見出し画像

「振り返りシート」の在り方

 近年、授業において「振り返り」を行う場面が増えてきているように感じます。ふと気になって、Twitterでアンケートを取ってみると、1/3の先生が振り返りシートを活用していました。

 指導の効果を高めたり、主体性の評価に活用したりするなど、様々な目的や効果が期待される一方で、「振り返りシートを書くことが目的化している」「時間の無駄」などの声もよく耳にします。 
 先日、同僚の先生との会話の中で「授業はプランニングの段階でほとんど終わっている。自分の発問で生徒がどう思考するか、どう反応するかを綿密に予測することが大切」という言葉を聞き、大いに納得しました。これは振り返りの時間にも当てはまり、生徒にどのように振り返りをさせたいのか=振り返りの目的は何なのか(=授業の目標は何なのか)を教員が先んじてしっかりと考える必要があります。

⓪自分の実践

 私自身、昨年度までは毎時間、授業の最後にgoogle formsやExcelの共同編集を用いて生徒に振り返りを書かせていました。

 生徒がどこでつまづいているか明確にしたり、良いコメントや質問は次の時間に全体にフィードバックするなどして、「生徒と一緒に授業を作っている」という感覚がありました。しかし、生徒の英語力向上に効果があるのか懐疑的になり、また、終盤には振り返りが作業になっている生徒もいたため、今年度は一旦やめました。
 この振り返りシートを導入には、「生徒が学習場面でスマホやアプリを使うことに慣れさせる。ICTの活用事例を作る。」という目的もありました。「課題探究でコミュ英のようにGoogle Formsを使った学習管理について探究したい」という生徒もいたため、目的は少しは達成できたかもしれません。私が掲げた目的は英語教育の本質から外れていますが、他にも振り返りシートを活用する様々な目的があるはずです。目的が変われば手段も変わるはず。目的に応じた振り返りシートの例を考えてみたので、次項より紹介します。荒削りなものばかりですので、ぜひご意見をお聞かせください。

①単元の目標と到達度を認識させる

 以前、「見通しなくして振り返りなし」という言葉を聞いた事があります。ぼんやりと毎時間振り返りシートを記入するのではなく、単元の目標や最終的な評価ルーブリックと合わせて提示することで、ゴールに自分が近づいているか否かを認識しやすくする事ができます。また、合わせて家庭学習の計画もできるようにすることで、「自己調整力」につなげることができるのではないでしょうか。

 ちなみに…この形の振り返りシートを使うと、自らの授業づくりのプレッシャーも大きくなると思います。バックワードデザインをしなかったり、最終活動と普段の授業の乖離があれば、生徒は振り返りがし辛く、自らの授業のチグハグが可視化されますので(笑)

②学習をメタ認知させたい

 生徒が自らの学習プロセスや現在の自分の力をメタ認知することは非常に大切です。そこから家庭学習につなげ、PDCAサイクルが回せるようにすることは、自律した学習者の育成には欠かせないことです。しかし、メタ認知をするためには、授業や学習内容を一歩引いた、抽象的な視点から見る必要があります。その視点として、「非認知能力」は非常に有効であると考えます。以下の記事の「②非認知能力の育成を取り入れた”主体性”の評価」では、非認知能力に結びつけた振り返りシートの例を載せています。こちらは毎時間の振り返りというよりは、単元や学期の最後に行うのが適切かと思います。

他にも、KPT(Keep続けたいこと, Problem課題, Try次回の工夫)やYWT(やったこと、分かったこと、次にやること)などの観点でまとめさせることもできるかと思います。

③授業内容を定着させたい

 授業の最後に、学んだことを自ら言語化することは、記憶の定着にも効果があるのではないでしょうか。しかし、例えば比較の授業で「原級はas asだと分かった」という振り返りをして、果たして本当に有意義な定着に結びつくのかは疑問です。振り返りシートの記述だけでなく、発問も振り返りの機能を果たせるのではないでしょうか。
 文法指導においては、授業の最後にその時間の要点を押さえた文法問題を出題し、生徒同士で解説させる事が考えられます。教師の説明(解説)を自らの言葉で発話できれば、生徒は自分が当座理解できていると確認できます。
 また、英コミュなどのReadingにおいては、最後に教科書本文の要点をまとめる発問を出すことが考えられます。

 こちらは”コミュ英”で使用していたCROWNⅠ Lesson5で使用したワークシートです。一見表現活動のように見えますが、実際は本文の重要な2〜3文を抜き出すことが求められ、2,3分もあれば完成します。「この英文が完成すれば、本時の内容は理解できているということです」と声かけをしておけば、生徒は自分の理解度を振り返る事ができると同時に、簡単なアウトプットやスキャンリーディングの機会となります。英作文の形でなくとも、英問英答や要約の穴埋めも考えられます。
 このように、振り返りにおいて生徒に「今日は〇〇を学んだ。よく分かった。」という思考をさせたいのであれば、シートへの記述よりも発問の方が効果的であると考えます。しかし、この方法を行うためには、教員が1時間の中で生徒に特に理解してほしい箇所を明確にし、起承転結の流れをしっかりプランニングする必要がありそうです。

④まとめ

 「振り返りシート」とは生徒のその時間の学びを可視化したものですから、自分の指導が伝わっているか、プランニングが上手くいっているかを見直す、「教師にとっての振り返り」にもなり得ます。授業の最後に漫然と記述作業の時間を設けるのではなく、振り返り中も生徒が思考を巡らせるような、効果的な振り返りシートを作成したいものです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?