り返し用いても生徒は飽きにくいと考えました。3回目にはモデル文を見なくても発話できる生徒が多くなっていました。

⑤「できない」ではなく「どうしたらできるか」

以上が今学期意識的に行ってきたscaffoldingや工夫ですが、宣言通り目新しいものはなかったと思います(笑)
私自身、1,2学期は「この子たちは英語が苦手だからスピーキングは難しいよなぁ」と半ば諦めていました。しかし、「できない」ではなく「どのような支援があればできるか」という発想で初心に戻って授業作りに取り組んだところ、生徒の授業への取り組みは明らかに改善しました。「モデルを真似することはできる」「選択肢があればできる」「ペアの助けがあればできる」「仲の良い子との安心感の中であればできる」など、いろいろな「できる」があります。生徒の実態をよく把握し、適切な支援を行いたいものです。そして次は、「どのように支援を外していくか」を考え、生徒のステップアップを目指します。

ちなみに、手軽にスピーキング活動を授業に取り入れたいという先生には上山晋平先生の書籍がオススメです。生徒が主体的に取り組むためのscaffoldingや工夫、手軽なものから濃密なものまで、さまざまな言語活動が紹介されています。


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