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【2023年春】スタートアップ資金調達環境お天気図

お疲れさまです!
千葉道場ファンドの石井(Twitter: @takaki_ishii) です!

元起業家で現在千葉道場ファンドというVCで投資家をしております。主にシード・アーリー/プレAまたはレイターステージを主な対象として投資をしております!
最近はAppleのVision Proにワクワクしっぱなしです。確実に買います。もうVisionPro買うために年内US行くまであります。

さて、半年前に公開した【スタートアップ資金調達環境のお天気図】が思ったより多くの方にご覧いただき、「参考になった」「面白かった」というありがたいフィードバックをいただきました。本当に嬉しく感じております…!

ということで、今回は前回に続き、約半年後となる【2023年5月末時点】で私が感じているスタートアップの資金調達環境についてまとめていければと思います!

【 免 責 事 項 】
・使用しているスライドは千葉道場ファンドに投資いただいているLP投資家の方向けにご案内したものを一部編集しています。
・あくまで千葉道場ファンドのVC投資家である石井個人の印象をまとめたものです。完全なポジショントークですのでご注意ください。また、人によって意見は異なるものと承知しております。

まずは半年前、2022年秋の市況を振り返っていきます。

【2022年秋】の資金環境(振り返り)

半年前の振り返り

本来はシードからご案内したいところですが、原則としてスタートアップの調達環境はレイターステージから変化していくため、プレIPOステージから振り返ります。

2022年11月のプレIPOステージは非常に荒れていました。とはいえ、更に遡った2022年春は上場延期や取りやめが相次ぐ阿鼻叫喚な環境でしたので、「それに比べればマシかなぁ…」という温度感でした。

春に比べれば上場の窓口が広がったものの、直近の時価総額と投資家の目線感に乖離があり、まだまだ不安定な相場だったと振り返っています。

また、シリーズA以降のミドルステージに位置するスタートアップの多くも資金調達が難航しておりました。これは2022年春以降始まった「よりシビアな選別」によって発生した状況であると思われます。

さらに2022年春頃までは時価総額が10億円以下のアーリー/プレAステージであれば比較的用意に資金調達がまとまっていた印象はありますが、2022年11月時点で既にアーリー/プレAステージの資金調達に暗雲が立ち込めてきました。

そこから半年が経過して、今回2023年5月末時点で以下のようなスライドになりました。

【2023年春】の調達環境

特に注目したいところが赤枠で囲まれています。

■シードステージ

最近はシードVCが増加したことに加え、VCや事業会社によるアクセラレータープログラムが盛り上がっています。その影響もあり、シードステージの資金調達環境は半年〜1年前よりも難易度は下がっている印象です。

一方、以降のステージで厳しく時価総額が見られるようになっていることもあり、資金調達はできても調達条件は1-2年前の水準に比べると厳しい場合が多いかもしれません。

■アーリー/プレAステージ

この半年間で資金調達環境は悪化したと感じており、赤枠で囲みました。
半年前まではシリーズA以降の調達環境悪化が感じられましたが、その影響がより早いステージに波及してきた印象です。

シードステージで資金調達を行った企業が、「調達資金を上手に活用し、成長に繋げることができたか」「このスタートアップはシリーズAの壁を超えられるか」が相当シビアに見られています。

また、これも個人的な印象なのですが、最近は時価総額3億円〜10億円程度のラウンドでリード投資を行う投資家が1-2年前に比べて減っているように感じています。市況が影響して投資を控えていることもあると思われますが、VCの統廃合や投資家の独立(→シードVC設立)なども影響しているかもしれません。

ちょっとこの辺は自分も仮説の域を出ないので、知見をお持ちの方とお話したいです。

■ミドルステージ(シリーズA以降)

多くのスタートアップにとって、非常に苦しい市況であると感じています。。。

何故苦しいのか、という背景には様々な事情がありますが、マクロな視点で2023年5月がどんな時期なのかを考えると、「2021年相場の調整局面」なのかなと感じています。

今だから言えることではありますが、2021年の株式市場、特に新興企業株は日米ともにイケイケドンドンな様相でした。コロナ禍によって行き場を失ったお金が市場に流れ込み、「バブル」を形成していたように感じております。(2020年相場と2022年相場は結構同じ水準、という資料がどこかにあったのですが発掘できずです…汗)

それが2021年末くらいから徐々に雲行きが怪しくなり、2022年春には新興企業株式市場が大きく後退する局面がありました。(最近はまた息を吹き返しつつありますが)

これは上場株式市場の動きではありますが、今年春の振り返りでも記載した通り、未上場スタートアップの時価総額は上場企業の評価の影響を多分に受けます。ステージが進むに従ってその影響度は大きくなります。

つまり、2021年相場で資金調達したシリーズA以降のスタートアップは、現在の相場から考えると「高い」と評価されてしまうケースが増えている印象です。業績などは一定成長しているにも関わらず、外部の評価基準が変わったがゆえに資金調達が難しくなっている事例が散見されます。

もちろん「上場株式同様にスタートアップも株価を下げて調達すればいいじゃない」という考えはごもっともなのですが、あくまで私の立場からの印象ですが、日本のスタートアップが本格的に盛り上がってきたこの10年においてダウンラウンドによる調達はあまり事例がなく、スタートアップ側も投資家側も慣れていない(プラクティスがない)状況なのかなと…

そのため、昨年末から「ダウンラウンドで調達せざるを得ないけど、なかなか話が進まない」という状況が続いていたのですが、本当にこの2-3ヶ月で少しづつダウンラウンドによる資金調達の事例が出始めています。(一部のベテラン投資家の皆さまがリードされており、本当に流石だなと感じております…)

今後はダウンラウンドの事例も出てくると思いますし、一般的な優先株式における一部条項も見直しが入るのではないかと感じています。(この論点は長くなるので別途どこかで…)

ダウンラウンドといえば聞こえは悪いかもしれませんが、私としては、いちばん大切なのは事業の成長だと考えています。事業の継続やさらなる成長のためにも、スタートアップがより健全に成長できるようご支援していきたいと考えています。

…と少し話が長くなりましたが、最後にもう1つ。天気予報図では「雨、一部晴れ」と表現していますが、前述のような苦しい局面を一切感じることがなく、力強くアップラウンドの資金調達に成功しているスタートアップが一部存在しています。

ミドルステージ・スタートアップの取捨選択が以前にも増して厳しくなっているからこそ、調達力がある会社に資金がより集中するようになりました。各VCのファンドサイズ大型化も影響して、調達金額も数十億後半というリリースをみる機会も増えた印象です。

この傾向自体は素晴らしいと思っており、より多くのユニコーン企業が生まれる土壌が整いつつあると感じています。

一方、VC投資家としては単純に「勝ち馬に乗る」のではなく、むしろそのような力強いスタートアップ創出に貢献したいと思います。また、私たちのご支援先・投資先企業も様々な局面に面している起業家がいますが、直近の資金調達が厳しかったとて、明るい未来の実現に向けて一緒に頑張っていきたいと感じております。

■プレIPO

最後に、プレIPOステージを見ていきます。今回は前回2022年11月よりもマイルドな「やや強い雨」と表現いたしました。

マイルドにした背景としては、スタートアップや起業家、投資家や証券会社など、様々なプレーヤーが直近の市況リセットへの対応が進んできたことにあると感じています。

2022年春は大荒れで、とにかく新規上場はストップ!といった慌てぶりでしたが、この1年でかなり落ち着いた印象です。公募価格が直近ラウンドの株価を下回る「ダウンラウンドIPO」であっても、様々な施策が講じられ、上場を決断する企業も増えてきました。

これらもミドルステージでも記述したように、「2021年相場からの調整局面」ゆえの景色な気がしており、今後は緩やかに期待値調整が進んでいくのではないかと感じております。

スタートアップに関係するすべての皆様が幸せになるIPOが少しでも多く出てくることを祈念しています。

まとめ

以上、2023年5月時点のスタートアップ資金調達環境について、私個人が感じていることをまとめました。

改めてにはなりますが、いちVC投資家個人による印象を整理したのみの文章となります。完全なポジショントークですし、立場によって見える景色は異なると思いますので、是非皆さんのご意見もお聞かせいただけると嬉しいです。

そして、最後に宣伝を…w

私が所属する千葉道場ファンドは今後もシード・アーリー/プレシリーズAのスタートアップにたくさん投資させていただく予定です。

もっと言うと、時価総額10億円未満のステージが得意で、1,000万から最大1億円まで投資可能です。リードもフォローもやりますので、起業家の方はお気軽にご連絡ください!(TwitterのDM開放しています。)

IVS KYOTOも参加予定ですので、現地でお声がけいただけると嬉しいです〜。


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