【パーソナリティ】リーダーのパーソナリティが公正な職場風土を生み、メンバーの仕事満足やコミットにつながる(Mayer et al. 2007)
今回は、パーソナリティ×職場の公正風土、を扱った文献を紹介します。職場が「公正」(Justice)であることは、メンバーの満足やコミットに重要、という点を実証的に示したワーキングペーパーです。
どんな論文?
この研究は、リーダーのパーソナリティが、従業員の公正な職場風土(手続き的風土、対人的風土、情報的風土)の形成に与える影響を調査したものです。(公正な職場風土=Justice Climate)
公正風土とは、従業員が組織内で公平に扱われているかどうか、に関する集合的な知覚を反映した概念です。McGregor(1960)は、公正と信頼がマネジメントの有効性の鍵であり、公正と信頼がより有効なグループの成果をもたらすと提案しており、本研究はその研究結果を拡張し、リーダーのパーソナリティの影響を調べています。
研究の結果、協調的で神経症的でないリーダーが、より公正な風土を作りやすいことが分かりました。また、公正風土が高い場合、従業員は仕事に対してより満足し、組織に対するコミットメントも高くなる傾向が示されています。
公正な職場風土とは
公正な職場風土という概念は、従業員の知覚する3つの風土から構成されています。こちらについて以下の通り補足します。
手続き的公正風土
手続き的公正風土は、組織内での意思決定プロセスが公正であると感じられる風土。具体的には、決定が一貫して行われているか、偏りがないか、正確な情報に基づいているか、決定の過程で従業員が意見を表明する機会が与えられているかなどの要素が含まれる。手続き的公正風土が高い場合、従業員は組織の意思決定が透明で、公正な基準に従って行われていると感じる。対人的公正風土
対人的公正風土は、組織内での人間関係が尊重されているかどうかを反映する風土。具体的には、上司や同僚が従業員を尊重して扱っているか、礼儀正しい態度で接しているか、不適切な行動を避けているかなどの要素が含まれる。対人的公正風土が高い場合、従業員は自分が組織内で尊重され、適切な扱いを受けていると感じる。情報的公正風土
情報的公正風土は、組織内での情報の提供や説明が十分であるかどうかを示す風土。具体的には、上司が意思決定の理由やプロセスを明確に説明しているか、必要な情報が従業員に適切に伝えられているか、真実性が保たれているかなどの要素が含まれる。情報的公正風土が高い場合、従業員は組織から適切な情報が提供されていると感じ、意思決定の背景や理由に納得できることが多くなる。
これら三つの公正な職場風土は、従業員が組織に対して感じる「公正感」に大きく影響し、それぞれが従業員の仕事満足度やコミットメントに関連しています。
言い換えると、職場が公正だと感じている人が多い職場では、仕事の満足度やコミットメントが高くなる、ということです。
公正な職場風土と、個々人の公正に対する認識
この論文では、公正な職場風土が高い場合、個人が公正に扱われているという認識と、仕事の満足度やコミットメントが高まることが示されています。統計的な言い方をすれば、個人の公正に対する認識の、仕事満足度や組織コミットメントに対する影響を、公正な職場風土が調整することが実証されました。
職場の風土=チームレベル
個人の公正に対する認識・仕事満足度・組織コミットメント=個人レベル
という、複数のレベルにまたがる分析のため、マルチレベル分析であるHLMが用いられています。
個人の公正に対する認識が高く、公正気候も高い場合、仕事満足度や組織コミットメントは最も好ましい結果が導かれています。
つまり、「すべての従業員が重要であり、組織によって評価されている」と従業員が職場に対して感じて、それによって態度がさらに好ましいものになった可能性があるとのこと。
一方、個々の公正に対する認識が高くものの、職場の公正風土が低い場合、すべての従業員が評価されているという、インクルーシブな環境がないことを示唆している可能性を著者らは提示します。
すなわち、「私は今、公正に扱われるけど、他の人はそうでない。だから、将来は自分も公正に扱われなくなるかもしれない」と不安を感じる可能性があるとのこと。
こうした考察より、「職場の公正に対する風土」の認識の重要性が主張されています。
感じたこと
「公正」(Justice)という概念の重要性は、HRMの領域では当然のように議論されています。本音を言うと、実践家としての自分はあまりピンと来ていない部分があります。公正と感じるとコミットメント高まる・・・?
(動機づけ要因というより衛生要因?)
一方で、公正性に関する研究はまだまだ勉強不足なので、ここまで公正性が注目され、重要視されてきたかをもう少し学ぶ必要も感じます。
自分の違和感を大切にしながら、研究領域をもう少し探索してみようと思います。
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