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ミリオタデビューから28年の時を経て、再びこの地にやってきた。〜サンフランシスコ・フリートウィーク2022(前編)〜

今から約80年前、第2次世界大戦中に建造された軍用輸送船でサンフランシスコ湾をクルーズしながら、21世紀の戦闘機が飛び交うエアショーを見物。

たとえるなら、横浜のみなとみらいで航空ショーが開催されて、それを氷川丸に乗って海上から見てるようなもので、それを本当にやってのけてしまうのがアメリカ!

たかっかのミリタリー三昧アメリカ旅、トップバッターとなるアクティビティは、サンフランシスコ・フリートウィーク!!

期間中に100万人が訪れるといわれるほどの一大イベントですが、入念な事前リサーチにより、会場エリアまで歩ける場所にある、リーズナブルかつほどほどのクオリティの宿に泊まっているので、なんの心配もなーし。

朝から向かった先は、サンフランシスコの定番観光地でもあるフィッシャーマンズワーフのピア45に係留されている輸送船、「ジェレミア・オブライエン」。今日はこれに乗ってクルーズです!


通称「リバティ船」と呼ばれる、とにかく短期間で建造することを優先した簡素な輸送船。

当時は第2次世界大戦の真っ只中で、大西洋ではナチスドイツの潜水艦「Uボート」がイギリスの海上輸送路を襲撃し、多くの輸送船が失われていました。

そんな中、「沈められるペースよりも早く作ればいいじゃない」というマッチョな発想から、即席の造船所でも建造できる、単純設計の輸送船が生まれたというわけです。

5年間で2,700隻と大量建造されましたが、現存しているのは2隻のみ。

そんな歴史遺産を航海できる状態で管理し続けて、おまけにお客さんを乗せてクルーズしちゃうんですから、今も昔もアメリカという国の底力には驚かされます。

航海中の様子はこんな感じ(次の日に撮りました)。


クルーズといっても、80年前に戦争で使うために大急ぎで作られた輸送船なので、客室なんてものはありません。甲板上にチェア(プールにあるようなやつ)が設置されてる部分もありますが、あとは持参した折り畳みチェアを勝手に使ってね、というスタイル。

イスで自分の場所をキープする考え方はアメリカ人にもあるようで、僕は右舷後部の対空機関砲の横にイスを置いて、船内の探索へ。

普段は博物館として使われているので、もともと船内は見学できるようになっているのですが、まさか航海中のエンジンルームまで入れるとは思わなかった!

そしてこの船、なんと蒸気機関。

当時でもすでに時代遅れでしたが、新型のエンジンは軍艦向けが優先されていたのと、こなれた技術で製造やメンテが簡単だったことから採用されたそうです。

こんなエンジン、今やほとんど残っていないことから、映画「タイタニック」の撮影にも使われました。


ちなみに、乗組員の多くはボランティア。

自分の意志で、自分のスキルを、自分が大切だと思うことに提供して、自分もそれを楽しむ。

こういうのがアメリカには本当に多くて、これが本来のボランティアの姿だよなぁ…と考えさせられます。



出港は10時、エアショーはお昼頃からということで、まずはサンフランシスコ湾内クルーズ。

サンフランシスコの街並みを望みながら、フィッシャーマンズワーフ沿いを抜けてオークランド・ベイブリッジをくぐったところ。

「フリートウィーク」の主役ともいえる、海軍の軍艦も最高のアングルから見ることができます。陸からはこんな風には見えません。

はい!
ここでちょっとかしこくなれる、ミリオタ豆知識コーナー!


写ってる軍艦、1枚目と2枚目でだいぶ雰囲気が違うと思いませんか?
2枚目の方が未来的というか。

正解です!

1枚目に写ってるのは、いわゆるイージス艦というやつで、1980年代の軍事思想に基づいて設計された艦です。一方、2枚目はLCS(沿海域戦闘艦)というもので、2000年代の思想に基づく設計です。

1980年代は米ソ冷戦の真っ最中。当時のソ連は、超大国アメリカの大艦隊と戦うために「撃ち落としきれない数のミサイルで一斉集中攻撃(飽和攻撃)」という戦術を考えていました。

これに対抗して生まれたのがイージスシステム。高性能なコンピュータ・レーダー・ミサイルの組み合わせにより、同時に数百の目標を探知して、システムが判断した最も危険な相手から順番に攻撃できるというものです。

それまでは、それぞれの艦が自分で探知した目標のうち2つずつしか攻撃できなかったのが、イージス艦だと同時攻撃が可能になった上、他の味方と情報を共有して攻撃指示を出せるようになり、効率的な迎撃が可能に。

が、冷戦は終結し、そんな大海戦が起こることはまずなくなりました。そして現代の戦争はテロ組織や"ならずもの国家"が相手になり、イージス艦では強力すぎてコスパが悪い。

そこで、LCSのような小型艦が開発されました。

固定装備は最小限で、任務に応じて交換できるモジュールを搭載。ドローンやデータリンク(情報の相互シェア機能みたいなもの)を活用して、自分では対処しきれない相手は他の味方に任せたり、共同で対処したりします。

最高速度も80km/h以上。これは伊豆諸島や韓国への高速船として使われているジェットフォイル並の速さで、いわゆる不審船や麻薬密輸船の追跡なんかもお手のもの。

小型なので建造費や燃費も安く、省力化により人件費も安い!

…はずでした。

実際にはいろいろと開発が難航して開発費が高騰、そして某アジアの大国がソ連っぽいポジションになってきたりで前提も狂い、建造計画は半分ぐらい進んだところで打ち切られました。

ほら、こういうことを知ってると、日本がイージス艦やらイージス・アショアを保有する意味が分かってきますよね!ね…!?


そうこうしているうちに、お昼が近づいてきました〜。

エアショーが始まる前に、船内に来ているケータリングのタコスをいただきます。結構おいしかった!

朝はドーナツとコーヒーが用意され、ペットボトルの水や缶ジュースも取り放題でした。

船はエアショーの飛行エリアである、アルカトラズ島に近付きます。

映画「ザ・ロック」などの舞台にもなった、脱獄が最も難しいとされる刑務所の島。

今はツアーで上陸できる観光名所になっていますが、そんなことより低く垂れ込める雲が気になる…灯台のてっぺんすら霞んでます。


ともかく、エアショーの始まり始まり〜。

まずはアメリカ海軍アクロバットチーム・ブルーエンジェルスのサポート機、C-130J輸送機「ファット・アルバート」が上空のお天気チェック。

そして、エアショーのスポンサーでもあるユナイテッド航空が、自社が保有する最大の機体・ボーイング777-300ERでデモ飛行。

民間の航空会社がエアショーで旅客機の展示飛行をするのは、アメリカでもここだけらしいです。

通常は300人の乗客と、1万km近く飛行するだけの燃料を満載して飛行する旅客機ですが、エアショーならほぼ空っぽで飛べるので、旅客機とは思えない急旋回などしますが…船の位置取りが悪くて遠いよ(笑)


続いて、アメリカ海軍の最新鋭戦闘機 F-35CライトニングIIと、1960年代に開発された練習機 T-2バックアイによる編隊飛行。

こういう新旧混合の編隊飛行を「レガシーフライト」と呼ぶんですが、単純にミリオタとして胸熱なのはもちろん、退役軍人へのリスペクトの意味合いもあるようです。

エアショーによっては、第二次大戦・朝鮮戦争・ベトナム戦争など、それぞれで活躍した機体と現役機種を織り交ぜた、大規模なレガシーフライトが見られることも。

世界の自由と平和を守るため、各地で任務にあたるアメリカ軍。
尊い犠牲を出しながらも、国家に尽くしてくれた方々の存在を忘れることはありません。みなさん、温かい拍手を!

レガシーフライトの時は、ガチでこの手のアナウンスが流れます。

日本人の感覚からすると、ものすごく滑稽に聞こえるかもしれません。

でも、海外における軍人の位置付けってこれが普通で、どうして自衛隊は悪者扱いされるんだろう…と考えてしまいます。


ところで…。


「たかっか、いいカメラ持ってる割に写真ビミョーじゃね?」


そうなんです。

実は、この日はスマホしか持ってなかったんです。
(といってもiPhone 14 Proだけどね!ドヤ)

というのも、土日の2日参加なので、初日はクルーズを楽しみながら見ることに専念して、エアショーの流れをしっかり掴んで、2日目に陸から一眼でガッツリ撮ろうという作戦にしてたんです。

そして…。


文字通り、暗雲が立ち込めていました。

海の部分、奥の方は晴れてて明るいですけど、手前側は暗い。つまり、上空には雲がかかっています。そして、左側の陸地も霧に覆われています。

そう。アルカトラズ島がドン曇りだったのは、ちょうど飛行エリア周辺だけ低い雲がかかっていたからで、実はエアショーのプログラムは大幅削減。

そして、なんとか飛んでくれた飛行機たちも、安全基準により雲よりも低く飛ぶわけにはいかず、高いところを飛行するのが精一杯だったんです。

エアショーの最後を締めくくる、アクロバットチーム・ブルーエンジェルスも…。

遠くの晴れたエリアにその姿を拝むことはできましたが、すぐ雲に隠れて見えなくなってしまいました。

ここまでお見せしてきた機体も、写真なので拡大してそれなりに見れる状態でしたけど、実際はかなり遠くて、とてもエアショーを見てる感覚ではなかったのです(涙)

初っ端から、霧の都・サンフランシスコの前に撃沈。

感覚的には、横浜駅は快晴なのに、ベイブリッジだけ霧に覆われて見えない…ぐらいの、ピンポイント霧。

天気ばかりは仕方ないとはいえ、最も霧が少ないとされるシーズンで、天気予報もバッチリ晴れ、以前の開催時もいい天気…と、この辺はしっかり確認していただけにヘコみました…。

おまけに、霧の中の航海はめちゃくちゃ寒い!!
(自衛隊観艦式の帰路に似てる)

繰り返しますが、80年前の軍用輸送船なので、寒さを凌げるような場所は極端に少ないのです。とりあえずイスを撤収して、船内をウロウロ。

「はやくおうちに帰りたいよぅ…」と思い続けながら、17時過ぎに帰港。

寒いし、エアショーは不発だったし、陸も相変わらず曇ってるしで、テンションだだ下がりの中、安宿に向かって帰ります…。

なんやねん!

地元のヤンキーだかパリピ観光客だか知らんけど、チャラいクルマ乗りやがって!

40ドル(約6000円)もするカニ(CRAB)なんて、わざわざアメリカで食うかよ!!(※フィッシャーマンズワーフの名物ではある)

見るもの全てに八つ当たりしながら(心の中で)、帰っていったのでした。


次回:「おい見ろよ!青空だ!」サンフランシスコの空に翻る星条旗


おまけ。

ジェレミア・オブライエンが係留されているピア45には、第二次世界大戦で活躍した軍艦がもう1隻係留されています。

それが、潜水艦パンパニト。

28年前、ミリオタの道を歩み始めたばかりのたかっか少年が、初めて生で見た大戦中の軍艦がこれでした。


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