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書籍発売まであと7日 『ハイパフォーマーの睡眠技術 Sleep Skill』 〜序章〜 無料公開

昨晩の睡眠は87点、深い睡眠が2時間以上とれて絶好調のニューロスペースの小林孝徳です。

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さて、いよいよ『ハイパフォーマーの睡眠技術』の発売まで1週間を切りました。前回の「はじめに」に続き本日は「序章」を無料公開したいと思います。
序章では、ニューロスペースが睡眠改善に関わったNTTデータの西村部長の睡眠改善の事例、学校現場での睡眠教育『みんいく』の紹介、睡眠負債チェック質問表、そして睡眠がいかに私たちの生活を充実させるものか?を解説しております。睡眠改善の事例をもとに、特別なことをしなくても睡眠の技術で眠りは良くなるしパフォーマンスの向上につながるということに是非共感をいただけたら幸いです!

※そして本日からKindle版も発売予約スタートしました!

序章】
良い睡眠がもたらすもの

質の良い睡眠の効果
「20年ぶりに朝食が喉をとおるようになった」―これは私たちのプログラムを実践したNTTデータでシステム開発に携わる事業部の部長、西村さんの改善例です。西村さんは、週末に寝溜めをする生活をしていましたが、それを解消し、起床時間を揃えるようにリズムを整えました。その結果、「食欲が湧かなかったため20年以上朝食を摂らない生活が続いていたが、1ヶ月の睡眠習慣の改善で朝食を食べられるようになった」といいます。週末の睡眠習慣やリズムを整えただけで、20年間食べられなかった朝食を食べられるようになったのです。
西村さんの実例について詳しく見ていきましょう。
西村さんの悩みは、帰宅後に、自宅のソファーなどで寝てしまうということでした。仕事で疲れきってしまう平日は、ベッド以外の場所で寝てしまい、肝心な夜の眠りが浅かったり、次の日の朝なかなか起きられなかったりする日が続いていました。その睡眠不足のせいで週末はどっぷり寝溜めする生活。だるい身体を引きずって通勤する生活に終止符を打つため、まずは西村さんの睡眠データをしっかりとりました。その上で西村さんにアドバイスしたことは、起床時間を揃えることと、朝起きてしっかりと光を浴びることの2点だけです。「たったこれだけ?」 と思った人。そうです。たったこれだけで西村さんの眠りの悩みは帳消しになったのです。これらについてはのちほどたっぷりとご説明しますが、起床時間を揃えることも、起きてから光を浴びることも体の睡眠リズムを整える上で重要なこと。ちょっとしたテクニックを知っておけば、目に見える効果を実感できるのが睡眠なのです。

睡眠が良い効果をもたらすのは、さまざまな場所で見ることができます。
平成27年度の文部科学省の調査によると、中学校の不登校児は全国で平均2・83%でした(平成29年度の調査では、3・25%に増加)。当時、大阪府にある堺市立三原台中学校では、全国平均よりも高かった不登校率を何とかしたいと思い、子どもの睡眠に着目しました。『みんいく』という手作りの冊子を制作し、子どもたちへの睡眠指導を開始したところ、1年間で不登校率を32%改善することに成功しています。この『みんいく』の活動は広がりを見せ、平成29年度からは、市を挙げての取り組みへと発展しました。現在ではハンドブックとして小学校低学年用、高学年用、中学校用の3冊に分けて配布され、子どもたちへの睡眠指導が行われています。私もこのハンドブックの制作に携わったのですが、上手に寝るためのコツやゲームやスマートフォンの睡眠への影響などがわかりやすく描かれており、睡眠改善をすることによって子どもたちの集中力や自尊心を高める効果も期待されています。徐々にですが、「正しい睡眠方法を教える」 という取り組みが教育現場でも行われつつあるのです。

睡眠改善によるさまざまなメリットはスポーツの現場でも見てとれます。一例として、バスケットボール選手の睡眠改善実験を紹介しましょう。
スタンフォード大学で行った「睡眠が身体的なパフォーマンスに及ぼす影響について」の研究によると、選手たちに適切な睡眠指導を行った結果、スリーポイントシュートの得点率が9・2%アップしたことが報告されています。

この実験では、選手たちに毎日10時間眠るよう指示を出し、5週間後のデータと実験前のデータを比較しました。スリーポイントシュート率だけではなく、フリースローの成功確率も9%向上、さらには、80メートル走のタイムは0・6秒短縮したといいます。
ここで紹介した実例はほんの一部ですが、睡眠改善によるメリットは数え切れないほど存在するのです。

気づかないうちに睡眠負債を 溜め込んでいませんか?
さて、いきなりですが、ここでみなさんに答えていただきたい質問を用意しました。直近1ヶ月を振り返って直感で答えてみてください。これらは、睡眠負債が溜まっているかどうかをジャッジする質問です。「負債」とあるように、睡眠負債は借金の概念からきている言葉で、睡眠不足によってあらゆる健康上の不調を引き起こすことを指します。

「睡眠負債」の言葉の由来はお金ですが、睡眠とお金とは違う点が2つあります。1つは、一括返済ができないこと。2つめは貯金ができないことです。睡眠は「リズム」が重要なため、土日にたくさん寝てリセットすることはできず、たくさん寝れば明日の徹夜に備えられるという簡単な話ではないのです。

前述した質問ですが、YESが多いほど睡眠負債が溜まっている可能性が高くなります。では、1つずつ質問を解説していきましょう。

【質問1】ベッドに入ってから1分以内に寝つくことがある
まずは1つめ。「1分以内に眠れるのは、寝つきの良い証拠では?」という声が聞こえてきそうですが、まったく逆です。すぐに眠れたほうが良いわけではなく、1分以内に眠れてしまうのは、慢性的な睡眠不足の動かぬ証拠。睡眠負債が溜まっているという1つの目安になります。

【質問2】平日と休日で睡眠の長さや起きる時間が極端にずれている
2つめの「平日と休日で睡眠の長さや起きる時間が極端にずれている」に当てはまった人も睡眠負債を抱えている可能性があります。
たとえば、朝6時に起きて23時に就寝する生活を送っている人がいたとします。しかし、忙しい時期が重なり、イレギュラーに深夜2時に就寝して6時に起きていたりすると、その日は4時間しか睡眠時間が確保できていないことになります。こういった生活を送っていると、ついつい土日も寝すぎてしまいがちです。休日、寝始める時間は深夜2時と同じだけれど、起きる時間が正午になった場合、その日の睡眠時間は10時間。ぐっすり眠ってリカバリーしたと思ったとしても、睡眠負債は返済できません。次の週の平日には強い眠気に襲われ、本来であれば出せるはずのパフォーマンスが仕事中に出せなくなる可能性が高くなります。

【質問3】無意識のうちに寝落ちすることがある
最後の質問、気づいたら数秒寝ていたという経験はありませんか? 3つめの質問は、「マイクロスリープ」と呼ばれる現象です。5ページでも少し触れましたが、これは慢性的な睡眠不足によって起こります。身体から「睡眠時間が足りていないですよ」とSOSが出され、無意識にスリープ状態に陥ってしまう状態を指しています。パソコンのデリートキーに指を置いたまま寝落ちてしまい入力していた文章が全部消えていた。ドライバーであれば、気づいたら事故を起こしてしまったなど、取り返しのつかない大きな事故にもなりかねません。


薬や道具に頼らなくても 睡眠の質は上げられる
会社員時代、私も睡眠負債によって悩まされていました。
10秒前に上司から言われたことが思い出せない。何か言われるたび、人格を否定されているのではないかとネガティブに考えてしまう。ケアレスミスが増え、「なぜ、同じ間違いを何度もするんだ!」と叱責される。細かいミスが積み重なり、同僚からの信頼もどんどん失われていきました。
今思えば、きっと親身な気持ちで言ってくれていたアドバイスさえも「私の粗を探して指摘をしている」と悪い方向に考え、悪循環から抜け出せなくなっていたのだと思います。次第に仕事中の集中力が低下していき、クオリティも落ちました。そして、心に余裕を持てず、うまくコミュニケーションがとれなくなっていきました。
そんな悩みを抱えていたある日、朝からやる気が自然とみなぎり、仕事がスムーズに進んだと感じた日がありました。思い返してみると、その前の晩、とても良い眠りがとれていたことに私は気づいたのです。大げさに聞こえるかもしれませんが、私はこの時の衝撃が忘れられません。明らかに集中力がアップしたと実感し、「やっぱり睡眠はとても重要なものだ」と直感した瞬間でした。気になって睡眠のことを調べてみると、だいたい5人に1人が睡眠不足で困っていることがわかりました(図1)。

当時、睡眠の悩みを解決する主な方法は二択でした。1つは医師の診断を受け、適切な睡眠薬を使っていかに睡眠のストレスを軽減していくかという医療分野での解決。もう1つは、とにかく眠りを良くするための高級な寝具を使う道具面での解決でした。しかし、私は睡眠を改善するにあたって、薬に頼ったわけでも、高級な寝具を使ったわけでもありません。薬や道具には頼らず、自分の適切な睡眠方法を知り、光や体温、食事のコントロールをしてリズムを整えていったのです。医療分野の薬、道具である寝具に頼る前に光や体温、食事のコントロールなど自分で簡単にできることで睡眠は改善できる―実体験をとおして知ったこの事実は、私に希望をくれました。しかし、同時に、こういった本質的な睡眠改善の仕組みが社会にまだまだ浸透していないことにも気づきました。
このことをきっかけに睡眠改善の仕組みを世の中につくろうとニューロスペースを立ち上げたのです。

多くの企業が 今、睡眠に注目している
現在、さまざまな企業が睡眠に注目し始めています。ありたがいことに弊社にもたくさんの睡眠セミナー開催の依頼をいただいていますが、6年前の起業当時はもちろん、つい最近までは、まったくそんなことはありませんでした。2013年に起業後、事業が軌道に乗るまでは自分がやっていることが正しいのかどうかがわからない状態が続いていました。
貯金が100万円にも満たない状態で起業したため、早々に資金の余裕はなくなりました。水道代や電気代がもったいないと思い、家のお風呂には入らず月2000円で使えるシャワー室に毎日通って節約していました。睡眠ベンチャーなので、しっかり睡眠をとろうという意識はあったものの、精神的に不安で眠れないこともありました。
転機は、𠮷野家の河村泰貴社長との出会いでした。河村社長は、アルバイトから𠮷野家という大企業のトップにまで登りつめた人です。そんな社長自身が、現場時代に睡眠に苦しんだ背景から、睡眠のノウハウやテクニックこそ𠮷野家に必要だと考え、𠮷野家の店長集会で睡眠セミナーを実施するというチャンスをくださったのです。

𠮷野家社員のみなさんの働き方はそれぞれ異なります。
本社でデスクワークをしている人は朝起きて夜眠る日勤の生活。第一線の現場で牛丼をつくっている人はシフト勤務で働き、夜勤も発生します。店長やアルバイトなど役職によっても眠り方は変わってくる―これらのことを踏まえて、2016年の3月に大阪と東京で約800名の参加者を対象に睡眠セミナーを実施しました。睡眠セミナーの後は、ウェブアンケートを使って職種ごとに睡眠の悩みを可視化し、働き方によって生じる睡眠の悩みのソリューションを提供しました。「仕事帰りの電車で座った瞬間に眠気に襲われていたが、それがあまりなくなった」「寝たいタイミングで眠れるようになった」など、睡眠改善による効果が見えました。この𠮷野家への睡眠改善プログラム導入をきっかけに、さまざまな企業から睡眠に関する相談が来るようになりました。さらに働き方改革など、国の方針とも相まって、睡眠に対する社会的な関心は日々高まっています。

この本では、私が実際に携わってきた企業やビジネスパーソンの睡眠改善例を元に、個人や組織で使える睡眠ノウハウをたっぷりと紹介していきます。

睡眠は誰もが持っている最強の武器です。それを使わない手はありません。睡眠を自分なりにデザインすることで、パフォーマンスは確実にアップし、人生は豊かになる。私はそう確信しています。


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